ねこのまおう
うまれたばかりの魔王は、子猫そっくりの姿をしていました。
「せかいせいふく、するにゃ」
やみ色のマントを長く引きずりながら、人間たちに宣誓布告。
「あら、かわいい、ちっちゃい子猫」
「ばかにするにゃ。おろかなにんげんども、ちにひれふすにゃ」
だれも気にも留めません。
むしろ、かわいいかわいいと、なでくりまわされました。
小さな魔王は怒りました。
「ワシはまおうにゃ。おまえらみなごろしにゃ」
「いやなら、げぼくになるにゃ。ワシをあがめるのにゃ」
「サンマ50匹、イワシ50匹、タイ50匹、アユ50匹、いますぐよういするにゃ。おシオして、すみびでこんがりやくにゃ」
「はやく! だれかやるにゃ! ワシはきがみじかいのにゃ!」
せいいっぱいの声で怒鳴っても、みんなは「子猫がいっちょ前にいばってるよ」と笑うばかり。
「くつじょくにゃ。ゆるさんにゃ。にんげんぜんぶほろぼすにゃ」
魔王は、泣きながら、魔界のお城に帰りました。
泣いても、わめいても、かわいいばかり。
……しかし、それから15年後。
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