ねこぶとん

『ねこぶとん あります 時価』

そう書かれた看板の横で、大きくて、まっ白な猫が、言いました。

「ワタシがふとんになるのですにょ。とても気持ちよく、おやすみになれますにょ」

 男の子は、よくわからないまま、こたえました。

「まだお昼だよ。寝ないよ」

「それじゃ、夜に、おたくに出張するですにょ。料金は、前払いでお願いしますにょ。300万円にょ」

「高すぎるよー」

 男の子は、冗談だと思って笑いました。

 白猫は、怒ったようです。

「高いとはなんですにょ。さいこうの眠りをお届けするからなんだにょ」

 でも、自分で言っておきながら、大きく首を傾けました。

「お前さま、もしかして、まずしいのかにょ? ワタシは、思いやりがありますから、安くしてやりますにょ。とくべつかかく、300円にょ」

「ぼく、100円しか持ってないよ」

「にゃら、3万円ですにょ」

「無理だよ。100円までしか払えないんだよ」

 男の子の返事を聞いて、猫はむずかしい顔をしています。

「ワタシは、計算できるんですにょ。だけど、どわすれしたにょ。30円と3万はどちらが高かったですかにょ?」

「3万円の方が高いよ」 

「なら、30円にしてやりますにょ」

 男の子から100円玉を受け取ると、猫は首をかしげて、しばらくそのお金を眺めていました。

「まいどありぃ。夜、寝るとき、行きますにょ。きみは、おふろにはいって、きれいにして、待っておくですにょ。ちゃんとリンスもするのですにょ」

 大猫は、手をふると、煙のように消えてしまいました。

「おつりはー?」

男の子の声が、だれもいない神社のかたすみで、響きました。

(続く。かも)

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