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「ここを残したい」築120年の郵便局と山奥の金山で出会う

2020年の夏、ある郵便局が注目を浴びました。
鹿籠金山かごきんざん郵便局。
鰹節の生産量日本一の鹿児島県枕崎市の中心地から車で15分ほどの山奥の民家の間にその郵便局はあります。

2020年6月29日。当時、枕崎市の地域おこし協力隊だったりっかさんが「エモすぎる古民家物件情報」としてツイートした投稿は、瞬く間に拡散され、Yahoo!ニュースをはじめとしてあらゆる記事で取り上げられました。

これが、下園薩男商店と旧鹿籠金山郵便局の出会いのはじまり。

歴史残る金山エリア

金山鉱口跡地

鹿籠金山郵便局があるのは、枕崎の金山エリア。
名前の通り、このエリアは江戸末期から昭和の戦時中までの長い間、金山で栄えた場所でした。鹿籠金山は有川夢宅によって発見され、薩摩藩の直営で開坑しました。1880年(明治13年)には、当時全国の鉱山開発を手掛けていた五代友厚の所有になっています。
鹿籠金山は、霧島市の山ヶ野金山といちき串木野市の芹ヶ野金山に並ぶ薩摩三山の一つとして地位を築きました。

かつては遊郭もあり、人々は金銭を湯水のごとく消費していたほど栄えていたといいます。今でも遊郭に行こうかどうか懐を見て悩む思案橋が残っているとか。住居の石垣は発掘時に出た石で築かれているものも多く、歴史と繁栄の跡がにじみます。

木々に覆われたこの場所は、日中も静かでゆったりとした時間が流れています。そのためか、猫との遭遇率が高いです。

大山祇神社

郵便局よりさらに奥へ進むとあるのが、大山積大伸を祭る大山祇神社。
大山祇神社は山の神であると同時に、海の神、さらには渡航の神でもある大山積大神を祭っています。
金山として栄えたこともあり、人々からは山の神様として崇拝されてきました。
木造で味のあるこの神社には、有川夢宅が84歳のとき自分で彫刻奉納したとされる神面や1692年(元禄5年)当時の惣奉行、横目など六十三名の寄進者名が彫られた太鼓も現存し、歴史の長さを感じさせます。

枕崎市は鰹節生産量日本一の町。港町のイメージが強いですが、山奥では美しい自然と歴史があふれてました。

出会った郵便局

旧鹿籠金山郵便局

豊かな自然と鹿児島県の重要な歴史が残るこのエリアに、鹿籠金山郵便局は今から約120年前、1903年(明治36年)に建設され、1904年(明治37年)に三等郵便局※1として開局しました。それから、1981年(昭和56年)に局舎の老朽化に伴い閉鎖し、30年あまり空き家状態になります。

金山エリアの住民にとって、閉鎖された今もなお思い出深い場所であり、この場所は枕崎の史跡となっています。

洋式木造建築とされていますが、奥にある住居はまさに日本家屋そのもの。当時の和洋折衷の混ざり具合を感じます。今もなお、かつての空気が漂っているようにも思えます。

※1【三等郵便局】
国家財政の乏しい中、全国にいち早く郵便局制度を普及させるため、郵便の取り扱いを地域の資産家に土地と建物を無償提供させ、事業を委託する形で設立した郵便局のこと

三代目薩男の決意

郵便局奥の住宅から見える庭

歴史ある金山。
これからでは生み出せない、今あるからこその価値を感じる鹿籠金山郵便局。

「この建物は残したい」

スマホの画面から飛び込んできた郵便局を見た瞬間、その衝動に駆られた下園薩男商店三代目薩男はすぐに問い合わせをしました。

「今あるコトにひと手間加え、それを誇り楽しみ、人生を豊かにする」

この理念を胸に、阿久根市に拠点を置き、北薩の資源にひと手間加えてきた会社が今、南薩へと手を伸ばします。

旧鹿籠金山郵便局で、ひと手間加えた先にあるものとは――。
2022年9月9日、かつての郵便局が再び動き出します。

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