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お雑煮だけじゃない。鹿児島の出汁文化を味わう暮らし

新年を迎える一月になくてはならないお雑煮。皆さんは今年、何杯食べましたか?
お雑煮は餅の入った汁物全般を指しますが、地域によって、味付けも具材もさまざまです。
出汁もあごだし、鰹だし、昆布だし、鶏だし等々千差万別。

下園薩男商店のある鹿児島県薩摩半島は、鰹節生産量日本一のまち―枕崎がありながらも、お雑煮は焼海老出汁で作る特有の出汁文化があります。
しかし、焼海老出汁のお雑煮が鹿児島独自だということもお雑煮以外の焼海老出汁の使われ方もあまり知られていないのが現状です。

今回は鹿児島の焼海老出汁の歴史と共に焼海老出汁をもっと身近に感じてもらえるようにと想いが込められた取り組みをご紹介します。

鹿児島の焼海老出汁の歴史

焼海老は北薩にルーツを持ちます。
古くから出水沖でエビ漁が盛んで、松の薪でエビを焼いて旨みを封じ込め、乾燥させて甘みを凝縮させた焼エビを作っていました。その焼エビは薩摩藩主の島津家に献上されていた歴史があります。
高級品として扱われていた焼エビを使った「えび雑煮」は島津家で食され、次第に庶民にも広まっていきました。

長寿を願い、お椀からはみ出るほどの大きなエビがのった雑煮は、現在「さつまえび雑煮」の名で知られています。
メインを焼海老出汁とし、鰹節や具材の干し椎茸の出汁も合わさり、旨味が強く、エビの香ばしい香りが高級感を感じさせます。

現在も焼海老出汁の雑煮は薩摩地域を中心に正月に食べられていますが、イベント等で歴史や味を後世につなげていく取り組みも行われています。しかし、伝統的な焼海老製造は漁業者の減少から年々減っているという課題もあります。

焼海老出汁をもっと身近に

「歴史もあり、スーパーでも焼海老は売られている。でも、正月の雑煮以外で使われている様子はなかなか見ない。雑煮以外の焼海老出汁の使い方が知られていない。そもそも、焼海老出汁の雑煮を食べている私たちが、焼海老出汁が鹿児島の文化であることに気づいていないんです」

そう語ったのは、下園薩男商店が運営するイワシビルでいくつもの商品製造・開発に取り組む大薗さん。

「せっかく美味しいのにもったいない。もっと焼海老出汁の認知を広げたい」

鹿児島の文化―焼海老出汁にひと手間加えられないかと考えた大薗さんは、焼海老出汁を使った商品開発に取り組みました。
そこで生み出されたのが「旅する焼エビ」と「焼海老辣油」と「焼海老焦がし醤油」です。

特別を手軽に

焼海老出汁をもっと身近に落とし込んだのがパスタソース「旅する焼エビ」。
この瓶一つで海老の香りがぐんと鼻を抜ける本格パスタを楽しめます。パスタのほかにもソース、スープ、サラダなど幅広くアレンジできるのも魅力で、いつもの食卓にちょっと特別感をプラスしたいときに重宝します。

旅する焼エビの裏側

ベースとなる焼海老出汁には、阿久根で獲れた芝エビが使われています。
一度、ボイルして乾燥させてから出汁をとるのが一般的な出汁のとり方ですが、旅する焼エビは香ばしさや旨味をより凝縮させるために、焼いて乾燥させてからオイルに漬けこみ煮詰めて出汁をとっています。

旅する焼エビは「醤油のトマトソース」「うに醤のペペロンチーノ」「大葉のジェノベーゼ」の3種類があります。どれもパスタソースの王道でありながら、メイン食材はイワシビルのある鹿児島県阿久根市の和の素材を使っています。

生まれ育ってずっとそこにいると、目の前にある良さを当たり前に思って気づけず、外に出てやっと気づくことがあります。焼海老と同じように当たり前のようにあった阿久根の素材も誇れる魅力。その中で選ばれたのが「醤油」と「うに醤」と「大葉」でした。

焼海老×醤油
醤油は明治42年創業の阿久根市にある佐賀屋醸造店の生醤油を使用。
鹿児島の醤油蔵のほとんどは、大豆・小麦・塩だけで造ったもろみを絞っただけの生の醤油―生揚醤油を共同で作り、各蔵ごとに独自のブレンドをしています。

鹿児島の醤油は甘いものが有名ですが、添加物を使わない生醤油を混ぜ合わせて完成したのが、醤油のトマトソースです。一番、エビの風味を感じられるパスタソースに仕上がりました。

旅する焼エビ:醬油のトマトソースを使ったなすとツナのトマトパスタ

焼海老×うに醤
うに醤は、阿久根市の特産品であるウニを使用しています。
阿久根市は、毎年4~5月にウニ丼祭りが開催され、多くの人が訪れます。特産品のウニは“ムラサキウニ”で、水分が少ないため味が濃厚なのが特徴です。小ぶりで一つのウニから少ししか身が獲れない貴重な高級ウニと呼ばれています。

そのウニを、ボラの切り身と麦麹、地元の芋焼酎で発酵させた魚醤と合わせて、さらに一年間熟成させて造った阿久根市の小塚水産が手掛ける“うに醤”を焼海老出汁と合わせて、うに醬のペペロンチーノが生まれました。ひと匙で海老の風味と旨みが増す万能調味料としても重宝するパスタソースです。

旅する焼エビ:うに醬のペペロンチーノを使った焼きおにぎり

焼海老×大葉
大葉は、化学肥料を使わず、見た目の色の濃さよりも美味しさを追及して作った阿久根市の大葉を使用しています。

この大葉は、見た目の評価で買われることが多い市場、スーパーでは販売せず、生協の宅配で年間を通して販売もされています。除草剤や農薬を使わず、土づくりに勤しむ農家さんには、大葉に合った土、土に合う大葉のマッチングにもこだわりがあります。温度や湿度に合わせて水を管理し、一枚ずつ手作業で虫や病気をチェックします。
淡い緑色が特徴で、エグみやクセが少なく大葉本来の風味をしっかりと楽しむことができます。

旅する焼エビ:大葉のジェノベーゼをソースに使ったエビアボカドサンド

特別を日常に

日常使いとしてリピーターも多いのが「焼海老辣油」。
阿久根産のタカエビを焼エビにし、オイルに漬けこみ出汁をとって、鹿児島のお醤油で味付けをしています。エビの風味が口いっぱいに広がる旨辛調味料です。

おそうめんのつゆに焼海老辣油を加えて

「餃子のタレは絶対これ」
「夏のおそうめんはこれでマンネリ解消」
「普段の中華料理にちょい足しするだけで一気に仕上がる!」

そんな声をいただいている、和にも中華にも合う万能調味料。

焼海老出汁だけでなく、鰹節、生醤油、味噌で味付けをした食べる醤油の「焼海老焦がし醤油」は揚げたネギと焦がし醤油の香ばしい香りが食欲をそそります。
蒸した豚しゃぶにかけるだけで、あっという間に一品が完成。ご飯もお酒も進みます。

焼海老焦がし醬油を使った豚しゃぶ

普段の食卓のちょい足しに大活躍する「焼海老辣油」と「焼海老焦がし醤油」で、日常に焼海老出汁をおいしく取り入れることができます。

文化を味わう暮らし

今回は、鹿児島のお雑煮で使われる焼海老出汁のこれからの楽しみ方をご紹介しました。

文化をそのまま受け継ぐこともとても素敵ですが、今の暮らしに合わせながら受け継ぐことも同じように素敵なこと。
「時代の変化」は諦める理由ではなく、付加価値を生み出すエッセンスになってくれるはず。

その地域にコトに一手間加え、これからも伝統や文化を残せるように、そんな未来を楽しめるように、私たちはこれからも取り組んでいきます。
人生がより豊かになることを信じて。

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