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新教科『おとな』 【 #こんな学校あったらいいな 】

※ はじめに

 今回の投稿は、こちらの企画に応募するものです。

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 文体は「小学生の読者向け」を意識して書いてみました。

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■ 新教科『おとな』

「明日の時間割は、国語、算数、理科、音楽、そして『おとな』か。」

 去年から、授業に『おとな』という教科が追加された。

 僕はこの授業、結構好きだ。お父さん、お母さんも「子どもの時にあったらなぁ」とうらやましそう。

 新教科『おとな』はおとなになるための授業。あ、でも、国語だって算数だって、家庭科だって、道徳だって、なんだっておとなになるための授業か。

 『おとな』は、おとなになったらやること。そう、仕事を学ぼうって教科だ。

 まず、この教科の先生は、学校の先生ではなくて、仕事をしている『おとな』のひと。今まで職場見学とかはあったけれど、新教科の『おとな』がすごいのは、毎週1回授業があること。授業の日、おとなが来てくれて、自分のやっている仕事を説明してくれる。仕事の内容だけじゃなくて、楽しいこと、大変なこと、そしてちょっとした体験も用意してくれる。

 今月は歯医者さん、百貨店の店員さん、美容師さんの『おとな』がきた。歯医者さんの日。僕は、歯をけずられるのも嫌だけど、けずるのはもっとこわそうだから、あまり楽しみじゃなかった。授業を聞いても、やっぱりこわくて絶対なりたくないと思った。でも、歯科ぎこう士っていう入れ歯とかを作る仕事も教えてもらった。僕は工作が好きだし、自信がある。将来、お医者さんみたいな人を助ける仕事をしたいって思ったら、僕は歯科ぎこう士さんみたいな仕事がいいなと思った。

 明日は、えっと銀行の人か。ちょっと難しそうだな。あ、でも、来てくれる『おとな』は、けんと君のお父さん!けんと君のお父さんは、僕の所属する野球チームのコーチもしている。とっても面白いおじさんだからどんな体験ができるのか楽しみだな。

 そうそう、『おとな』の先生は友達のお父さんお母さん、近所のおじさんおばさんのこともある。たとえば、この間はこんなことがあった。

 いつも僕らの野球の練習を見ているおじさんがいる。誰だか分からないけれど、ジッと見られているから緊張するんだ。そのおじさんが、この間『おとな』の先生で来た。「建築士」っていう仕事だった。家の設計図とかを見せてくれたときはびっくりしたな。いつものジッとした表情じゃなくて、すごく楽しそうに話してくれた。だから、『おとな』の授業の後、野球の練習を見に来てくれた時は、みんなであいさつできるようになった。

 おじさんが教えてくれたのは、家を作るには大工さんだけじゃなくて、設計する人、測る人、ペンキ屋さん、電気屋さんとかたくさんの専門家がいるということ。

「野球と一緒で、大人になってからもチームワークが大切だから、たくさん練習するんだよ」

って言われた。そう考えると、僕は足が速いから1番バッター。「塁に出るのが仕事だぞ」なんて監督に言われているけれど、なんだか専門家の仲間入りをしたような気がしてうれしかった。

 『おとな』の授業が始まる前も、社会科見学とか、職場体験とかはできた。これもすごくおもしろかったけれど、それは特別な授業だった。『おとな』の授業が始まってから、いろいろな仕事を知ることが特別ではなく毎週のことになった。こんな仕事あるんだ。あの仕事って実はこんな大変なんだ。こんな面白いんだ。

 前よりも『おとな』って、面白そうだなって思っている。

 僕は『おとな』の授業の前は、ゲームを作る人か、YouTubeの動画を作る人になりたいと思っていた。今もそれは夢だけど、最近は他にも候補がある。例えば、さっきの歯科ぎこう士。あとは、去年来てくれた製造業。あまりよく知らなかったけれど、鉄をかたまりがよく知っている道具の部品に変わった時はびっくりした。ゲームもいいけれど、大きい機械とか作るのもぜったいおもしろそう。今も、鉄の道具を見ると「どうやって作ったのかな?」って思うんだ。

 友達のそうたは、プロ野球選手が夢だけど、農家にもあこがれている。農家っておじいちゃん、おばあちゃんのイメージだったけれど、この間、来てくれた農家の『おとな』は、大学で研究もしているっていうお兄ちゃんお姉ちゃんたちだった。新しい野菜とか作り方とか研究しているんだって。

 幼なじみのはるかは、お母さんが弁護士だから、幼稚園の頃からずっと弁護士になるって言っていた。でも、この間の『おとな』の授業ではすごいメモしていた。僕は難しそうでよく聞いていなかったけれど、えっと、税金の仕事だったな。プリントには・・・、あ、そうそう税理士って仕事。

 りお君は警察官だったけれど、レスキュー隊。ひまりちゃんはパティシエだったけれど、ドッグトレーナー。ゆうとは、総理大臣って言ってたけれど、最近は社長なんだって。もちろん、あやかみたいにずっとダンサーになりたいって変わらない友達もいる。かんたなんて、プログラマーになって、まだ世の中に無いような新しい仕事するんだって言っているよ。

 この授業で、僕はいろんな『おとな』に出会えた。まだまだ分からない事だらけだけど、仕事をしている人を見ると、最近は興味がわく。

 お母さんにこんな話をしたら

「なりたい仕事があるなら、まず勉強しなさい」

と言われた。またそれかよ~って思ったけど、前よりは少し納得している。

 明日の持ち物は、電卓か。

 あ、電卓って、どうやって作っているんだろう。

おわり

■ あとがき

 いつものビジネス投稿に対し、とてつもない変化球で失礼しました。

 このテーマを見た時、来年小学生になる長女に聞いてみました。

私「どんな小学校なら楽しみ?」

 すると・・・

長女「友達やお姉ちゃんたちと勉強できるところ~。あと、鉄棒したい。算数!プール!虫捕り!給食……」

 あらら・・・。近所の仲良しお姉ちゃんから小学校の情報を予習済みの娘。まあ、そうだよな。今は小学校になるのが楽しみでしょうがないのだから。

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短冊の願いが「すごいかっこいいしょうがくせいになりたい」 笑

 そんな中、こんな答えが返ってきました。

長女「あとは~、あ、お仕事!」
私 「お仕事?それはまだまだ早いな~」
長女「違うよ、お仕事のおべんきょう!歯医者さんのおべんきょうがしたい!」

 最近の長女の夢は、子ども向け歯科クリニックの開業。歯科検診に行った際、キッズルームを完備した優しい先生に出会い、自分もこうなりたいと思った次第。

私「そうか~。でも歯医者さんの勉強はもっとお姉ちゃんになってからだからな~。・・・ん?」

 待てよ。確かに本格的にはそうでも、どんなお仕事か?とか、それこそ世の中にある色々な仕事の話って、小学生も聞きたいかもしれない。

 現に税理士として租税教室を小学校で実施しているけれど、小学生の反応もいいし、講師をする私も楽しいんだよなぁ。

私「あ、じゃあ、いろんなお仕事の『おとな』が、いろんなお仕事のことを教えてくれたら嬉しい?」
長女「え、超嬉しい!じゃあ、動物のお医者さんと、ダンスの先生と、看護師さんと・・・」
二女三女「お医者さんと、幼稚園の先生と、お金数える仕事(私の仕事のこと)も!」
私(おおお、盛り上がってきた)

 私も様々な仕事を知ったのって社会人になってから。しかも、たまたま様々な業種と深く関われる仕事についたから。キッザニアみたいな施設はすごくいいけれど、みんながみんな体験できるわけではない。

 また、おとなになってから小学生と触れ合える仕事って、限られているんだよな。もっともっと大人と子供が家族以外でも繋がれたらいいよなぁ。

 ということで、投稿に至りました。

 本文にも書いたように、職場体験は現在も行われています。これを毎週やるとなれば、カリキュラムもそうだし、過疎地はどうする、保護者も参加するならケアしなくてはいけない面もあるし、予算的なものはどうする・・・などなど、現場の人にとっては夢物語すぎるかもしれませんが。妄想の1つです。

 学習指導要領は「生きる力」がテーマ。

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 堅苦しくビジネスの話をすれば「ジョブ型雇用」なんて話も流行っている昨今。

 さあ、小学生のうちから仕事を意識しよう!なんてガツガツした考えではなく、世の中を「知る」って楽しいよという感覚で。

こんな学校あったら、いいな~。

#こんな学校あったらいいな #育児 #子育て #投稿企画 #ショートショート

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