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五月病とグレープフルーツ| 5月| 新米ママの大学院生活

育休を使って大学院に進学したわたし。進学早々、SNS、AIとのお付き合いや人間関係づくりに苦戦していた。

ゴールデンウィーク明けは、大学院生も鬱になりやすいらしいよ

そう教えてくれたのは、授業終わりのクラスメート。社会人なりたての新人の話かと思っていたけど、大学でも五月病が流行っているらしい。教えてくれた彼女は大学院の同期で、わたしと同じ新米ママだ。彼女と、同じく大学院同期の先輩パパ、先輩ママ、みんな一緒に受講している授業が週に一回ある。彼らとは、子どもが可愛すぎる件、風邪ひいて保育園に全然行っていない件、流行しすぎな手足口病への見解、仕事と学業の違いと戸惑い、専門性向上への課題、修論のテーマ設定と指導教官探し、など、惜しみなく共有できる。どの話題も魅力的過ぎて、顔を合わせておしゃべりできるのを心から楽しみにしていた。
彼女からいわゆる五月病の話をきいて、正直ホッとしている自分がいる。妙だけど、同じように悩んでいる人がいると思うと、悩んでもいいんだと思えた。パパママの同期とは週に1回、「わたしたち頑張ってるよね!うんうん」とか言い合ってお互いの自己肯定感を高めるのが習慣となっていた。

呼び出しの始まり

それは突然、やってきた。夏風邪、である。代表的なものは「手足口病」で、手や足、口の中に水泡ができる。熱は一瞬上がってすぐに下がるが、水泡が落ち着くまでに1週間くらいかかる。大人も稀に感染することがあり、それはそれは痛く辛いそうだ。5月で夏風邪なんて信じられないが、その信じられない現象が現実のものとなった。

5月も中頃。ふるさと納税の返礼品として、グレープフルーツ大量に届いた。同じような返礼品が届いた実家からもグレープフルーツを譲り受け、サイドテーブルに乗り切らない。そんなタイミングで、相棒・夫くんが2週間、海外出張することになった。わたしの脳内TODOの中に、ワンオペ、授業に加え「グレープフルーツの消費」が追加された。

グレープフルーツ、いらんかね

ワンオペ1週目。博士課程中の先輩と、ランチの約束をした。すでに、2回リスケとなっており、3度目の正直。ちょうど良かったので、グレープフルーツなど柑橘類を袋に詰めて、授業に向かった。すると授業中、保育園から入電。「熱があります。迎えにきてください!」ランチはまたリスケとなってしまった。「二度ある事は三度ある」だった。午後の授業も、欠席するしかない。
涙目となったわたしに、グレープフルーツの重みがのしかかる。しかし、そんなわたしを感動させる質問をした青年が2人いた。ふたりとも中性的なきれいな英語で、どこの出身の人かもわからない。授業が終わると、その青年2人が仲良さそうに話していたので、話しかけた。

「ごめんね、不審者じゃないんだけど。ふたりは一人暮らし?これ、毒とか入ってない美味しいグレープフルーツなんだけど、もらってもらえるかな?」

完全に不審者である。

快活な青年2人は、 はい!いただきます!!と、完璧なノリで受け取ってくれた。

お礼

翌週、ワンオペはなんとか終わりに差しかかっていた。息子もその週は、なんとか登園している。グレープフルーツのくだりから1週間経った実感もなく、へろへろ状態でかろうじて授業に出た。すると、授業終わりに青年が「先週はありがとうございました」と話しかけてきた。

わたし、なんかしたっけ?

青年は続けて、「グレープフルーツ美味しかったです!」と言って、果汁グミをくれた。なんだか疲弊していたわたしはひどく感激して、その後、果汁グミを1分くらいで食べ切ってしまった。(もうひとりの青年もそれから2ヶ月後、自習室で再会した際、お菓子をくれた。)
それから青年2人は、その授業が終わると、「おつかれさまでした!」と爽やかに声をかけてくれるようになった。今日の授業はああだったこうだったと話せるようになったし、セメスターの終盤には彼らの進路相談にものることができた。
辛かった5月は、子育てにも学業にも仕事にも明るく前向きなクラスメートたちと、グレープフルーツの爽やか青年らに助けられ、なんとか過ぎていった。

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