独立宣言

このほど、石巻で雇われ院長から開業医になる覚悟を決めた。自分でクリニックを経営するのだ。



58(あと数ヶ月で59)の身で数千万の借金を背負い込む。自分の収入は下がる(今は税込み1800万が毎月きちんと給料として入る)。しかし、やると決めた。



私が医者として働けるのは、あと12年。つまり70までだと思う。それまでに癌で死ななきゃ、私は医者をやる。この12年、私は石巻に尽くす。



石巻は嫌いだ。港町のくせに気風は閉鎖的で、そのくせ港町らしく荒っぽい。貧乏人ばかりで金にならない。震災前の15万の人口が12万に減ったのは、必ずしも震災だけが原因とは思えない。減るべくして減っている。巨大な港湾産業があり、仙台まで高速で1時間なのに人口が減るというのは、人々が石巻を捨てたくなる何かの理由があるのだ。その理由は、今の私には分かるような気がする。



しかし私はこの貧乏くじを引くと決めた。一度数千万の借金をして開業したら12年、どんなことがあってもこの場を動くことは出来ない。私が診れる限り、どんな患者でも診る。診れない患者が来たら、ともかく診るだけは診て、あなたはどこそこに行きなさいと廻す。どこでも診てもらえなかったという患者が来たら、私だけは断らない。



貧乏だろうが金が無かろうが、老いも若きも男も女も同性愛も、何でも診る。私の目の前に現れる人は、皆患者である。そうだ、これをクリニックの標語にしよう。



「私の前に現れる人は、皆患者である」



あゆみ野クリニックは、どんな患者も分け隔てしない。

あゆみ野クリニックは、常に医療医学の新しい知識の研鑽に努める。

あゆみ野クリニックは、患者もスタッフも健康で文化的な最低限度の生活が出来るよう努力する。



以上独立宣言。

あゆみ野クリニック

岩﨑鋼


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