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海外エンジニア8割のチームを創るということ

この記事は、主にこれから海外のエンジニアやデザイナーを採用していくことを考えている、経営者や人事の方向けの記事です。

僕らのチームはこの2年間で、エンジニアを(デザイナー2人を含め)11人、採用しました。そのうち10人が海外国籍のメンバーです。(フランス、イギリス、ベトナム、オーストラリア、ブラジル...と、色々な国から集まっています)

2年の間に2人が退職し、現在チームは僕を含め10人、そのうち8人が海外勢という構成になりました。従ってチームの80%が海外勢という状況です。
また近いうちに3人、海外から来日し、ジョインする予定です。

この記事では、以下のような内容を紹介していきたいと思います。

なぜ、海外エンジニア主体のチームを作るのか
海外エンジニアを採用する方法
多様な文化を背景に持つメンバーをマネジメントしていく方法

まだまだ個人としても組織としてもこれからではあるのですが、参考にしていただければ幸いです。

まず最初に、背景として僕が何者か、どんな会社にいるのか、という話をしますね。

初めまして、いわーくです。

岩崎(@iwark02)です。いわーくと呼ばれています。
91年生まれの、27歳です。中学生の時からゲームプログラマーになろうとゲームを作っていたのですが、大学生の時にWebサービス開発の魅力に取り憑かれ、以後、Webサービスの開発をメインでしてきました。

一人で開発をしていた期間が長く、実は今のチームが僕の人生史上で最もエンジニアの数が多いチームです。

さて、いま僕はScovilleという会社でCTOをしています。60人規模の、まだ小さなスタートアップです。
2年前にこの会社にジョインした当時、エンジニアは日本人が1人いるだけでしたが、強いセールスやマーケのチームが会社を非常に順調に伸ばしており、ここにテクノロジーを投入したらさらに加速する、と思ったことを覚えています。

Scovilleは、"世界に通用する事業を創り、外貨獲得を通じて日本経済を牽引する"ことをミッションとしており、世界に通用する事業を創るエンジニアチームを作ることが僕の大きな役割の1つになります。

なぜ海外のエンジニアを採用するのか

「海外のエンジニアを集めた。公用語は英語だ」と説明すると、ほとんどの人が「なぜ」と問います。ここには大きく3つの理由があります。

1. 海外に事業を展開していくビジョンがあり、そのため会社全体がグローバルである必要がある

より詳しくは、僕らは以下のような集団であると良いと考えています。

多様な価値観や文化を持っている/理解していること
母国語レベルで扱える言語が複数あること
複数の文化圏にまたがる広い知識を持っていること

例えばEUのGDPR(一般データ保護規則)は日本でも話題になったため大変有名ですが、もっと細かいレベルでの感覚が共有されますし、現地の競合サービスの情報とかも「内部に知り合いのエンジニアがいるよ」といった形で得ることができます。

また、日本人だけで集まっていると中々共感するのも難しいかもしれませんが、やはり国境を超えると文化は全く異なったものになります。食べるものの違い。育った環境の違い。休暇の習慣の違い。感情表現の違い。大学制度の違い。使っているサービスの違い。僕たちのチームには「1日2時間睡眠を1年間続けていたメンバー」も居ます。

「常識や固定観念を変える」ような組織やプロダクトを作るにあたって、このような多様性は大きくプラスに働きます。そもそも日本人固有の常識や固定観念に関しては、日本国外のメンバーには無いわけですから。

逆に、日本特有の文化で素晴らしいものが共有されることもあります。
例えば「空気を読む」とか。日本だとネガティブな言葉のイメージがあるかもしれませんが、場の雰囲気を察するような感覚は他の文化圏よりも優れているのかな、と思ったりします。

2. 文化の醸成には時間がかかる

「現時点でのターゲットが日本の市場なのであれば、海外展開が現実的になってから採用等始めた方が良いのでは」と考える人もいるかもしれません。

これに関しては、僕は「文化というのは一度出来てしまうと変えるのに多大なコストがかかる」と考えています。日本人が集まって、日本人のための文化ができてしまうと、それを後からグローバルにアップデートするのは容易ではないでしょう。

なので、やるなら初めからだ、と考えていました。

3. 日本はエンジニアの需要過多で採用が厳しい

特に一定のレベルを超えたエンジニアについては、いま日本で採用するのは簡単ではありません。有名でかつ優良な企業が競合として多額でオファーを出しますから。

この母数が世界に広がると、状況が全く変わります。
海外エンジニアの採用を始めてからわかったことなのですが、日本で働きたいと思っている海外エンジニアは実は非常に多いのです。(理由として、日本の安全さや文化的特異性などが良く挙がります)

一方で「日本で働きたいが、日本語が話せない」エンジニアを受け入れられる会社は日本にはまだ多くありません。
彼らを受け入れられるようになると、母数が大幅に増えます。

母数の拡大に従って優秀なエンジニアの絶対数も増えます。
そして、意外かもしれませんが、優秀なエンジニアの比率も確実に上がります。(「優秀」の定義については議論あると思いますが、ここでは扱いません)

これは海外のエンジニアが特別優秀だから、ということではなく、日本から海外に飛び出していく人たちも一緒だと思うのですが、「日常の生活を捨てて海外に単身突撃し、チャレンジできる」ことが既に大きなスクリーニングになっているんじゃないかと思います。

この状況において、なぜ日本のエンジニアだけに採用の対象を絞る必要があるでしょうか?

僕はこれから、日本はスタートアップにおいても海外エンジニアの採用が加速すると思っていますし、役員レベルに海外勢が入ってくることも普通になっていくと考えています。

海外エンジニアを採用する方法

では、どうやって採用をしていくのか。
海外エンジニアを採用する方法は「現地へ採用しにいく」「留学生など、日本に居る人にアプローチ」「Linked InなどのSNSを利用」「海外エンジニアを紹介するエージェントの利用」など、いくつかあります。

現時点、僕らはエージェント経由での採用が一番多いのですが、ここでは一番想像が難しいであろう「現地採用」についてピックアップして、体験を元に紹介します。

現地で採用する

現地採用においては、現地の大学へアプローチをしていく方法と、「ジョブフェア」などの海外で行われるマッチングイベントへ参加する方法があります。

僕らの場合、縁あってベトナムの人と繋がる機会があったため、ベトナムの大学へ行って学生を集め、日本に呼んで3ヶ月の夏季インターンをする企画をしました。

早速募集用のWebページやポスターを作成し、Google Formを使って募集をしたところ、ベトナムのトップ大学を中心とした学生約70人から応募がありました。

(当時作ったポスター。これを現地のトップ大学に貼りました。)

そこで、当時弊社にいた唯一のエンジニア(日本人)を連れてベトナムへ行き、現地で面接をしました。

面接では「問題発見解決能力」に焦点を当てて、身の回りにある問題をリストアップしてもらって、それに対する解決策を提示してもらったりしました。

最終的には70人から6人を合格としました。
ほとんどがトップ大学生の中で、8.6%という数値を大きいとみるかは人によると思います。ちなみにこのうちの2人は、今年新卒として入社予定です。

これは、こみほ(@comihoworld)さんに依頼をして描いていただいた可愛いイラストです。合格になった6人のベトナム大学生には、このイラストが描かれた手紙を招待状として送りました。異国の、よく知らない会社に来てもらうわけですし「あ、このぐらいの配慮はできるんだな」と少しでも安心感を届けられたらな、と考えていました。

ビザの発行

どの方法にせよ、海外エンジニアの採用が決まった際、日本で働いてもらうためには「ビザ」が必要です。

在留資格取得にしたがっては以下の点に注意してください。この注意点を含め、ジェトロ資料が非常に良くまとまっているので、是非参考にしてください。

・採用対象が大学学部卒同等以上
・業務内容が専攻した科目に関連する知識・技術を必要とする業務で、日本人と同等額以上の報酬を受けられるか
・採用予定者が素行不良でないか、入管法に定める届出義務や納税義務がある場合これを履行しているか
・採用する企業の経営基盤が安定しており、継続的な雇用が見込めるか

在留資格が取得できたら、現地の日本大使館/領事館に提出して、ビザを発行してもらいます。

実際の手続き自体は、代行のサービスやエージェントを利用すると良いと思います。僕らも手続きのほとんどは行政書士の先生にご協力いただいています。

ビザの取得には通常3ヶ月程度時間がかかることにも注意が必要です。
「来月からすぐに働ける人が必要なんだ」という場合には、海外の(ビザを所持していない)人を採用するのは難しいです。

多様な文化を背景に持つメンバーをうまくマネジメントしていく方法

採用対象と接点を持ち、アプローチをかけてオファーに承諾をしてもらい、在留資格・ビザを得たら、ようやく入社という流れになります。

色々な国から採用をすると、必然的に多様性に富んだ集団になります。
これは前述の通り組織に大きなプラスをもたらしますが、一方でマネジメントにおいては苦戦する要因になるかもしれません。

少なくとも僕はマネージャーとしてまだまだ新米なので毎日のように苦戦していますが、ここではそのうちいくつか僕が考えていることをピックアップします。

・多様な価値観やそれによる変化に対して柔軟であること
 - 自分と違う考え方をまずは認める
 - その上で変化が必要だと感じたら変化が必要なのは「会社(チーム)」なのか「個人」なのかを見極めて迅速に施策を打つ。

・一方で、全員が共通で持つ「会社」あるいは「チーム」の価値観/文化が浸透されている状態を作り、採用基準としても徹底する。

・それぞれのメンバーが会社から求められている役割をきちんと把握している状態を作る

マネジメントについては人数が増え必要性が増してきたことで最近特に学びが大きいので、次のnoteはこのあたりもう少し深掘っていけたらなと思います。

おわりに

2019年は外国人エンジニアの採用がかなり加速し、役員レベルでの採用事例も増える年だと思っています。

日本は今まで国内でまとまる傾向が強かったと思うので、多様な価値観が一気に流れこむことで、きっと「組織のあり方」も大きく変わっていくと思っています。

まだまだ海外エンジニア主体の組織は、特にスタートアップでは多くないと思いますし、今後そういった組織を作っていこうと思う方に少しでも参考にしていただければ幸いです。

今後もマネジメントに関する学びを中心にアウトプットしていこうと思っているので、良ければフォローしてください!

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