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地方創生って何のためにやるものなんだ?

地方創生ってよく耳にする言葉かもしれませんが、田舎をわざわざお金かけて発展させる意義があるの?と思う人はかなりの人数います。これに対する明確な反論は以外に難しく、様々な考え方があります。あなたなら、素朴な疑問にどう答えますか...?


お久しぶりです。あっという間に和歌山の滞在も3ヶ月半が経とうとしています。戦慄しています。分量も文章のクオリティも劣化しています。ご容赦ください。

さて、僕が住んでいる和歌山の田舎町、昨年春まで2年間、元官僚の方のNさんが役場に派遣されていました。地方創生の草案をまとめるなど、今の僕が住まう町の地方創生の基盤を固めたすごい方です。
その人が最近、とある大学で町の地方創生について実体験を踏まえた講義をされたときに、一人の学生が質疑応答でその人にこう問いかけたそうです。


「無理に地方創生しなくても、皆、都会に住めばいいのではないか」

この問題は、今の僕にとってもとても大きな問題です。

「地域を活性化すること」その字ズラはとても好意的に受け取られる方も多いと思いますが、「なぜ地域を活性化することがいいことなのか」を突き詰めると意外に難しい問題です。

・地方創生で行われること


そもそも地方創生で行われていることってすごく多様です。
地元の特産品を作るのも地方創生、
地域の高速道路を整備するのも地方創生、
新しい産業を誘致するのも地方創生、
観光資源を活用して多くの人に来てもらうのも地方創生、、、
地方創生の名の下にいろんな事業が立ち上がっています。
具体的に、僕が住まう村のまちづくりの助成対象として選ばれたのは
・多目的広場の設置による松林の再活用
・カナダ移民に関するミュージアム、ゲストハウス、レストランの運営を用いた日系移民のルーツがある村の再興でした(下図:カナダミュージアム)。

観光(その他) カナダミュージアム1

ただ、元々の地方創生はまち・ひと・しごと創生総合戦略等に基づくと、
・地域における安定した雇用を創出すること
・地方への新しい人の流れをつくること
・若い世代の結婚出産子育ての希望を叶えること
など、実質的には人口流出の抑制と雇用の創出がキーとされることが多いです。

・地方創生って何のため?

そもそも地方創生って何のためにあるものなのでしょうか?
行われていることを一つ一つ見ても理由は多様です。
経済同友会の地方の雇用促進に関する資料では「地方の衰退は、都市を含む日本全体の衰退にもつながる。」からだとのみ説明されていました。
地方が衰退する=日本全体が衰退する、だからよくない。理屈はわかりますが、東京に住んでいる頃のことを考えると、地方が衰退することがそのまま都心を含めた全体の衰退のようには感じません。
和歌山に大学の友達がきてくれた時にもこの話になりましたが、彼が思う、地方創生の意義は「地域民俗、固有の文化の保護」でした。
地域民俗や固有の文化を保つためにはそれを引き継ぐ人、村があり続けないといけない。ただ、地域民俗の保護のために全国の地方創生が働いているのでしょうか、事例にあげた中でも地域の民俗と関係あるか?という内容のものも多々あります。さらに、地域民俗、風土を保護するなら、(極論ですが)博物館に全部展示さえしてしまえば、地方をわざわざ創生する必要は無いという話です。だから、友人は「都市に一極集中することは悪いことではない」と主張していました。

日本の中での地域の多様性を持たせるためだ、と主張する人もいます。しかし、地域の多様性を持つことって何のメリットがあるのでしょう?多様性があればあるほどいいのなら、かつて1950年代、現在では無人島になっていた島々に人々が入植していた時期(かつて人が住んでいた無人島を検索するとだいたい1960~80年ごろに人がいなくなる)が理想的なのでしょうか(下図:wikipediaより、かつて人が住んでいた日本の無人島一覧)。

スクリーンショット 2019-12-01 16.36.43

もちろん島だけに当てはまる話ではありません。
大元を辿れば昔は小さな村落があるのみで江戸時代以降の人口の増加に合わせて発展した・開拓された地域も地方にはたくさんあります。極端にいえば太鼓の昔は山々だった、荒地だったような場所を無理やり発展させて来たのが今の地方都市だと考えられるかもしれません。どれぐらいの「多様性」が望ましいのか、そもそも「多様性」がなぜ望ましいのか、いまいちはっきりしません。

一次産業(農業、林業、漁業など)を保護するために、担い手を絶やさないために、地方を盛り上げて行く必要があるという考え方もあります(私はこの立場を支持しています)。ただ、それらの産業を盛り上げる政策「だけ」を地方創生の鳥くいがやっているかと言ったらそういうわけではありません。農業にも林業にも漁業にも直接関係ない、再開発、カフェレストランの設置、観光業の振興に力を注ぐ取り組みはざらに見られます。

・地方創生やる意味って何?

最初に言及した、町にいた元官僚のNさんは講演で
「地方創生やらなくてもよくね?」という意見に
「地方創生は皆が住まうまちを魅力的にしてその町にずっと住んで行けるようにすること。無理に都会へ!地方へ!ということではない」
という旨で回答されたそうです。
ただややこしいことには別にその町出身ではありません(たまたま同じ和歌山県の出身ではありますが、、、)。実はその町に住まう人「が」まちを魅力的にするケースよりも、他所からやって来た人が「きっかけとなり」まちを魅力的にするケースがかなり見受けられます。

また、Nさんはこうも答えたそうです。
「皆、都会に住んだら、日本から一次産業がなくなってしまいますよ」
確かにその通りですし、今の僕の理解でも地方創生において「一次産業の保護」はかなりのウェイトを占める重要なポイントだと思っています。
しかし、地域の観光客を増やすこと、商店街を活性化することが「一次産業の保護」に繋がっているのでしょうか?あまりにも目的に対して遠回りしすぎではないかとも思います。

友人やNさんの発言などに指摘するかのような形で文章をまとめて来ましたが、これは僕の頭の中でも逡巡しているのです。

そんな中で今の僕の考えも定まっていません。ただ、その村に住んでいる人ももちろんのこと、その村を何かの機会に知った人が少し興味を持ったとして、
「実際行ってみたらなんもなかった」
「あそこじゃ生活していけないよ」
と思って興味を失わないようにすること、
「住みたい!って思った人がずっと住んでいけるまちを作ること」なのではないかなと思っています。

だからある意味「居住移転の自由を保障するために地方創生がある」と言ってもいいのかもしれません。

「ここはもうダメだよ」「自分たちが楽しいのが一番大切」と思う地元人もいれば
「この町が好きだな」「この町をどうにかしたい」と思うヨソモノもいる。
その逆もまた然りです。
地方にに住まう、もしくは住まおうとする人たちをサポートするために地方創生はある、その願望は保障されるべき権利なのだから。
それが僕の主張です。

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