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家族にとってのインフラとも言える学童。そこから新ビジネスが生まれる可能性

僕が社長になった理由-亀岡利寛さん-
世田谷で3つの学童を運営している亀岡さん。「子どものころの夢はバリバリ働くことでした」といいます。テレビで見たビジネスマンの姿にあこがれていたのだそう。大きな挫折もないまま10代を終え、就職活動で初めての挫折を味わい、目指したのは独立起業家としての道でした。思ったとおりにはいかないこともある中、現状に合わせて最善を進む。そんな亀岡さんのキャリアストーリーです。

2019年夏、”いわみんプロジェクト”として、社長や起業家、独立して活動している方を対象に100人インタビューを実施しました。彼らがどんな想いで起業し、会社を経営しているのか? その中での葛藤や喜び、そして未来に向けて。熱い想いをたくさんの人に伝えたいと思っています。

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亀岡 利寛(かめおか としひろ)さん

株式会社ラボアンドタウン 代表取締役社長
福岡県出身。
サラリーマンの父と保育士の母のもと、公立の学童を経験する
中学・高校・大学とラグビーに没頭し、花園を目指したラガーマン
大学卒業後、人材サービス企業に入社。セールスや新規事業開発などを担当。
2012年10月に株式会社ラボアンドタウンを設立し代表取締役に就任

商社を落ち、起業家を目指して入った会社は
設立後2年目のベンチャー企業

 生まれてから大学まで、たいした挑戦も挫折もなく進んできました。バリバリ働くビジネスマンになるべく商社を目指すのですが、まさかの全滅。僕はここで初めての挫折を味わいます。
 改めていろんな会社を調べていく中で、グローバル企業と呼ばれる会社だったら、グローバルに羽ばたくビジネスマンになれるのではないかと思い、面接に行きました。実際には「10年は現場でやってもらう」という話を聞き、思い描いていた将来像とのギャップに愕然としました。「だったら、自分で会社をやって、海外でもなんでも行ったらいいんじゃないか?」と思い至ります。

 そこで選んだ会社は、設立2年のベンチャーの人材サービス会社です。規模もそこまで大きくなく、社長も若くて意思決定も間近で見られるので勉強になるだろうと思いました。3年くらいを目途に独立しようと思って入社し、実際には4年半いました。この会社では辞めて独立していく人も多かったので、自分が独立することに対しての違和感はありませんでした。
 じつは辞めたときに何か事業構想があったわけでもなく、とにかく辞めた、という状況でした。というのも、日々があまりにも忙しくて、何かを考える余裕がまったくなかったんです。僕は変化を作るためには、非連続を無理しても作ることが大事だと思います。その思いは今でも同じです。つまり、日々の連続した生活の中では、変化は作れないということです。

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 辞めてからの生活は、経済が盛り上がり始めていた中国でビジネスしている友だちを訪ねたり、塾の運営をしている友だちの手伝いをしたり、フリーで営業サポートをしたり、1年半くらいブラブラ過ごしながら事業の構想を考えていました。
 元のアイデアは前職での経験からきました。女性たちが社会でどんどん活躍できるための人材サービスをしていたので、女性の働き方と子どもとの関係っていうところに、社会の課題があるということはわかっていました。最初は保育園も考えたのですが、“小1の壁”っていう言葉に代弁される社会課題と、民間学童がまだ少ないという市場の現状から考えて、学童事業をスタートさせることにしました。

保育園や学童の需要は高まるものの、民間で経営することは非常に難しいと言われていました。公立での運営が主流のため、サービスは無料だと認識されていたからです。亀岡さんはそこの部分はわかったうえで、会社として利益を上げる別の方法を考え出します。

友だちの家で居候から始めた起業家生活
始めて気づいた計画とリアルの違い

 お金がない中でのスタートだったので、しばらくは友だちの家に居候させてもらい、その後、アパートを借りるも帰って寝るだけの生活だったので、テレビも何もないような生活でした。初年度開校に向けての集客は何よりもつらかったですね。12月くらいの寒い季節に、駅前でのちらし配り、保育園や小学校の保護者が集まるタイミングを見計らってのちらし配布やポスティング作業を1人でやっていました。

ラボアンドタウンまちなか学童   成城 祖師谷大蔵 千歳船橋にある学童保育

 軌道にのってきたのは2年目からです。口コミで人が集まるようになってきて、すぐに満員となりました。今では3校を運営しています。当初の予定ではもっと急成長させるつもりだったんです。でも、やっていくうちに気づいたことがありました。
 学童というのは、家族にとっては、インフラみたいなものなんです。つまり子どもたちが放課後安心して過ごす場所としても、親が安心して働く上でもなくてはならないもの。つまり、しっかり安心・安全を担保した場として、継続させることがイチバン大事なことだと思うようになったんです。
 そのために何をやるべきか? を考えると、きちんと学童のサービスを提供してくれるすばらしいスタッフがいることが大切なので、彼らが長く働きたいと思える環境と、彼らが活躍できる場を作ることが必要になります。僕が新しい学童を作ったのは、事業拡大のためというより、変化をつくったり、活躍できるポストを与えるためだったりもします。また、学童で新しい取り組みをするのも、彼らが主体的にやりたいと思うことを実現させるためでもあるんです。

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学童から派生するビジネス展開
そして、インフラとして継続することの大事さ

 最近、新たに行なっているのは“親子食堂”や長期の宿泊体験などです。学童の生徒たちと宮崎県までサーフィンツアーに行ったりもしています。こんなふうにイベントの数も増やしていくことで、ここにいる親子のニーズをくみ取りつつ、会社の変化をつくっていきたいと思っています。
 また、最近ではB2B事業もスタートしました。デパートなどの集客イベントの受託事業です。おもしろいイベントを計画して告知すればお客さまを呼ぶことができます。僕たちが学童で行って、子ども受けがよかったイベントをパッケージ化して商品にしているんです。学童でのイベントはある種のプロトタイプとして、いろいろ試すことができます。そこで子どもや親たちから評判のよかったものだけを商品化する仕組みです。

 学童は、子どもたちと家族の自己実現の場になっていくべきだと考えています。子どもたちが本当に楽しめる場であることはもちろん、親も安心して働くことで自己実現ができるようになります。ラボアンドタウンは、"チャレンジ&ユニークネス"というテーマで、子どもたちの可能性を信じ、挑戦し続ける強い個を作っていきたいと思っています。

サービス・料金   ラボアンドタウンまちなか学童

「先のことを考えてもわからないので、今楽しいこと、今ワクワクすることをする」という亀岡さん。最初のころは自分が現場も担っていましたが、今はスタッフ育成、新規事業スタートなど、家族のインフラとして学童が継続できるような仕組みづくりをしています。学童事業がこういう展開になるとは予想していなかったと言います。今を全力でやっている先に、未来が見えてくるということなんですね。

下町の2D&3D編集者。メディアと場作りのプロデューサーとして活動。ワークショップデザイナー&ファシリテーター。世界中の笑顔を増やして、ダイバーシティの実現を目指します!