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【マッチプレビュー】2023明治安田生命J2リーグ第15節 いわきFC対ブラウブリッツ秋田

2023明治安田生命J2リーグ第15節。いわきFCは5月14日(日)、いわきグリーンフィールドにブラウブリッツ秋田を迎える。この試合の見どころについて解説していこう。

■試合の見どころ

現在、3勝2分け9敗の勝ち点11で、全22チーム中最下位に沈むいわきFC。4月下旬から栃木SC、V・ファーレン長崎、ヴァンフォーレ甲府、清水エスパルスに4連敗と苦しい戦いが続く。

巻き返しを図りたい今節、ホームに迎えるのは8位のブラウブリッツ秋田だ。

この試合の見どころは

①それぞれの2トップ対2CBのバトル
②ロングスロー、セットプレーへの対応
③MF宮本不在の穴を誰が埋めるか

などだろう。

4月末から5月初めに行われた、いわきFCの3連戦を振り返ろう。

4月29日の第12節は、3連勝中のV・ファーレン長崎とホームで対戦。試合は序盤からいわきが押し込む展開も、なかなか得点を決められない。そして72分、ゴール前のこぼれ球を長崎FWフアンマに拾われてゴールを許し、これが決勝点に。いわきはシュート21本を浴びせるも決定力不足に泣き、0対1でタイムアップ。前節の栃木SC戦に続く敗戦となった。

第13節は5月3日の祝日開催となり、アウェーで天皇杯王者・ヴァンフォーレ甲府との対戦。試合は31分、DF遠藤凌が退場。10人で戦う苦しい展開となり、甲府FWウタカのゴールで0対1の敗戦。

3連戦の最後となる5月7日、第14節の相手は清水エスパルス。清水は今季開幕からクラブワースト記録の7戦未勝利と出遅れるも、秋葉忠宏監督就任とともに復調。6戦負けなしで中位に浮上していた。

いわきは2017年の天皇杯3回戦以来のIAIスタジアム日本平への見参となった。当時は福島県社会人1部リーグ所属。6年の時を経て、ついに実現した同カテゴリーでの真剣勝負。だがこの試合は、厳しい結末となる。

いわきのメンバーはGK21高木和徹、DF16河村匠/5速水修平/4家泉怜依/8嵯峨理久/MF20永井颯太/24山下優人/6宮本英治/22加藤悠馬、FW17谷村海那/11有田稜。甲府戦のレッドカードにより前節まで全試合に先発出場していた遠藤が出場停止となり、常葉大出身のルーキー速水がCBで初先発。左SBは3試合連続で同じくルーキーの河村、右SHは強化指定選手の加藤がスタメン入り。

守備の要・CB遠藤を欠き、チームは清水に圧倒される。開始早々の2分、左サイドを突破され、清水MF乾貴士に先制点を献上。清水はさらに畳みかけ、いわきは開始早々の失点から立ち直れない。16分とアディショナルタイム2分、清水MF中山克広に2点を許し、0対3で前半を折り返す。後半に入っても清水の勢いは止まらず、いわきは85分までに5ゴールを献上し0対8。

その後、後半途中から出場した選手達がこの試合で唯一の輝きを示した。FW近藤慶一からのボールをFW坂元一渚璃が落とし、MF芳賀日陽が左サイドから鋭いクロスを上げ、FW吉澤柊がヘッドで決めた。昨年から負傷離脱していた吉澤にとって、7カ月ぶりの出場となるこの試合で今季初ゴール。決して諦めない気持ちを見せた。

試合は1対9で終了。Jリーグ参入後、最多失点での敗戦。いわきFCは若さと未熟さを露呈し、清水は圧倒的な攻撃力を示した。

屈辱の9失点、そして4連敗。チームは泥沼でもがく。大切なのは、この厳しい状況を今後の糧にできるかどうか。今節の戦いで、ひと筋の希望の光を見出したい。

一つのポイントがメンバー選考だ。今節は中盤の核・宮本英治が清水戦終盤のイエローカードによる累積警告で出場停止。キャプテンMF山下のパートナーを務めるのは誰になるのか。そして前節を欠場したCB遠藤の復帰と、清水に一矢報いたFW吉澤、MF芳賀、FW坂元、近藤らの起用法にも注目が集まる。

■戦力分析~ブラウブリッツ秋田

ブラウブリッツ秋田は、秋田県全県をホームタウンとするクラブ。「ブラウブリッツ=Blaublitz」はドイツ語。「ブラウ(Blau)」は「青」、ブリッツ (Blitz) 」は「稲妻」。

前身は1965年創部のTDKサッカー部。東北社会人サッカーリーグで11回の優勝を誇る名門だ。2010年にブラウブリッツ秋田の名称となりクラブチーム化。初年度の2014年にJ3へと戦いの場を移す。

J3では2017年に優勝も、J2ライセンス未交付のため残留。2020年に吉田謙監督体制のもと、開幕から28戦無敗でJリーグ記録を更新。圧倒的な力を示してJ3を制し、J2昇格を果たす。J2初年度の2021年は13位。2022年は負傷者を多く出し、前半戦を15位で折り返すも後半に復調。12位でシーズンを終えている。

2023年は吉田監督体制4年目。主力選手が多数退団したが、これまで築いた戦術に合致する選手を巧みに補強。GK圍謙太朗(←SC相模原)、DF河野貴志(←ギラヴァンツ北九州)、MF諸岡裕人(←福島ユナイテッドFC)、FW畑潤基(←FC岐阜)、DF阿部海大(←ファジアーノ岡山)、FW梶谷政仁(←サガン鳥栖)、水谷拓磨(←AC長野パルセイロ)、FW15丹羽詩温(←ツエーゲン金沢)、DF星キョーワァン(←横浜FC)ら14人が新たに加入した。

運動量豊富なボランチ諸岡は谷村、宮本、有田と同じ国士館大出身。2022年はJ3福島ユナイテッドFCのキャプテンを務め、福島ダービーで再三相まみえたいわきのプレースタイルを知り尽くす。そして今季、サガン鳥栖から期限付き移籍したFW梶谷も国士館大出身。大学4年次にはキャプテンを務め、有田とは同期に当たる。そして昨季、横浜FCからいわきFCに期限付き移籍し、守備の要として前半戦の躍進を支えたDF星は今のところ出場なし。

今季は開幕6試合で3勝3分け無敗の好調なスタート。第7節でレノファ山口FCに敗れたものの、翌第8節には現在首位を走るFC町田ゼルビアに土をつけた。第14節終了時点で6勝4分け4敗の勝ち点22で8位。もともとレギュラーだったFW29齋藤恵太、MF9中村亮太、DF飯尾竜太朗らの負傷の影響もあるのか、ここ5試合は2勝1分け2敗。大きく勝ち点を伸ばせてはいないが、昇格圏内をにらむ8位に食らいつく。(14節終了時点)

フォーメーションはいわきと同じ4-4-2。至近の第14節栃木SC戦のスタメンはGK31圍謙太朗、DF13才藤龍治/5河野貴志/4阿部海大/22高田椋汰、MF14三上陽輔/6諸岡裕人/25藤山智史/24小暮大器、FW40青木翔大/17梶谷政仁。

堅守速攻を掲げる秋田の最も大きな特徴は、吉田監督による「徹底」。攻守の切り替えの速さと縦への速い展開、そして球際のバトルにこだわる。いわきFCと特徴の重なる部分も多く、相手に応じてプレースタイルを変えることはない。

この試合はそれぞれの長所をぶつけ合う、シンプルな「陣地の取り合い」となる。試合を制するのは、より相手ゴールに近い位置でプレーできたチームだ。

中でもロングボールの蹴り合いで生まれる空中戦は、間違いなく激しくなる。それぞれの2トップ対2CBのバトルから目を離すことは厳禁。そしてセカンドボールへの対応、球際の奪い合いといった秋田が徹底する部分で少しでも隙を見せれば、秋田はあっという間にいわきを飲み込んでしまうだろう。

注目選手はまず、キック力に優れるGK31圍。昨年はJ3のSC相模原でプレーしており、いわきとも対戦済み。精度の高い前線へのフィードがたびたび秋田攻撃のスイッチを入れる。そして敵陣で起点になるのがFW40青木。ゴールこそ少ないが、たびたび得点に絡む攻撃の中心選手。前線でしっかりとボールを収め、時には鋭いカウンターでゴールに迫る。

また、ロングスローやセットプレーをきっかけにしたゴールも多い。メンバーにはいわきFCと対戦経験のある選手も多数在籍。プレースタイルはすでに熟知されている。

いわきが目指すのは、清水戦の屈辱からの原点回帰。そのコンテクストから見れば、東北サッカーの草分けである偉大な先輩であり、ストロングが重なり合う秋田を倒す意義は非常に大きい。小細工なしのぶつかり合いとなるであろうこのゲーム。地域リーグからJFL、J3で7年間積み上げてきたことの質を問われる一戦となる。

■「今まで積み上げてきた、一番大事にしているものを出せるか」村主博正監督

「決して大崩れしてはいけない中、この連戦で全員の矢印を同じ方向に向けられなかったことを、非常に申し訳なく思っています。特に清水戦は非常に厳しい敗戦でした。

些細なラインコントロールのミスから失点し、リスクを覚悟で攻撃に行きカウンターを食らう。清水戦はこの連続で、ライン設定をもっと緻密に行う必要性を痛感させられました。J2には甲府のウタカ選手のように、ぎりぎりのほんの数10㎝で勝負しているFWがいる。そして清水の乾選手のようなテクニックに優れた素晴らしい選手とも対峙し、CB遠藤、家泉、速水はトップクラスのレベルを知ったはずです。

そんな中でも、交代出場したFW吉澤、MF芳賀、FW近藤、坂元らが諦めずにプレーしてくれました。彼らを含めた、パワーのある選手を積極的に起用していきたいと思います。

秋田は1対1のクオリティが高く、相手が嫌がることを徹底してやり続けられるチーム。ロングボールもクロスも、例え跳ね返されようとも何度でも入れてくる。

今まで積み上げてきた、一番大事にしているものを出せるかどうか。勝負はそこにかかっています。原点を見つめ直し、どうにかして勝ち点を拾いたい。そしてここまでの悔しい負けを、今後に向けた大きな経験値としていきたいと思います」

■GWの連戦を終え、依然混戦続くJ2

大型連休の3連戦を終えたJ2。第14節を終えて首位は9勝3分け2敗の勝ち点30でFC町田ゼルビア。3連戦を2勝1分けで乗り切って首位をキープした。2位は9勝1分け4敗の勝ち点28で大分トリニータ。こちらは3連戦を2勝1敗。

3位に浮上したのは東京ヴェルディ。3連戦を2勝1分けで乗り切り8勝2分け4敗の勝ち点26。4位は同じ勝ち点26で追いかけるV・ファーレン長崎。ヴェルディとの差は得失点差の1のみ。5位は7勝3分け4敗の勝ち点24でザルパクサツ群馬。6位は7勝2分け5敗の勝ち点23でヴァンフォーレ甲府。

いわきFCの通算成績は3勝2分け9敗での勝ち点14。得失点差は-16。清水戦の大敗で順位は22チーム中最下位に後退した。21位は5連敗中の大宮アルディージャ。大宮とは同勝ち点も、得失点差で大きく差をつけられている。

J1経験クラブを相手に戦った3連戦すべてを落とし、10人での戦いや主力の出場停止、そして記録的スコアによる大敗。これまで経験のない事態に直面し、チームは今、逆境の真っただ中にいる。

苦しい状況だからこそ、問われるのはここまでの積み重ねであり、選手、スタッフ、ファンの団結だ。厳しい負けを経て、再び一つになって「魂の息吹くフットボール」を愚直に貫き通せるか。今節の戦いはまさに、真価を問われる一戦となるだろう。

明治安田生命J2リーグ第15節 ブラウブリッツ秋田戦は5月14日(日)13時30分より、いわきグリーンフィールドにてキックオフ。試合の模様はDAZNおよびNHK福島、NHK秋田で放送される。

熱きフィジカルバトルが期待される東北勢同士の一戦。いわきFCの選手達の雄姿を見届けに、日曜日はぜひ、いわきグリーンフィールドへ。

(終わり)

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