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プロとして、サッカーで食っていく覚悟を示す。GK坂田大樹【Voice】

チーム創設2年目となる2017年から、いわきFCのゴールマウスを守り続けるGK坂田大樹選手の登場です。JFL参戦1年目の最終節を前に、今の思いやこれまで、そして今後のキャリアについて語っていただきました。

▼プロフィール
さかた・だいき
1994年生まれ
流通経済大学附属柏高→流通経済大
2017年いわきFC入団


■前は点を取ってくれる。後ろが踏ん張れば、結果は必ずついてくる。

JFL第29節、ホーム最終戦となったヴィアティン三重との一戦。第27、28節と連勝し勝ち点20で6位につけていたいわきFCは、昇格を争う直接のライバルと熱い戦いを繰り広げました。試合後、不動の守護神・坂田大樹選手は悔しさを押し殺し、こう語りました。

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「前半、なかなか自分たちのサッカーをさせてもらえなかった。厳しい試合になることはわかっていたのですが…」

前半はヴィアティン三重がロングボールから積極的に攻める展開。いわきFCは前半11分、セットプレーから失点してしまいます。

「相手が蹴ってきたのは予想通りでしたが、開始早々からやや後手に回り、DFラインが低くなってしまった。その結果、CKをきっかけにやられてしまいました。

どうにか立て直さなくてはいけない。ハーフタイムのロッカールームでは、みんなに『思い切ってラインを上げていこう。自分達の時間は必ず来るから、しっかりやっていこう』と伝えました」

坂田選手の檄もあり後半、チームは息を吹き返します。持ち前の走力で優位に立ち、再三相手ゴールに肉迫。65分にはDF小田島怜選手がセットプレーから同点ゴールを挙げました。

しかし三重もカウンターで反撃。いわきFCを上回る計12本のシュートを浴びせますが、坂田選手やDF田中龍志郎選手が身体を張ってストップ。試合は1対1でタイムアップとなりました。

「後半は意識が変わり、攻撃も守備もいいプレーができていたと思います。ゴールが決まった瞬間は本当にうれしかったですし、チーム全体の勢いもあった。もう1点取りたかったですが、結果は引き分けで終わってしまい残念です」

この結果、J3昇格は最終節でテゲバジャーロ宮崎に勝った上での、他チームの結果次第となりました。いわきFCは11月22日現在、勝ち点21で6位。初参戦となったJFLの1年目を振り返り、ここまでの戦いについて語っていただきました。

「崩された結果の失点は少なく、多くの原因はミスやセットプレー。これらは、意識を変えれば解決できる問題だと思うので、克服に向けてしっかり取り組んでいきたいです。

前は絶対に点を取ってきてくれるから、DF陣が踏ん張って0で抑える。そうすれば、結果は必ずついてくる。

ただし個人的にはダメでしたね。セットプレーでやられるのは、フィールドの選手のマークの問題だけじゃない。GKも思い切って前に出なくてはいけないし、守備範囲をもっと広げる必要があることを痛感させられました。

大事なのはポジショニング。直接FKを意識するとどうしてもポジションが低くなりますが、ゴールにへばりついていてもダメ。もっと強気に構えつつ、直接FKにも対応できる距離を意識していきたいです」


■筋トレに打ち込み、体重は大学時代から8㎏増。

坂田選手は入団4年目で現在26歳。日本人選手では、FW鈴木翔大選手に次ぐ年齢です。流通経済大学付属柏高から流通経済大に進学。大学2~3年時はトップチームに在籍しましたが、4年では流通経済大学ドラゴンズ龍ヶ崎でプレー。2016年JFLのファーストステージで優勝を果たしています。ちなみにMF日高大選手は流経大の同級生。大学時代から仲がよかったそうです。

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「大がHonda FCにいたころも連絡を取り合っていました。彼がチームを出てプロに転向することを考えていた時、どうしてもいわきFCに来てほしくて『一緒にJリーグ目指して頑張ろう』と誘っていたんです。だから、2019年にチームメイトになれた時は、本当にうれしかった。

もちろん今も仲よくしています。たまに家に遊びに行き、夜ご飯を食べさせてもらうこともあります。奥さんの手料理がめちゃくちゃおいしいんですよ」

大学4年のころ、日高選手を始めとする流経大の仲間達がJリーグやJFLのチームに入団を決める中、選んだのは、当時福島県社会人リーグ1部に所属していたいわきFCでした。

「4年生の時にトップチームにいなかったので、残念ながらJリーグのクラブの目にとまることはありませんでした。

自分からJ2のクラブに話をして練習参加しましたが、結果は『アマチュア契約なら』というもの。それでも行くか、それともJ3のクラブなどを探すか、もしくはサッカーは辞めて一般企業に行くか。かなり悩みました。

でも、いろいろな方のお話を聞くうちに、サッカーを続けられる環境があるなら、どんなカテゴリーでも絶対に続けるべきだと思い直しました。そのタイミングでいわきFCからお話をいただき、このチームで上を目指していこうと決めました」

入団1年目の2017年、いわきFCにプロ選手は基本的にいませんでした。選手達の待遇は、アンダーアーマーを日本で展開する株式会社ドームの関連会社・ドームユナイテッドに社員として雇用されたセミプロでした。

そのため、午前にフィジカルトレーニングとサッカーの練習を行い、午後に4時間ほど、グラウンドと同じ敷地内にあるアンダーアーマーの倉庫で仕事をしていました。

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「大学のサッカー部ではアルバイトが禁止されていたので、初めて経験した仕事でした。ショップに出荷する商品を集め、段ボール詰めをしたり、返品された商品をたたんで戻したり、といった業務を午後2時から6時まで行っていました。

練習と仕事の毎日はハードでした。正直、入った当初は本当にキツくて、朝起きるのが憂鬱で仕方なかったです(笑)。

でも午後だけでも働いたことで、社会が少しわかった気もします。礼儀の大切さや手を抜かずに働くこと、お金を稼ぐことの大変さなどを、身をもって知ることができました」

もう一つ苦労したのが、いわきFCならではの厳しいフィジカルトレーニングでした。

「相当きつかったです。当時は県リーグ所属で対戦相手との力量差が大きかったので、リーグ戦の有無に関係なく、週3~4日ウエイトトレーニングをしていたんです。徹底的に身体を作る鍛錬期なんて、トレーニング2時間でサッカーの練習は20分ぐらいだけ、なんてこともありました(笑)。

正直、筋トレは昔から嫌いでぜんぜんやってきませんでした。でも大学時代、筋力不足でプレーが弱々しいと言われることがあり、それが嫌だった。そして、今後サッカーを長く続けられる身体を作りたかった。そこで重点的に取り組んだところ、1年目の夏ごろから身体が徐々に変わっていきました」

184㎝の長身ながら、入団当初は70㎏台。しかし現在の体重は85㎏。大学時代と比べて約8㎏増です。彼の堂々たる体格は、入団1年目からしっかりと筋トレに打ち込み、肉体改造を行った成果なのです。


■もっと頑張れば、またこういう舞台に立てる。

坂田選手は入団早々から、GKとして頭角を現しました。印象的な活躍を見せたのが1年目・2017年の天皇杯。チームはJ3の福島ユナイテッドを破って福島県代表となり、2回戦でJ1の北海道コンサドーレ札幌との対戦へとこぎ着けました。

「普段は県リーグですから、Jリーグのクラブと真剣勝負する機会なんてめったにありません。だから、あの天皇杯の経験はすごく大きかった」

 試合は劣勢となるも、坂田選手は前半から好セーブを見せ、札幌に先制点を与えません。幾度となく相手のシュートをストップし、試合は延長に突入。いわきFCは持ち前の走力で延長30分間で3点を叩き込み、5対2で勝利したのでした。

福島県1部リーグのチームが格上を相手に一丸となって戦い、勝ち取ったジャイアントキリング。この経験が、当時23歳だった彼を変えていきます。

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「天皇杯で自信がつきました。そして『もっと頑張れば、またこういう舞台に立てる。もっと上を目指したい』という気持ちが強くなってきました。

今思えば、1年目の最初は大学生気分が抜けていなかった。それではダメ。年齢なんて関係なく、GKとしてチームを引っ張らなくてはいけない。その意識が徐々に芽生えてきました」

その後もいわきFCのゴールマウスを守り続け、坂田選手は1試合1試合、着実に成長していきます。そして3年目の2019年に契約を切り替え。晴れてプロサッカー選手に。サッカーだけで稼ぐ状況になったことで、自覚はさらに強いものとなりました。

そんな坂田選手の特に印象深い試合は、全国地域サッカーチャンピオンズリーグ2019の1次ラウンド2戦目・VONDS市原FC戦だそうです。

「試合終盤に1対1のシチュエーションをストップして、どうにかスコアレスドローで終えることができたのはよかったですね。この試合を乗り切ったことで、翌日のFC TIAMO枚方戦に高いモチベーションで臨むことができ、決勝ラウンド進出につながりました。

実はこの大会には、個人としても強い思いで臨んでいました。当時は25歳。もしこの年JFLに昇格できなかったら、今後Jリーグでプレーするのは難しくなるかもしれない、という危機感があったからです。

あのハードな大会をチームが一つになって優勝し、JFLに昇格できたのは、いろいろな意味で本当に大きなことでした」

■厳しい声をかけ、チームを引っ張る。

毎年一定数の選手が入れ替わる中、坂田選手はこの4年間、不動の守護神としてDF陣を牽引し続けています。田村雄三監督はその理由について「一番は安定感ですが、それに加えていい意味で我が出てきて、より積極的にコーチングするようになった」と語ります。坂田選手自身もそれを自覚しているようです。

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「自分は波が少ない選手だと思っています。でも、それだけではダメ。シュートストップやビルドアップにも自信はあります。

現代サッカーにおけるGKはシュートを止めるだけでなく、ボールをつなぎつつ、両足で長い距離を正確に蹴ることが求められる。ビルドアップ能力は、もっと上げられると思います。

また、コーチングも大切。もう年齢が上の立場なので、もっと的確な指示を出し、DF陣を動かしていけると思います。

大学時代までは、味方がミスや気の抜けたプレーをしても、それほど怒ることはありませんでした。でも、プロは一戦一戦の重さが違う。たとえDF陣のミスによる失点だとしても、それは自分の評価が下がることにもつながります。サッカーでご飯を食べて行くとはそういうこと。もっと厳しく声をかけて、チームを鼓舞したいですね。

そして25歳でプロになった立場から見ると、今、高校や大学を卒業して直接プロ契約で入ってくる選手がうらやましくて仕方ありません。

若い時からプロサッカー選手としてお金を稼げるのは、本当にありがたいこと。だから満足せず上を目指してほしいし、自分も彼らを引っ張っていきたいと思います」

■慢心せず、毎日の練習で積み上げていきたい。

坂田選手は自らの今後のキャリアについて、このように語ります。

「上の舞台でプレーしたいです。そのためには、チームをいい方向に導くこと。まずはこのチームでいいプレーをして、このチームで上の舞台で戦いたい。その中で、自分の評価も上げていきたいです。

この4年間、いわきFCでスタメンで出続けているからOK、なんてことは少しも思っていません。Jリーグの舞台に上がれば、自分より上手い選手はたくさんいる。今のまま上がっても、試合に出れなくなるのは目に見えています。だから慢心せず、毎日の練習で少しずつでも積み上げていきたい。

来年は27歳。サッカー選手として時間がたくさん残されているとは、もう言えない。1試合1試合に懸ける思いは、誰よりも強いです」

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昇格を争う直接のライバル・ヴィアティン三重と引き分けたことで「4位以内と百年構想クラブ2位以内」というJ3への昇格要件をクリアできる可能性は、まだ消えていません。

最終節の相手は、すでにJ3昇格を決めているテゲバジャーロ宮崎。いわきFCはアウェイの地に乗り込み、シーズン最後の試合を戦います。

「ヴィアティン三重戦は、次につながる引き分けでした。次節は泣いても笑っても最後。昇格できるかどうかは他チームの結果によりますが、自分達は勝つしかない。

このチームの前は必ず点を取ってくれる。自分が止めて失点しなければ、必ず勝てる。だからDFラインとしっかり連携し、助け合っていきたい。そして、アウェイの地からいわきの皆さんに笑顔を届けたいと思います」

坂田大樹選手をもっとよく知る、5つのQ&A
Q1:GKとして理想の選手は誰ですか?

A1:以前は川口能活選手をよく見ていました。GKとしての技術もすごいですが、メンタルが強いですよね。今のサッカーではマンチェスター・シティのエデルソンやリヴァプールのアリソン。ビルドアップや足元の技術を意識して見ています。

Q2:オフはどんなことをして過ごしていますか?
A2:ゴルフ、あとはゲームですかね。お父さんがゴルファーなのですが、ゴルフはなかなか上手くなりません。本格的にやり始めたのは1年前ぐらい。子供の時からお父さんに習うことはほとんどなく、ゴルフ場に行ったとしても芝生でボールを蹴らせてもらっていたので(笑)。でも最近は実家で教わっています。スコアは110ぐらいですね。

Q3:彼女はいますか?
A3:いないです。27歳で結婚する予定を勝手に立てていたのですが、相手がいないまま時だけが経っています(笑)。もう26歳なので予定を変更し、30歳までに結婚しようと思います。現在募集中なのでよろしくお願いします。好きなのは、いつも笑ってくれる子。落ち着いた感じの清楚系が好きですね。理想のタイプは有村架純です。

Q4:仲良くしている選手は誰ですか?
A4:(日高)大とは仲いいんですが、彼には家庭がありますからね。遊ぶとなると流経大の直属の後輩・田中龍志郎、あとは鈴木翔大選手や岩渕弘人ですね。ご飯を食べに行ったり、一緒にゴルフをしたり、という感じです。あとは流経大の後輩である黒澤丈や山口大輝とも仲よくしています。

Q5:よく行くお店を教えて下さい。
A5:試合の後によくご飯を食べに行くのが、中華料理の明華というお店です。いわき駅の近くにあるのですが、すごくおいしいです。

▼坂田選手のプロフィールはこちら

2021年も引き続き、いわきFCの選手達の熱いVoiceをお届けしていきます。お楽しみに!


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