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スーパーマーケットで踊る

1週間に1度スーパーに行くか行かないか。

ついに食材が切れたので、満を持してスーパーに行くことにした。本日ついにスーパーに行くという、たったそれだけの一大決心。

すぐ近くの薬局で牛乳やちょっとした買い物をすることはあるけど、歩いてスーパーに行くのは10日ぶりくらい。

外の匂いが変わっていた。
土と葉に混じってツツジの花の匂いがする。
ああー、完全に5月かよ。
息をするたびに紛れもなく5月限定のにおいで、これはとてもエモい。今頃は地元にも同じようなつつじロードが広がっているはず。その道を母が自転車に乗って帰っていく姿が浮かぶ。朝や夜、よく家族や知り合いとすれ違ったりバッタリ合流したりする近所の道。どこにでもありそうな道なので、どこでも地元のように感じられる。

半袖で歩いて、帰り道は少し汗ばむ。
クローゼットに待機していたコートをしまうことに決めた。


3月、舞台「共骨」をなんとか無事に全公演やりきれて、終わったあと少し映像の撮影をして(それは未完成のまま)以来、ずっと家のなかにいる。大袈裟でなく本当に、ほとんどいる。

ドラマや映像撮影もイベントや舞台の公演も延期になって、これから出会う人、つくっていく作品、ぜんぶがいっせいにどこか遠くにいってしまった。くやしい。なんて心細くてよわい立場だ。それでも自分と家族や周りの人。スタッフやお客さん、その大切なひとたち。みんなのことを思ったら、正直ホッともした。
すべての英断に感謝する。しかしどうする。
こりゃもうなくなくアルバイトなのか?と思った時には履歴書送る先もなくなった。

待つことには慣れている。
それでもいつ明けるのか先の見えないなかで
じっと待つだけともいかないな、と動こうとしている。その場その場を味わいながら、のろのろと。

LINELIVEでみなさんと喋ることがさいこうに楽しいこのごろで、こんなに楽しいならずっとこうやって暮らしてもいいような気さえしてしまうけど、それは実にいけない。

劇場とかライブハウスのような場所がこれから、ちゃんと安全で安心して人が集まる場所であってもらわなくちゃいけないし。家で画面をみてるだけで満足の世界になっちゃいけない。なんでも知って手に入ったような気になっちゃだめだ。20代の頃、もらったお金と時間のほとんどライブをみにいったりグッズを買ったり旅行したりお店を巡って色んな服や食べ物に出会った。ドイツ、フランス、ミャンマー、マレーシア、タイ、ベトナム、スイス、色んな外国へ一人旅もした。少々変わり者だったかもしれないけど、間違いなくその経験とそこで嗅いだにおいが私をほんのすこし豊かにしてくれて、血となり骨となっていると思う。匂いで思い出す場所がたくさんある。

さて、スーパーへ行こうとしたら
ポストになんだか可愛い郵便物が届いていた。

宮本愛子ちゃんからだ。

愛子ちゃんはスタイリストで、わたしが小学生〜高校生までモデルをしていた、ティーン向けファッション誌『ラブベリー』の現場でよく衣装を着せてもらった。そんな昔から現場を共にしているので、愛子ちゃんなんて呼んでいるが人生とファッションの大先輩。それでも憧れと尊敬と親しみを込めて、今でも愛子ちゃんって呼びたい。いつまでもちゃん付けで呼ばせてくれる懐の深さ。永遠にラブリーで大好きな人。

うちには国からのやつより早く、
愛子ちゃんの手作りマスク二枚が到着した。
さいこう。服と合わせやすい色味のリネン。
嬉しくて画像のせちゃう。ごめんなさい。

早速かわいいマスクをつけて
スーパーへ買い物にいくと
野菜の陳列に心ウキウキ。

底抜けに明るい店内BGMについ身体がうごいてしまう。いまだけは小踊りさせてくれ!

最近、公共の場で小躍りするひと増えてませんか?

スーパーの魚コーナーとか
お菓子売り場の棚の隙間とか。
あとカルディは絶対踊ってるひといる。
わたしは前からわりとやっちゃうんだけど、なにか歌を口ずさんだり踊ってる人をよく見かけるようになった気がして、みんながひとりでひとりじゃない感じがしてうれしくなる。

堂々と歌ってる人も増えた気がする

近所の女の人が毎日、昼下がりにシャワーを浴びながら熱唱する時間がある。それがなかなか素敵な歌声で、ちょっとハスキーボイスでかわいい。選曲も幅広くて、遠くからそれを聴くのがけっこう好きだ。きこえてるのがばれないようにそっとベランダに洗濯物を干したりしている。

みんなが家で工夫したり、
たまのお出かけに静かにドキドキしたり
変わらず仕事から帰ったりしている空気を感じられて、たのしかった。そしてたんまり買った食材で夕飯をつくって、愛子ちゃんのマスクを優しく手洗いして、のんびりお茶を飲んでドラマをみている。明日は LINELIVEだ。その前にまた踊るような気持ちで散歩したいとおもう。

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