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フリクリ プログレ 第3話-1

登場人物
ハル子
ジンユ
ヒドミ
井出交
森吾郎
マルコ野方
アイコ
マスラオ
アイパッチ

イラスト/吉成鋼

【ヒドミの夢】

いつも通りのデス夢。
星と星がぶつかり、光がほとばしる。(ハル子とジンユのことを暗示しているが、そのことは明確には表さず)

ヒドミの声:いつも通りのドーン!から始まって、私たちはみ~~んなして、し・め・つ、しました!

巨大なハル子形の山。2話に比べて色づいて来ている。
暗雲立ちこめる、廃墟と化した街。
黒い水たまりが泡立ち、瓦礫だらけのかつてビルだっただろう建物の壁から、謎の液体が噴き出している。

ヒドミ声:ど、ど、どーこかーらきーたのーか、ヒ、ド、

辛うじて残っていた電線に、どこかから落ちてきヒドミが絡まって「バジジジジ!」と電気ショック。

ヒドミの声:ミーーー!!ヒドミチャンでーす!目覚めましたとさ!こんちは!

焼けこげてプスプスと煙を出しながら、ゾンビヒドミは立ち上がり叫び、歩き始める。

ヒドミの声:さあ今日もお互い喰らいあおう。仲間達と。かつてはクラスメートだったけど一言も話していなかった仲間達と!ばんざい!おたがい合体して、世界の最後にようやく分かりあったフリをしよう!是非に是非に、フリをしよう!…って、あれ?

が、なぜか、誰もいない荒れ地。

ヒドミの声:オウノー!なんのボタンの掛け違い!だーれもおりゃせん!世界の終わりがほんとに終わってる!食らい喰らわれる痛みが欲しいの!痛みを与えてくれなくちゃ、命の実感も消し飛んでしまうんす!私は私の体を知りたい。この体の中に心っつーものがあるらしいから。んだからして私は私の体の外側と内側を隔てている、この、皮、一枚、をチリチリと、時にガブガブと、時に一撃で引き裂いて欲しい。もしも心に温度があるなら、体の裂け目の寒さこそが、世界の温度のはずなんだ。カモン!他者!募集中なのは特にエグイ他者!

ポツ・・ポツ…と何かが降ってきて、ゾンビヒドミの鼻の頭につく。
良く見れば、小さなジンユ。悪夢の小人のように、高い声でヒドミに向かって何か怒っている様子。
ポツ…ポツ…さらに降って来るジンユ。騒ぎ立てるチビジンユ達。

ヒドミの声:何度でも言いやんす。夢で見たからって、私がこれを求めているだなんて、1ミリも思わないで欲しい。ノーモア、冷たい女!ノー!ノー!ノーーーー!

土砂降りのチビジンユ豪雨。画面を覆い尽くす。
と、とぷ~~~~ん、と、チビジンユ色の水中に、ゾンビヒドミは沈む。

ヒドミの声:オ~~ウ!そんなあなたに包まれて私はかわいい赤子にな~る。やったぜ体内回帰、わたしは甘えてただけなのの~。違います。こんなのは本当に嫌。これほどまでに文字通りの湿った話は大嫌い。どちらかといえば、いやどちらかといわなくとも、私はただただひたすらに、そのひびであみだくじが出来るほどのひびにつぐひびだらけのひびっひびに割れるほどに乾いている方が良い。だってそれこそ~が世界ワールドと私ワールドの間を清く正しく、私のひっふ(皮膚)〜に教えてくれるから

水中にただよう、他のゾンビ達。

ヒドミの声:い~るならいる~で話ははや~い、お食べ状態か。あのお食べってなあれか、自分から「お食べ。」って言ってる食べ物か。偉いじゃないか。

ヒドミゾンビが吠え、他のゾンビに向かって泳ぎ出す。
他のゾンビもそれを迎えて叫ぶが、降りてきた釣り針に引き上げられる。
次々と釣り上げられて行くゾンビ達。
ヒドミゾンビが水面を見ると、次々に上げられて行くゾンビ達。
水面の向こう、もやもやとぼやけた世界では、釣り上げられたゾンビを巨大な手が握りつぶしている。水面に落ちて来て滲む、カラフルな液体。

ヒドミの声:…た、たまらん…

それを見上げていたゾンビヒドミの頭が膨れる。その膨らみで、水面に浮かびかける。必死に水中に潜ろうとするゾンビヒドミ。しかし浮力に負け、水面に飛び出るゾンビヒドミ。空からやって来た巨大な手に持ち上げられる。

【ヒドミの家 洗面所】

パジャマ姿のヒドミ、水を注いだコップを目の前にかかげ、水の中の白いツブツブを見るが、鏡に映った自分の姿、昨日の頭の傷を見る。うっすらと残っている傷跡。

【トンネル】

ヒドミと同じ制服を着て、どこかのトンネル内をベスパでかっ飛ばすハル子。

ハル子:ゲウゲウ!ゲウゲウ!

【ヒドミの家 ベランダ】

ベランダに出たヒドミ、遠く見えるスラム街を見る。
×  ×  ×
2話、スラム街で働いている井出の姿。
学ランを脱ぎ、やせこけた体の井出。
ヒドミの目が潤む。
×  ×  ×
思い出し、ほっぺがちょっと赤くなるヒドミ。
突如ハル子の声

ハル子:今日は日曜日でしたかー!

ヒドミ:えっ…

ベランダをよじ登って(またはベスパで壁を登って)現れたハル子。
ヒドミの首筋に顔を当て、

ハル子:(囁く)ね、ね、仲良くしようよ…

ヒドミ:な、仲良く…?

ハル子:そうそう!仲良くしよう!

ハル子はヒドミを引っ捕まえて、クモのように壁を降りていく。

【山】

鉄塔の上から、望遠鏡でMM施設を見ているジンユ。

ジンユ:?

遠くの商店街が荒れているのが見える。
ズームアップすると、ハル子ベスパに、引き回しにされているヒドミ。
蛇行して店先の植木やマネキンをなぎ倒して進む。

ハル子:うひゃひゃひゃひゃ!どこからどう見ても無邪気な女子中学生同士!これぞカモフラージュ!

ジンユ:…(溜め息)…あいつはほんとに…

鉄塔から飛び降りるジンユ。

【森の住むマンション】

高級タワーマンションの55階。
井出とマルコが窓から外を見ている。
街を見下ろす景色。


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