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「出遅れた日本は凄まじくラッキー」日本における暗号資産の未来セッションレポート #IVS2022

2022年7月6日(水) 〜 8日(金)の3日間にわたり開催をした「IVS2022 NAHA」と「IVS Crypto 2022 NAHA」。この記事ではIVS2022 NAHAで開催されたセッションの中から『日本における暗号資産の未来』の様子をリポートする。

登壇をしたのは、ビットバンク CEOの廣末紀之氏、森・濱田松本法律事務所 パートナー の増島雅和氏、Thirdverse / フィナンシェ 代表取締役CEOの國光宏尚氏、BlockchainPROseed MissBitcoinの藤本真衣氏。モデレーターは、WiL パートナーの久保田雅也氏。

日本の暗号資産業界の未来に勝ち筋はあるか?

まずは、モデレーターの久保田氏から「日本の暗号資産業界に勝ち筋があるか、未来に繋がるポイントはあるか」という議題が投げかけられた。

取引所を運営し海外のプレイヤーとも話をする機会の多い廣末氏は「日本のプレイヤーが劣っているとは思わない。セクターによっては、日本にも、あるいは日本のプレイヤーにも勝てるチャンスがあるのではないか」と回答。

弁護士の増島氏は「アプリのレイヤーや、IP(知的財産)のレイヤー辺りで頑張れば暗号資産の部分が自然についてくる。むしろ、自然とついてくるような状態にルールなどを変更できればと思っている」と答えた。

國光氏は日本が出遅れているからこそ「凄まじくラッキー」だという。「海外勢はレバレッジを効かせまくっていたせいで、今回のCrypto winterの直撃を食らってお通夜のようになっている。一方で、幸か不幸か日本は出遅れたがために、誰一人食らっていない」と説明。また、大きなチャンスとして、コンテンツアプリケーションレイヤー、ゲームやNFTへの投資を挙げた。

藤本氏は、勝ち筋について「条件付きではある」と前置きをしたうえで「可能性はある」と回答。「日本では“日本発”を言い過ぎている気がしていてそこに違和感を感じている。Web3時代は、世界視野、人類全員に貢献できるマインドが大切。マインドセットを変えるのが良いのではないか」と述べた。

また、藤本氏は「Web3でチャレンジするなら英語は必須である」という。Web3思考、グローバル視点、英語の3つが揃っていることがスタートラインであるとポイントを説明。さらに、チームを日本人だけで固めるのではなく、グローバルのチームをつくることが大切だと語った。

Web3は初期からグローバルを見定めた展開を

続いて「日本が可能性を開くために何が大切か」に話題は移った。

増島氏は、日本人は日本にこだわる傾向が強いことを指摘。SpotifyやPayPalのオリジンは北欧だが、北欧であることにこだわっていない。日本もそこを目指したほうがいいのではないかという。

さらに「Googleはアメリカが本社だが、グローバルなサービスはアイルランドから展開し、アイルランドにお金が流れている。アメリカのストックマーケットに上場をしているからアメリカ企業なのか、なにをもってGoogleをアメリカ企業と捉えているのかという話。グローバル企業と呼ばれる会社は本来そういうものであり、国籍などにこだわらない。“日本が勝つ”というが、どうなれば”日本が勝った”ことになるのかという点は、よく考えたほうがいい」と語った。

廣末氏は、増島氏の話を踏まえたうえで「日本で基盤をつくって世界に・・・・・・、というのはたぶんダメで、最初からそういう発想を捨てないといけなかったというのが反省点」と語り、「実際に、(気がついたら)色々な規制でがんじがらめになって身動きが取れない状況になっている。Web3は初期からグローバルでやる前提の組み方や、コマの進め方を考えたほうがいい」と話した。

暗号資産を含めたメタバースはアメリカ大陸発見と同様の流れが生まれる

セッションでは、國光氏が「暗号資産を含めたメタバース」を「アメリカ大陸の発見」に例えて説明をする場面も。

「今起こっていることは、Web3・メタバースという新大陸に若者たちを中心に移住している状態。アメリカ大陸が発見されたときに初めに立ち上がったビジネスは船。そこで船舶王が生まれ、不動産王、鉄道王、鉄鋼王、石油王、金融王、自動車王が生まれた流れがある。この流れと同様に、暗号資産を含めたメタバースに新しい経済圏が生まれる」(國光氏)

そのうえで、Crypto Kidsと呼ばれる若者たちが気づいていないことがあると指摘。新大陸を目指す多くの若者たちはDAO(分散型自律組織)で働いており、給料をUSDCやUSDTなどのステーブルコインでもらっているという。

そのため、銀行口座にお金がなく「クレジットカードが作れない」「ローンが借りられない」などの問題が起こり得ると指摘。Web2はダサいという空気感が若者たちにあるからこそ、Web2とWeb3を繋ぐのもひとつのビジネスチャンスではないかと語った。

IVS Crypto 2022 NAHAで登壇していた注目のスタートアップ

セッションでは、Web3系のスタートアップを数多く見ている藤本氏による、IVS Crypto 2022 NAHAで登壇している注目のスタートアップの紹介もあった。藤本氏が挙げたのは「Blockchain Space」「EthSign」「BreederDAO」だ。

「Blockchain Spaceは、ギルドをつくるためのSaaSで、ブロックチェーン版のセールスフォースのようなもの。EthSignは、Web3版「DocuSign」のような電子署名サービス+裁判所のようなもの。スマートコントラクトで契約しておけば、契約不履行があった場合没収できたりできる。そこがWeb3的に面白い点。セコイヤが入っており、トップティアの投資家から資金調達を完了したプロジェクト。

BreederDAOは、流動性を供給するようなプロジェクトで、アンドリーセン・ホロウィッツがリードで入っている。どれも面白いプロジェクトで、IVS Crypto 2022 NAHAに来ている。先ほど英語の話をしたが、下手な英語でもいいので話しかけて生の情報をキャッチアップしてほしい」(藤本氏)

Web3は一人称「起業家」ならやるしかない

セッションは、各スピーカーから日本の暗号資産・Web3業界の未来にかける思いを語って幕を閉じた。

「未来にかける思いではなく、もう必然的なストーリーになっていると思う。取引所は、1998年頃のISP(インターネットサービス・プロバイダー)のような役割を果たしている。若者が入ってきていて、リスクマネーが入ってきていて、爆発寸前だと思う。Web3界隈で、次の10年20年が起こるのはIVSのパーティーで確信した」(廣末氏)

「この会場に来ている人は、起業家の人が多い。そしたら、良いか悪いかではなくWeb3をやるしかない。Web1の時もインターネットの将来について偉そうな人が色々と批判しているなかで、起業家の人はみんなやりぬいてきた。起業家である以上は一人称で物事を見ることは必須で、Web3の良い点ダメな点など評論している暇はない」(増島氏)

「『ワンピース』で例えるとワノ国で競り合いをしていたら、外はCrypto winterでメタメタだった。日本勢は幸いなことに出遅れたがために損していない。潤沢な円を持って、一気に外に出ていって、この世界を獲りにいきましょう! 僕もThirdverse、フィナンシェ世界戦やりきります!」(國光氏)

「世界はどんどん変わっていて、節目に私たちはいると思う。國光さんの話を聞いていて、私も爆速で走ろうという気持ちになった。多くのセッションの中から聞いてくださっていると思うので5年後10年後に“あの時のセッションにいた”というところで、皆さんと情報交換をして前に進もうと思いますし、そういうふうになってけばいいなと思う」(藤本氏)

IVS公式アカウントでは、「IVS2022 NAHA」と「IVS Crypto 2022 NAHA」の中から厳選したセッションをレポートします。

書き起こし:大前綾香、記事:砂流恵介


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