
中学の数学で習う多項式は無限次元ベクトル空間
大学の教養課程で線形代数を学習する方が多いかと思います。
線形代数学に関連する内容について、ツイートしたものです。
#英語 を勉強すると #線形代数学 などの用語が分かりやすく。例えば、direct sum(直和)など。また、HTMLなどのマークアップ言語などのハードルが下がるかと。#プログラミング だけでなくNoCode(#ノーコード)に触れておくのは良→#筑波大学 だと #プロリン のレポートの合間などに😊#今日の積み上げ https://t.co/DShoCECYvL pic.twitter.com/5as2rGJlL2
— タロウ岩井の数学と英語 (@55DhZFQP4X8RMXt) December 21, 2020
理数関連の分野だけでなく、経済学などでも使われる線形代数ですが、本のはじめの方に線形空間の公理が大きく書かれていることが多いです。
大学に入学した頃に、公理からスタートしてそこから数学の推論規則に基づいて様々な定理を導き出す流れの大学数学に慣れるは大変だった記憶があります。
そこで、抽象的な数学を理解するために、やり易い方法はないかと考えました。
その方法として、具体例を大切にすることが挙げられるかと思います。
数学の話の進め方として、はじめに公理があり、そこから議論を膨らませていくのですが、1つ注意点があります。
それは、「公理(定義)を作る」のは自由なのですが、公理を満たすものが数学の世界に少なくとも1つ存在しなければならないということです。
このことを利用して、はじめて学習する分野について、具体例を通じて調べると、納得しやすかったり、難しい数学の内容の理解が深まったりします。
▼目次
・線形空間の公理
・公理を満たす具体例
それでは線形空間の公理を紹介します。
集合Vというと数学的な対象物を集めたものですが、和(二項演算)などの代数学的な性質を持ったものが代数学の研究対象となります。
【線形空間の公理】
Kを実数全体か、複素数全体から成る集合(体)とします。
より一般的には、Kは体(たい)という四則演算が可能なものです。
空集合ではない集合Vが線形空間であるとは、次を満たすことです。
①和という二項演算が定義されている
V×V → V という写像(関数)のことを二項演算と呼びます。
( x , y )に対してx+yというVの要素(元)を対応させる写像の対応規則が与えられているということです。
②スカラー倍が定義されている
K×V → V という写像(関数)のことをスカラー倍といいます。
( k, x )に対してkxというVの要素(元)を対応させる写像の対応規則が与えられているということです。
これらの演算について、次の③から⑦が成立します。
③加法の結合法則
(x+y)+z = x+(y+z)
④加法の交換法則
x+y = y+x
⑤零元の存在
0∈Vが存在して、
どんなx∈Vに対しても0+x = x
⑥逆元の存在
Vの各要素(元)xに対し, x+x'= 0 を満たすx'∈Vが存在する。
⑦次のように加法とスカラー倍が関連している
k(x+y)=kx+ky (k∈K, x, y∈V) ,
(a + b)x = ax + bx (a,b∈K, x∈V),
(ab)x = a(bx) (a,b∈K, x∈V)
1x =x (1はKの積に関する単位元でx∈V)
この線形空間の公理を満たすものを線形空間(代数)といいます。
線形空間(代数)の各要素(元)のことをベクトルといいます。
そのため、線形空間のことをベクトル空間ということもあります。
【公理を満たす具体例】
先ほどの線形空間の長い公理を満たす具体例を1つ挙げます。
体Kを実数全体Rとします。
Vとして実数係数の多項式全体とします。
Vにおける和は中学数学の多項式の和です。
そして、スカラー倍も中学数学で習った「数字×多項式」とします。
ここまでで、公理の①と②が満たされました。
③から⑦を確認します。
f(x), g(x)∈Vについて、中学数学の多項式で習った通り、
加法に関して結合法則と交換法則が成立しますので、③と④は満たされています。
多項式の加法について、0が零元になります。
どんな多項式f(x)に対しても、0+f(x) = f(x)です。
このため、⑤「零元の存在」も確認できました。
多項式の加法についての逆元は、係数のプラスとマイナスを逆にしたものです。
係数のプラスとマイナスを逆にした多項式が逆元になるので、⑥も確認できました。
⑦を確認します。
多項式f(x),g(x)∈Vとa,b∈Kとして確認します。
スカラー倍が「数字×多項式」ということからすべて成立します。
a{f(x)+g(y)}=af(x)+ag(y),
(a + b)f(x) = af(x) + bf(x),
(ab)f(x) = a{bf(x)},
1f(x) =f(x)
※中学数学や高校数学のように中括弧を使いましたが大学数学は中括弧を使わないで表すことが多いです。
a(f(x)+g(y))=af(x)+ag(y) のように表します。
これで、①から⑦が確認できたので、
「実数係数の多項式全体は実数体上の線形空間」ということが分かりました。
ちなみに、線形空間の次元とは、基底を構成するベクトルの個数です。
線形空間Vのどんなベクトルも基底ベクトルの1次結合で表せ、しかもその表し方は唯一ということです。
※ここで、a1とはa×1のことです。
ものごとを見るときに、視点を変えるとちがって見えるときもあります。
線形空間の公理に注目すると、
中学1年の数学の文字式で、いきなり無限次元の線形空間が出てきて、高校数学で2次元の平面ベクトルや3次元の空間ベクトルを習うということです。
この見方は、大して有用ではなさそうですが。。。
高校数学の平面ベクトルや空間ベクトルは大きさや角度といった概念をもつ計量的なベクトルになっています。
だからこそ、単なる文字式の計算に比べると高校のベクトルの問題は複雑になっているかと思います。
ちなみに、高校数学で習う数列についても、値が実数(複素数)になっている数列全体を集めた集合をベクトル空間と考えることができます。
多項式を0と等号(=)で結ぶと方程式になります。
2次方程式の2つの解について、基本対称式にご興味があれば、次の記事をご覧頂ければと思います😊
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