【書評】教養としてのアート 投資としてのアート

最近、様々な市場を調べていたきっかけでアートのマーケットに興味を持ち、丁度面白そうな新書が出たので読んでみました。

現状の国内・国外アートマーケットの状況から、現代アートについて、アートの価格がどのように決まって行くのか、また アート投資初心者がどうやって購入していけばいいのか、分かりやすくまとまっていたのでとてもオススメです。
その中でも、自分が面白かった部分をいくつかピックアップして紹介したいと思います。

現代アートとは何か

現代アートというとすごく難しそうなイメージが皆さんにもあると思いますが、実際に現代アートというものは複雑だったり、抽象的なものが多く、プロの方でも初見ですぐに理解できるものではないものみたいです。

なので、一見わからないものをより知りたいと思う探求心が大事とのこと。
そのこともあって、アート好きな経営者も多いとのこと。

そもそも、現代アートは何かというと、デュシャンが作った作品が大きなきっかけになったそうです。それがこの作品です。

デュシャンは「考え方」をアートにしたと言われています。
それまでアートは美しいものを目で鑑賞するものでしたが、その概念を変えたのがこの作品を言われています。そこからアートは何を芸術の中で表現するのか?という問いに答えるような、発想を模索するようになり、それが現代アートと呼ばれるようになりました。

現代アートによりマーケットが大きく変化

デュシャン以降、アートの持つ可能性が爆発的に広がり、それを流通させるマーケットにも大きな変化を与えたました。
それまで、主に個人が画商としてアートを流通させていたのですが、資本主義的な巨大にビジネスへと発展していたったと言われています。

1対1の取引からオークションといった公開市場へ流通が流れ、アートが資産価値も持つように、またプライマリー(1次流通市場)とセカンダリー(2次流通市場)が結びつくことで、価格をマーケットで決める仕組みが生まれました。

また、アートの価値が美しさからコンセプトの面白さに変わり、芸術のバックグラウンドがないアーティストも増えたそうです。


日本のアートマーケット

世界のアートマーケットは8兆円を超える規模まで成長したにも関わらず、日本のマーケットは500億ほど、世界に対して1%にもみたないそうです。
なので、日本のギャラリーは、海外の顧客をターゲットとせざるを得ず、海外の顧客獲得に力を入れざる得ないのが現状だそうです。

そんな日本もバブル期には海外のアートを大量に購入していたものの、さして価値のないもの、購入していたこともあり、資産的価値は下落。
アートは買っても価値の上がらないものという印象がついてしまったそうです。

アートはプライマリーとセカンダリーが健全に回っていることがとても重要であることが書かれており、市場が拡大の鍵を握るそうです。


海外のアートマーケット

近年はアートフェアが世界中で開催されるようになり、アートマーケットは活性化されているみたいです。
また、世界最大のギャラリー「ガゴシアン・ギャラリー」は1社で年間売上1000億以上と言われていて、1社で日本のマーケットの規模を上回っているとのこと!(恐ろしい)

このような、メガギャラリーの取り扱いアーティストは価格が下がらないと言われている。
なぜメガギャラリーは価値を下げないのかというと、大手ギャラリーは一度販売したアートを買い取る資金力があるため、コレクターが作品を買った後でも、販売価格以上で買い取れるという信用を作っているそうです。

PRだけで商品の価値を維持するのは難しいので、美術館や評論家といった業界関係者から高く評価されて、美術史における存在感を高める必要があります。
美術館、オークションハウス、評論家によるシンジケートが価値を作り、購入者を儲けさせることが、ギャラリーの信用を作っていくとのことです。


アートの価値が上がる仕組み

アート作品の人気が上がるための大切な要素があります。
まずは有名美術館での個展や国際的な美術展覧会での出品。
それにより専門家から高い評価を得る。
そして、オークション市場でも人気がでて、高い価格で落札される。
それに応じてプライマリーの値段も上がる。
という仕組みなっているそうです。


アートの価値を決めるにいたって、ギャラリー、オークションハウス、美術館、評論家、キュレーターの存在が大きく関与することが分かりますね。


アートの新しい評価軸

先ほど、説明した通り、今までは美術評論家の評価がアートの価値に大きい影響を与えいることが分かります。
しかし、最近ではSNSの大きな普及により、消費者側の素直な意見が反映するようになり、上からのお仕着せではなく、多くのアートファンに感動や共感を与えることによって評価される方向に軸が変わり始めているそうです。

また、アートイベントなどの大衆を相手に入場料を得るというビジネスモデルが確立し、体験として面白い、どれくらい大衆を引きつけられるかという新しい評価軸も増えました。

近年、タレントやインフルエンサーのような人もアートの世界に参入するようになり、よりアートの大衆化が起き「売れる作品こそが良い作品」という理論がアートにおいても当たり前になる時代に変わっていくそうです。

インターネットの普及により「共感する質と量」が可視化しやすくなり、一部のの人によって評価や価値づけされていた時代から、誰もがアートを評価できる時代になりました。
アーティストにとって、顧客の評価の声がどんどん大きくなり、アートの民主化が進んでいくとのこと。


最後に

そのほかにも、買ってはいけないアートの見分け方や、アートの正しい買い方など、アートの世界を知りたい方やコレクションを始めたい方にぴったりの内容になっているので是非読んでみてください。

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