雑文


原宿を見渡す。作業員がクレーン車に乗って明治神宮の森を刈り込んでいる。枯れた街路樹の葉が辺りを舞っている。様々な人種が辺りを歩いている。喫煙スペースからは煙草の臭いが流れ込んでくる。橋の上には虚無僧が立っていて、随分と大きな尻をジーンズに詰め込んだ女がじっと眺めている。頬と指を冷たい風が攻め立てる。が、首筋は強めの日差しを感じている。流れてくる中国語。GAPの建物。特にカラフルでもない人々の服装。

ダウンジャケットを着ている人。トレンチコートを着ている人。パンツスーツを着ている女。真冬なのに素足をさらけ出している女。青山通りを歩いていく様々な人々。

北方領土の交渉中だからか、赤坂はあちこちで外宣車が走っていた。検問もあちこちに張られ、警官もうようよしていた。


スーツを着た初老の男と、若そうな男が並んで歩いている「学生服…」「いや自分は」「今は何してるの…」「今はフリーターとかですかね…」


路上に本当にたくさん転がっていた労働。クレープ屋の看板を持って竹下通りの片隅に立っている男。竹下通り越しに何かよくわからない言語で楽しそうにおしゃべりをする黒人たち。その言葉の橋の下をくぐり抜けて歩く修学旅行生たち。服装も顔も地味なのにやたら胸の大きな少女。


カット7000円の美容院(階段を降りていった先に入り口がある) こぢんまりとした画廊。手を組んでギャラリーを見て回っている客を見つめている女。画廊に飾られた花をガラス越しに写真に撮っている女。

僕は歩く。混濁した記憶の中を歩く。青山御所の衛兵たちの内緒話に耳を傾ける。豊川稲荷の喫煙所から流れてくる煙草の臭いを嗅ぐ。誰かの手を浄めた水が排水溝へと注がれていく音を聞く。蕎麦をすする。鼻水が流れる。嵯峨谷よりだしは旨いが麺は物足りないと感じる。混濁した記憶の中を歩いていく。奇抜な格好をした男が似たような格好をした女の写真を撮っている。

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