2012年12月13日「虫詰め飴玉」

 「虫詰め飴玉」というものが少年たちの間で流行する。近所の路地の奥の、じめじめとした駄菓子やで売られている独自の菓子で、中に蝿や蜘蛛などがつめられた丸い飴玉だった。中に虫が入っているので、ずっと口に含んでいると虫を食べることになってしまう。これをどれだけ長く口に入れていることができるか?というゲームが少年たちの間で流行したのである。自分に自信のない、道化を演じることでしかクラスの中で地位をたもつことができない少年がこのゲームに参加する。中には今まで見たこともないような奇怪な形をした虫が入っている。少年は煽られるままにその飴玉を最後までなめ続け、その虫を飲み込んでしまう。それから自分の体に異変が起きて、徐々に虫へと変化していってしまう。やがて少年の体からは糸がつむぎだされていき、そして少年はまゆとなった。数日後、まゆからでてきたのはこの世のものとは思えないほどに美しい生き物で、しばらくあたりを飛び回って人々を魅了したかと思うと、はるか青い空の向こうへと飛んでいってしまった。

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