雑文

何も書けなくなってしまった僕に、君は何かを言おうとしている。君は国道を見下ろす丘の上に建てられたあばら家の中にいて、窓のサッシにもたれて必死に口を動かしている。目を瞑るとそんな光景ばかりが浮かんでくる…。

アンヴァリッド、石畳、そしてベンチ…。ベンチに座って僕は道行く人の顔を眺めている。みんな喪服を着ている…わけではない。大抵は観光客だ。僕は陶淵明の書いた詩を思い出す。墓のそばに植えられた松柏の木陰で友人たちと宴会した時のことを書いた詩だ。墓場の象徴だった松柏を自分の庭に植えるのが当時の知識人の間で流行っていた、と詩の解説に書かれていた。松柏を死の象徴であると考える人はもういなくなってしまった。どんな喪服も最終的にはパジャマになる。…僕は観光客を眺めながらそんなことを考えていた。東洋人の観光客。中国人か日本人か、遠目に眺めているだけではわからない。わかりたいとも思わない。

魔法都市。学生たち。彼らが伸ばした触手が少女の耳鼻口その他の穴という穴から彼女の内部へともぐりこんでいく。学生たちは魔法を使って自分たちの体を作り変えていく。ある者は腕を4本に増やした。またある者は炎を自由に吐くことができるように肺を改造した。自分たちに出来ないことは何もない。自分たちこそが地上の支配者だ、と学生たちは考えた。彼らはついに教師たちをも殺害した。彼らが考えていたよりも教師たちを始末するのはずっと容易かった。年齢を重ねることによって得ることができる狡猾さが、教師たちを実際よりもずっと強く見せていたのだということを学生たちは知った。そして学生たちは思うようになる。魔法を使わずに魔法使い共を従えることが出来るようになる方法があるとすれば、それこそが真の魔法ではないのだろうか?と。そしてそう考えることができるようになって初めて人は人に何かを教えることが出来るようになる。そして何かを人に教えることが出来るようになった時から、魔力の減退は少しずつ始まっていくのである。

この記事が参加している募集

自己紹介

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?