雑文


 公園。外国人だらけ。「メキシカーナ!」と叫びながら子どもたちがチャンバラごっこをしている。銀杏並木は全て葉を落として丸裸になっている。坂を降りると池がある。ある樹木で何やら作業をしていた。公園を出ると目の前に食料品店がある。その先の小道をずっと行くとさるヨーロッパの大国の大使館前に出る。さらに行くと大通りに出る。ここを北上していくとやがて恵比寿や代官山、渋谷にたどりつく。


 代官山はおしゃれなブティックがたくさんある。が、私のような人間にはどれも縁がない。ただ、区の運営するプールだけは一度利用したことがある。代官山駅からそのプールに行くとなると線路を跨ぐ歩道橋を渡り、さらに階段をおりていかなければならないのであるが、その階段のところで男女が何か撮影をして道を塞いでいた。女は階段と平行になって座っていた。別に何のやましいこともない普通の撮影であった。AVの撮影だったらよかったのに、と思いながら私は女の長い足をまたいでプールへと急いでいった。

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 なぜここが9世紀の西安でないのか、なぜここが19世紀のパリでないのか。そんな平凡な、あるいは普遍的なことを考えながら私は何度も町をさ迷った。私はありとあらゆるものを見た。しかし空虚だけは見なかった。それは決して虚無ではなかった。そこにあるのはメルセデスベンツの直営店であり、古びた漢方薬局であり、フルーツパーラーであり、墓地であった。

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 戦争はしたくない。ウクライナやアレッポのような目にあいたくはない。あれらは21世紀型の悲劇である。いや、あれを悲劇だと称したくはない。かといってあれを喜劇であるとも言いたくない。あれは…問題劇である。

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