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コメンテーター津良野房美#37

『こんぴらさん』の名前で親しまれている金刀比羅宮の参道はお土産屋や蕎麦屋などが並び賑やかだ。

「これ借りまーす、」
三人は杖を借りた。
参道に並ぶ多くの店では参拝客用に杖を無料で貸し出している。

ここから本宮まで七八五段の石段を登る。

石段を百段ほど登ると両側に赤茶色の狛犬がある。備前焼の狛犬は重要文化財らしい。ここからは「一の坂」と呼ばれ勾配は急にキツくなる。

「一の坂」を登ると「大門」と呼ぶ大きな風格のある門をくぐる。ここから先が金刀比羅宮の境内だ。ここまでで三八五段。

大門をくぐるとしばらく平坦な石畳が続き、また石段を登る。五百段を超えたあたりからまた勾配がキツくなった。

「まだ登るのー!」
スタスタ先を行くポンタに百合絵が言った。

「杖を上手に使うと楽だよ」

房美はポンタの言う通り、杖に少し体重を乗せるように登ってみた。
"なるほど、確かに楽だ"

石段を登り切ると目の前に日光東照宮のような貫禄ある建物が現れた。

「やったー!着いたー!」
百合絵が言った。

「ここはゴールじゃないよ、もう少し」
ポンタが言う。

「ひえーーっ!まだかー!!」
百合絵はヘロヘロだ。

ここからが最後の難関、最も角度が急な一三三段の石段だ。

でも一歩ずつ登る度に本宮の建物が近づいて来る。ランナーズハイならぬイシダンズハイの三人は疲労がふっ飛びもう弱音は吐かない。

三人は七八五段の石段を制覇した。

有り難き御本宮にお参りし、おみくじを引いた。おみくじには「こんぴら狐」の金のお守りが入っていた。

「せーの!」
同時におみくじを開く。

三人とも『大吉』だった。

本宮の隣は展望台になっている。
標高二五一メートルからの景色は壮観だ。
ポコリポコリと所々に山がある讃岐平野が広がる。善通寺からもよく見えた象徴的な三角の讃岐富士の向こうには瀬戸内海が見える。

「あれが瀬戸大橋だよ」
ポンタさんが教えてくれた。

彼方に今朝渡って来た瀬戸大橋が連なって見えた。


つづく

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