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【連載小説】少年時代#17

針葉樹の三上の森は秋が来ても色付かず濃い緑色をしている。
秋が深まるに連れ沢山の赤く色付いたアキアカネが三上山から麓に降りて来る。

埼玉県から転校して来た奈々はすぐにクラスに打ち解けた。

東京弁を話す奈々を女子達はカッコいいと崇拝し、周りにはクラスの女子が群がっていた。
そのうちその子らは『さー』とか『じゃん』とか奈々の東京弁を真似して話す様になった。


「ポンタ!転校生来たんやて?」

休み時間に二組からはざま君が来た。


「奈々ちゃん!二組のはざま君や」

ポンタは女子達の中心にいる奈々に声掛けた。

「はざま君ね、はじめまして!
『さいとうなな』です!
五区に住んでます、よろしくね!」

奈々ははざま君の方に顔を向けていつもの弾けるような笑顔で言った。


「、、、は、は、は、は、『はざま』です!、、よ、よ、よ、四区に住んでます!」

今日のはざま君は一段とどもりが酷い。

そんなはざま君を見て奈々はにっこりと微笑んだ。


通学路と用水路の間には子供達の安全のために緑色の金属製の柵が設置された。

三上山から降りて来た無数のアキアカネがポンタ達の頭上を飛び回っている。
学校から団地の裏口の近江富士橋まで柵は続き、柵の上には飛び疲れたアキアカネが鈴なりに羽を休めていた。


「なぁポンタ、奈々ちゃんめっちゃ可愛いやん!あんな子見た事ないで、」

と言いながら、はざま君は人差し指と中指で柵の上のアキアカネの羽を挟んで簡単に捕まえた。

「ポンタはええなー、あんな可愛い子が隣で、」

と言ってはざま君は捕まえたアキアカネをアスファルトに投げ付けた。

柵の上に止まったばかりのアキアカネは手を近づけるとすぐ逃げる。
しかし止まってしばらくすると羽を下げて休息モードになる。そうなれば指で羽を挟むだけで簡単に捕まえることができる。

通学路には無数のトンボの死骸が散乱している。アキアカネは残酷な少年達の格好のおもちゃだ。

ポンタ達は学校への行き帰りトンボを捕まえてはアスファルトの通学路に投げ付けたり、羽を半分ちぎって飛べなくして『グライダー』とか、胸に付けて『ブローチ』とか言って遊んでいた。


「ポンタくーん!」

数人の女子を引き連れて奈々が追いかけて来た。

「もー!トンボかわいそうじゃん!」

アキアカネのブローチをTシャツに三つずつ付けているポンタとはざま君に向かって奈々は言った。

二人は慌ててブローチを取って草むらに投げた。


「今度の日曜日家で『お誕生日会』やるから二人共来てね!」

と言うと、奈々と女子達は走って行ってしまった。


"お誕生日会?"

初めて聞くワードにポンタとはざま君はしばし呆然と立ち尽くしていた。


つづく

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