連載小説 九本足のタコ(30)最終回
きょうすけ君!気付いて!オレだよ!タコ造だよ!
オレは新しく生えて来た二本の足がきょうすけ君に良く見える様に九本の足をいっぱいに広げて、口からプクプク泡を吐きながら懸命に叫んだ。
きょうすけ君は不思議な行動を取るオレの事を水面に浮きながらしばらく見ていた。するとハッと気づいた様に水中メガネの中のきょうすけ君の目が大きく見開いた。そして、タコ造!と言うと口からブクブクと泡が出た。
きょうすけ君はにこりと微笑んでオレに向かって手を振った。
きょうすけ君、会いたかったよ、きょうすけ君、お兄さんになったね、オレはこんなに元気になったよ、ほら手も生えて来た、手じゃねえ、足だ、二本も生えたんだよ、すごいだろ。
◇
海水浴の帰りに寄った、あの海鮮料理屋できょうすけ君が言った。
お父さん、僕、今日タコ造に会ったんだ、タコ造の足ちゃんと生えてたよ、二本も生えて足は全部で九本になってた。アレは絶対にタコ造だよ。
そうか、良かったなきょうすけ、それはきっとタコ造だ、神様が二人をまた合わせてくれたんだね。
お父さんは海鮮料理屋の生簀を見つめながら呟く様に答えた。
生簀の前ではリコとお母さんがあれこれ品定めしている。
わたしあのタコがいい!妹のリコが指差した。
へいらっしゃい!タコ焼きにするかいお嬢ちゃん!
そうね、じゃ店長さん、半分刺身で半分茹でてくださる、
へい!綺麗なお母さん!まいどあり!
もし皆さんが海で九本足のイケタコを見かけたらそれはオレです。
きょうすけ君が付けてくれたオレの名は、
「タコ造」
九本足のタコ 完
長い間読んで頂きありがとうございました
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