一挙版 幸せになりたいエルフの冒険 第五話 エルフと悪魔 後編
エルフの女の子デフィーは、
ダークエルフの女の子フィリア、
人間の女性のシャイルと共に
幸せを探す旅の途中です。
三人は大陸の内陸側へ行く為、
カシマール山を登り始めますが、
道に迷ってしまいます。
困り果てていた所で
女性管理人のレイジーが営む
カシマール山荘を見つけ、
泊めてもらうことになりました。
夕食の団欒後、
急に疲れが出たデフィー達は、
レイジーの勧めで部屋に戻ると、
ベッドの中で
すぐさま眠りについてしまいました。
デフィー達が眠りについてから数時間後、
デフィーが一人だけ目を覚まします。
デフィー「・・・」
寝起きのぼんやりとした状態で
辺りの様子を見るデフィー。
デフィー(あら?・・
いやに真っ暗ね、
こんなに暗かったかしら?・・)
改めて周囲をよく見回すデフィー、
すると何処までも広がる暗闇の中に、
自分一人がポツンと横になっている
ことに気がつきます。
デフィー「えっ!?」
デフィーは寝ていた状態から飛び起きます。
デフィー「・・こっ、ここは・・何処なの?・・」
改めて自分の周囲の状態を
確認するように見回すデフィー。
デフィー「・・今晩は確か、
レイジーさんの山小屋のお部屋で
眠っていたはずなのに、
何でこんな場所に・・
あっ!!
フィリアは?
シャイルさんは?・・」
デフィーは、
一緒の部屋のベッドに寝ていたはずの
フィリアとシャイルの姿が、
自分の傍に無いことに気がつきます。
デフィー「・・・
一体、
どうなってしまっているの?・・」
その時、
デフィーの背後から声がします。
レイジー「フフッ・・
デフィー様~、
よ~く休めていますか~?」
デフィー「!?」
デフィーが驚いて後ろを振り向くと、
そこにはレイジーの姿が有りました。
突然声を掛けられて驚きながらも、
レイジーの姿を見たデフィーは
安堵の表情を浮かべます。
デフィー「レッ、レイジーさん・・
良かった、困っていたんです。」
笑顔でゆっくりと歩み寄りながら
デフィーの話を聞くレイジー。
デフィー「さっきまでお部屋のベッドで
フィリアとシャイルさんと一緒に
寝ていたはずなのに、
今気がついたらこの場所に居て・・」
腕を伸ばせば触れれる位の距離まで
デフィーに近寄り、
立ち止まるレイジー。
デフィー「ここは何処なんですか?
それにフィリアとシャイルさんは
何処に居るんでしょうか?」
レイジー「フフフッ・・
ここが何処なのか
教えてあげましょうか?」
デフィー「はい」
レイジー「ここはねぇ~、
あなたの夢の中なのよ~」
デフィー「?
私の・・夢の中?・・」
レイジー「フフッ・・
正確には、
私が支配している
あなたの夢の中・・
と言った方が
いいかもしれないわね~」
デフィー「私が支配?・・
レイジーさん、
何を言っているんですか?」
怪訝な表情になるデフィー、
その様子を見てにこりと笑うレイジー。
レイジー「あら、
そんな風に
怯えなくてもいいのよ~。
もう大丈夫、
あなたのことは、
私が救ってあげるから~」
デフィー「・・私を・・救う?
どういうことですか?
それよりもフィリアと
シャイルさんは何処ですか?
二人は無事なんですか?」
レイジー「フフフフフッ・・・」
デフィー「何がおかしいんですか?」
レイジー「だって~、
自分が不安で仕方ない状況なのに、
お友達のことを心配するなんて
友達思いなんだなぁ~って、
思ってね」
少し怒った表情になるデフィー。
デフィー「・・レイジーさん、
もう一度聞きますよ、
二人は、無事なんですか?」
レイジー「あらあら、
嫌だわ~、
そんな怖い顔しないで~。
大丈夫、二人共無事よ~」
安心した表情を浮かべるデフィー。
デフィー「・・良かった・・」
レイジー「お友達の二人はね、
今もあなたの身体のすぐ傍で
疲れてぐっすり眠っているわ~」
デフィー「・・私の身体のすぐ傍?」
レイジー「フフッ、
それでね~、
あなたの救済が済んだら
次はあの二人の番なのよ~」
デフィー「!?」
警戒した表情になるデフィー。
レイジー「だからね、
私も忙しいのよ~。
何せ一晩で三人も救わないと
いけないんだから~」
デフィー「レイジーさん・・
さっきから何を言って・」
レイジー「と言う訳だから~、
早速始めさせてもらうわよ。
デフィーちゃん!」
デフィーが話し終えるのも待たずに
そう言うと、
レイジーの身体の一部が
少しずつ膨らみ始めました。
デフィー「!!?
レ、レイジーさん!!
何をしているんです!?
か・・身体が膨らんで・・」
上半身を屈めながら苦しんでいるレイジー。
レイジー「ちょっ、
ちょ~っと待っててねぇ~・・
あ、あと少しでぇ~
おっ・わっ・るうぅう~かあぁあ・・
らあぁぁぁぁーー!!!」
叫びながら小刻みに震えるレイジー。
すると頭からは二本の角が、
口元には牙が、
背中からは蝙蝠の羽に似た翼、
そして腰部分からは尻尾が、
少しずつ伸びながら生えてきました。
デフィー「!!!」
目の前で起こっている
信じられない光景に、
何もすることが出来ず
ただ立ち尽くしているデフィー。
レイジー「はあっ・・はあっ・・はぁ・・」
変化を終え、
荒い息遣いのレイジー。
レイジー「ふぅ~・・
お・待・た・せ~」
角や翼の生えたレイジーの姿に圧倒され、
恐ろしくなってしまうデフィーですが、
勇気を振り絞って話しかけます。
デフィー「レ・・レイジーさん・・
その姿は一体?・・・」
嬉しそうににんまりと笑うレイジー。
レイジー「デフィーちゃん、
まだ本当の自己紹介を
していなかったわね?」
デフィー「本当の?・・自己紹介?・・」
レイジー「改めまして、
私は悪魔!
悪魔のレイジーよ!」
デフィー「あっ・・悪魔?・・」
レイジー「ねぇデフィーちゃん?
夕食の後にした話を覚えてる?~」
デフィー「?」
レイジー「あなた達が
町で聞いたって言う、
カシマール山に立ち寄った人間達が
すっかり無気力に
なってしまったって噂・・
それはきっと私が原因だわ~」
デフィー「!?
あ、あなたが?・・」
レイジー「フフッ、そうよ~。
まぁ無気力にするのが
目的だった訳じゃなくて、
結果的にそうなってしまった
だけなんだけどね~」
デフィー「・・ま、まさか、
この山に出る『鬼』というのも
あなたのことなんですか?・・」
少しムッとした表情になるレイジー。
レイジー「言ったはずよ~、
私は悪魔、鬼じゃないわ。
それにこの山で
鬼を見たことが無いのは事実よ。
大方私の頭の角を見た人間達が、」
自分の頭の角を指先で撫でるレイジー。
レイジー「私のことを鬼だと
勘違いしたんじゃないかしら?」
デフィー「・・・
この山に出る鬼の正体も、
山を訪れた人達が
無気力になってしまった原因も、
あなただと言うんですか?・・」
レイジー「う~ん・・
多分そう言うことになるわね~」
デフィー「な、何故です?
何の為にそんなことを
するんですか?」
レイジー「何の為~?
フフフフッ、
理由なんて特に無いわ~。
したいと思うからする、
それだけよ~」
デフィー「そんな・・
自分がしたいと言うだけで、
他の誰かに
酷いことをするなんて・・」
レイジー「フフフッ、
理由の有無なんて
問題じゃないじゃない?
全てのモノに
理由が有る訳じゃないでしょう?
現にこの世界は
理由の無いことで
溢れているんだから~。
それに酷いと感じるかどうかも
本人の受け取り方次第よ~。
私はただ解放して
救ってあげている
だけなんだから~」
デフィー「解放?救う?
一体何からですか?」
レイジー「フフフフッ、
生きていると色~んなことが
有るでしょ~う?
夢やら希望やら絶望やら、
家族に友達、恋人、
友情、愛、孤独、
お金、財産、権力、貧困、
本音、建前、世間体、
勝者に敗者、健康に病気、
権利だ義務だと・・・
他にもい~っぱい!
とにかく面倒くさいことが
多いでしょ~う?
た~くさん有るでしょ~う?
私はそんな面倒なこと、
大変なことを
何も考えなくて済むように、
人間達の精神や魂を解放して
救ってあげているのよ~。
ねぇ~?私、
と~っても善いことを
していると思わな~い?
酷いことなんて
何もしてないでしょ~う?」
デフィー「でも・・
あなたが救済の名のもとに
そうして来た人達は、
生きる気力を失い、
何もすることが
出来なくなっているんですよ?」
レイジー「フフッ、それはね、
その人達が自ら進んで
なったことなのよ~。
私は危害も加えていなければ、
強制もしていない・・
ただ手放して、
楽になるように呼びかけた・・
それだけよ~。
そもそも人間達は、
多くのモノを
持ち過ぎているのよ。
好む好まざるも、
良いことも悪いことも関係無く、
ぜ~んぶひっくるめてね。
それが生きていると少しずつ、
確実に増えていき、
それに比例して
どんどん大きく、重くなり、
身動きが取れなくなっていく・・。
しかも持っていても、
持っていなくても、
持っているモノを失うことも、
新しくモノを持つことも、
全てが不安の原因になり、
恐怖し、怯え続けることになるわ。
本人にとっての善し悪しは
関係無く、
どうやっても
不安で怯え続けることに
なってしまうのよ?
聞いていて面白いと思わない?
とっても愚かなことだと
思わない?
哀れだと思わない?
自分自身で求め続け、
その結果手に入っても、
入らなくても、
或は自分では望まぬモノが
手に入っても、
それを失うことになっても、
どうなっても結果
自分を苦しめることになる・・。
そしてある時、
持ち過ぎたモノが
その人間の限界に達してしまい、
本人の望む望まずに関わらず
自らすべてを手放すことに
なってしまう・・。
そういった人間達の
持ち過ぎたモノを、
限界に達する前に
解放してあげるのが、
私の救済なのよ~。
ねぇ~?
私が救済することで、
その人達は苦しみながら
限界を向かえるよりも前に
救われて楽になれる。
そしてもう苦しむことも無い・・。
そうだと思わな~い?
デフィーちゃん」
デフィー「・・・」
厳しい表情のデフィー。
レイジー「フフフッ・・
どうやら気がついて
いないようだけど、
あなたもそんな人間達と同じ
一人なのよ?」
デフィー「?
私が・・ですか・・?」
レイジー「フフフッ、そうよ。
やっぱり気がついて
いなかったのね」
デフィー「私が・・
何を持ち過ぎていると
言うんですか?・・」
レイジー「フフッ、
あなたは幸せになりたくて
旅をしているんでしょ~う?」
デフィー「ええ」
レイジー「幸せになる為に
これまでに何を得て、
何を捨てて来たの?」
デフィー「?」
レイジー「フフフッ・・
ここまで言っても
まだ分からないようね・・
いいわ、説明してあげる。
デフィーちゃん、
気がついていないだけで
あなたは既に多くのモノを
持っているはずよ・・
それなのに尚も
新しいモノを
求めようとしている・・」
デフィー「?・・」
レイジー「あなた、家族は居るの?
もし居るのなら当然
その人達とは別れて
旅に出たんでしょう?」
デフィー「えっ?ええ・・」
レイジー「あらあら、
と言うことは、
家族との生活を捨てて
今ここに居るのよね?
ご家族はさぞ寂しがって
いるでしょうに・・」
デフィー「!・・」
レイジー「あなたも寂しいでしょ~う?
旅になんか出ないで
家族と一緒に
家で静かに暮らしていれば、
安全だったし、
家族もあなたも悲しい思いや、
寂しい思いもせずに
済んだのに~。
そんな生活を捨ててまで
あなたは・・」
デフィー「うっ・・」
レイジーに言われたことを考え、
辛そうな表情になるデフィー。
レイジー「ねぇ~?
言った通りでしょ~う?
あなたが新たに得ようとしている
モノの代わりに、
既に失ってしまったモノが
有ることに気がついたかしら?
新しいモノを求めると、
代わりに今持っているモノを
確実に何か失うことになるのよ?」
デフィー「・・・」
レイジー「あなた達はこれから
この山を越えて
内陸側に行くんでしょう?
内陸側は危険が多いのよ~、
きっと今まで以上に大変よ~、
苦労することになるわ~」
デフィー「・・それは・・」
レイジー「あなたには
お友達が居るわよね~?
そのお友達はいつまで
あなたの傍に
居てくれるのかしら?」
デフィー「えっ!?」
レイジー「あなたが新たに得ようとした
選択のせいで、
これから先危険な目に
遭わせてしまい、
傷ついてしまったり、
離れて行ってしまったり、
失ってしまったり
するんじゃないかしら?」
デフィー「!!」
レイジー「フフッ、
あなたが内陸側へ行く
選択をすることで、
失うかもしれないモノが
有ることに
気がついたかしら?」
(まあ、何をしても、しなくても、
結局は何かを失うんだけどね・・)
「勿論あなた自身だって
分からないわ。
あなたに何かあったら、
悲しませることになる人が
居るわよね?
家族や、友達や・・」
デフィー「・・・」
レイジー「ねぇ~?
自分がそんな思いをして、
周りにそんな思いをさせてまで、
探すほどの価値が・・
既にあなたが持っている
大切なモノを危険に
晒してまで探す価値が・・
あなたが今探しているモノ、
『幸せ』には、
それだけの価値が
果たして有るのかしら?」
デフィー「!・・」
レイジー「フフッ、
少しずつ分かって来たようね?
デフィーちゃん。
しかもそれだけの犠牲を払っても、
確実に幸せを手に入れられるとは
限らないんでしょう?
もう一度言うわよ、
犠牲だけは確実に払うのよ?
だけど幸せは
確実に手に入るとは
限らないんでしょう?
結果
欲しいモノを得ることは出来ず、
今持っている大切なモノを
失うだけになるかも
しれないのよ・・。
割が悪いと思わな~い?
どうせ手に入らないのなら・・
どうせ失うことになるのなら・・
初めから何も求めなければ
いいのに・・・。
そもそもあなたは、
幸せになってどうするの?」
デフィー「えっ!?・・」
レイジー「幸せになることで、
今と何が変わるの?
幸せになって
どうするかも分からない、
幸せになると
どうなるのかも分からない・・
そんなモノの為に何故?
あなたの求めている幸せには、
本当にそれだけの
価値が有るの?」
デフィー「・・・」
レイジー「そんな不確かなモノの為に
危険を冒し、
大変な思いをして
苦労することは無いんじゃない?
辛いだけよ~そんなの・・。
ねぇ~?
無駄だと思わない?
もう何も求めなくても
いいじゃない?
その方が楽だし、
安全だし、
何も得られないかもしれないけど、
何も失わなくて済むじゃない?
何も求めなければ、
これ以上誰とも、
何とも別れなくて済むのよ?
その方が良いわよ~?
ねぇ~?」
デフィー「・・私は・・」
レイジー「これで
分かったでしょ~う?
あなたが
気がついていないだけで、
これまでに
どれだけ多くのモノを
既に持っているのか、
そしてどれだけ多くのモノを
失ってきたのかを・・」
(そして新たに失う恐怖に
怯えているかをね・・)
デフィー「私は・・」
レイジー(フフッ、もう一息ね)
「デフィーちゃん?
怖いんでしょう?失うことが・・
新しいモノを求めても、
求めなくても、
今有るモノを大切にしても、
しなくても・・
あなたが望む望まずに関わらず
いずれは失うことになるわ・・。
皆あなたの元から
離れて行くのよ・・。
どうせ失うことになるモノの為に、
悩んだり苦労したりするのは、
無駄なことだと思わない?
辛いことだと思わない?
ねぇ~?
これからも生きている限りずっと
失うことへの
不安や恐怖に怯え続けるのは
嫌でしょ~う?
だ・か・ら・・
今、
すべてを、
手放しちゃえば
いいんじゃない?」
デフィー「・・・・」
俯き黙ったままのデフィー。
レイジー「ねぇ~?
もう諦めましょうよ?
どうせ何をしても、
しなくても、
失うことになるんだから・・
早く手放しちゃいましょ~う?
その方が簡単だし、
楽に生きられるわよ」
デフィー「・・のかもしれないです・・」
呟くように言うデフィー。
レイジー「?
えっ?
今何て言ったのかしら?」
デフィー「・・変わりたいのかも
しれないです・・
私は・・」
レイジー「どうしたの?
デフィーちゃん」
戸惑うレイジー。
デフィー「長く生きていると・・
気がつかない内に色々なことが
当たり前になって来て・・
でも、
だんだん不安になってくるんです・・
本当にこのままでいいのか?って・・
毎日、毎日、何年も、
同じことを繰り返して、
いつまで・・何処まで・・
このままなんだろう?って・・」
レイジー「デフィーちゃん、
そんなことよりも・」
デフィー「確かに
今までの生活を離れて
旅に出ることに、
不安や迷い、恐れや
戸惑いが有りました・・。
でも、
いつまでもそのまま
同じ場所で同じことをして、
そこで立ち止まったままでは、
何も変わらないし、
進歩も無い・・。
私は・・
今よりも成長したいんです!」
レイジー「あのね、
デフィーちゃん・・」
デフィー「その為には、
じっとしていては
駄目なんです!
何か行動を起こさないと
いけないんです!
ずっと同じことを
繰り返していては、
いつまでも同じままだから・・。
レイジーさん!」
レイジー「!?はい?」
急な呼びかけに驚きながらも答えるレイジー。
デフィー「あなたはさっき、
今有る大切なモノを
失うくらいなら、
何も求めない方が良いと
言いましたよね?」
レイジー「え・・ええ。
だってその通りでしょう?」
デフィー「でも、
例えどんなに危険でも、
何かを失うことになるとしても、
動き出さないといけない時が
有ると思うんです」
レイジー「フフッ、
そんなこと無いわよ~。
今有るモノを大事にする、
それはとても大切なことだし、
それだけで十分じゃない?
それを失ってまで
新たに求めるモノなんて
無いじゃない?」
デフィー「私は変わりたい・・
変わる為には、
今までと同じままでは・・
今有るモノを
大切にしているだけでは
駄目なんです。
レイジーさんの言うように、
何かを得るには
その分の何かを
代わりに失わなくては
ならないのかもしれない・・。
でも、変わるって
そう言うことだと思うんです。
全部同じままでは
変われない、
変わったことにならない。
失うことも変わることの
一部だと私は思うんです。
だから、
失うことを恐れていては、
変わることは
出来ないんです」
レイジー「・・誰もが変化を
求めている訳ではないわ・・。
それに、
失ってしまったらもう元には・・・
だから!
失うくらいなら
変わらない方が!・・」
ムキになって反論するレイジー。
デフィー「何より私は、
幸せを知りたいんです!
そして幸せになると
どうなるのかを!
幸せになった世界を
この目で見てみたい!
全身で
感じてみたいんです!!」
レイジー「・・・・
幸せになりたい・・
そういう夢や目標こそ、
一番の重荷になるのよ!
不安や恐怖の元凶なのよ!
真っ先に手放すべきモノなのよ!!」
更にムキになり、
大きな声を出して反論するレイジー。
デフィー「!?」
その様子に驚くデフィー。
レイジー「何故?何故なの?・・」
一転して小声で問いかけるレイジー。
レイジー「そもそも価値が有るかも
分からないモノの為に、
しかもそれが
手に入るのかさえ分からないのに、
今までに得て来た
大切なモノを失いながら、
更には危険まで
冒そうとしている・・
私には分からない・・」
デフィー「それは・・
後悔したくないからです・・」
レイジー「後悔?・・」
デフィー「はい・・
エルフの寿命は
他の種族と比べては長いです。
だけど命を、
生きることを
保証されている訳ではありません。
いつ、何処で、
命が尽きてしまうか分からないのは、
寿命が長くても、短くても、
同じなんです」
レイジー「・・だから何だと言うの?・・」
デフィー「もしかしたら私は、
幸せになれないかもしれない・・
でも、
幸せに近づくことは
出来ると思うんです。
いつなのかは分かりませんが、
命が尽きたその時・・
幸せに一歩でも
近い状態で居たいんです。
動き出さないことには
近づくことすら出来ない・・
だから例え失うモノが有っても、
危険が伴うとしても、
前に進むしかないんです・・。
結果もし
幸せになれなくても・・
それが精一杯突き進んだ結果で、
今より少しでも
幸せに近づけていたなら、
きっと後悔はしないはずです・・・。
でも、
何もしないままだったら、
幸せにはなれないし、
近づくことさえも出来ない・・
私は絶対に後悔します!
だから何と言われようと、
私は前に進むんです!
後悔しない為にも、
そして今より少しでも
幸せに近づく為にも・・」
レイジー「・・・・」
デフィー「その為に私は、
失うことも、
求めることも恐れないし、
今持っている
大切なモノすべてを
手放すことも、
諦めることもしません・・。
今有る大切なモノすべてを
抱えたまま、
例え傷つくことが有っても、
失うことが有っても、
それを受け入れ、
ただひたすらに幸せを求めて
突き進みます!」
レイジー「・・・」
デフィーを見つめたまま
黙って話を聞くレイジー。
デフィー「・・レイジーさん、
私は新しいモノを求めて
旅に出たことで、
それまでに出来なかった経験や、
色々な人達と
出会うことが出来ました。
この経験や出会いは、
森から出ずに
同じ暮らしをしたままだったら、
得ることが出来ないモノだったと
思います。
シャイルさんにメールさん、
イネルティアさん、
そしてレイジーさん、
あなたとの出会いもそうです」
レイジー「!?
私との出会いも?・・」
驚きの表情を浮かべるレイジー。
デフィー「はい。
あなたと出会え
今こうして話せているのも、
前に進むことを選んだからです・・
やはりそうして良かったと、
私は思っています」
皮肉そうに笑うレイジー。
レイジー「あらあら、
私は人間達を無気力状態に
してしまうような悪魔なのよ?
危険でしょう?
こんな悪魔とも
幸せを求めて旅に出なければ、
出会うことも、
危害を加えられることも
無かった。
そうでしょう?
良いことばかりでもないはずよ?」
デフィー「いいえ、
どう感じるかは
その人の受け取り方次第だと、
あなたは言いましたよね?
私にとってこの出会いは、
とても素晴らしいものです」
レイジー「あら?
どう素晴らしいのかしら?」
デフィー「いつも心の中に
抱えていたんです。
変わりたいという思い・・
でも変われない現実・・
変わることが出来ても、
それにより
失うモノがあること・・
そして、
幸せが見つかるのか・・
幸せになれるのか・・
そもそも私は、
本当に幸せになりたいのか?・・
思い返せば私の心の中は、
いつも不安や迷い、恐怖で
いっぱいでした・・。
でも、
レイジーさんと話すことで、
私が抱えている問題について
改めて考える機会を得て、
不安や迷い、恐怖を
断ち切ることが出来たんです。
こんなに素晴らしいことは
ないです!
レイジーさんのおかげです、
本当にありがとうございます!」
レイジー「・・あらあら・・」
弱った表情になるレイジー。
レイジー「参ったわねぇ・・
私はそんなつもりじゃ・・・」
下を向き一度大きなため息をつくと、
デフィーの方に向き直るレイジー。
レイジー「もういいわ~・・
面倒になってきた。
だって、
あなたを救うのは
大変そうなんだもの・・」
デフィー「いいえ、
私はもう十分に救われましたよ。
レイジーさん、
あなたのおかげで」
笑顔でそう言うデフィーに対し、
呆れた表情になるレイジー。
レイジー「・・・
はぁ~・・
まぁいいわ、
そう言うことに
しておきましょう。
それに・・
そんなに拘る幸せに
あなたがなるところを、
私も少し
見てみたくなったわ」
デフィー「!?」
レイジー「だから
今回は見逃してあげる。
あなたも、あなたのお友達もね。
でも、
ここから先は用心することね~。
狙っているのは、
私だけじゃないんだから・・」
デフィー「?」
そう言い残すとレイジーは、
デフィーの目の前から消えてしまいました。
デフィー「!?
待ってレイジーさん!
それはどういう・・・
はっ!?・・」
眠りから目覚めるデフィー。
辺りを見回すと
先程まで泊っていたはずの山小屋も、
レイジーの姿も有りません。
そこはカシマール山中腹の開けた場所で、
すぐ傍には夜空の下
地面に横になって眠る
フィリアとシャイルの姿が有りました。
デフィー「フィリア!シャイルさん!
二人共起きてください!」
フィリア「う~ん・・
なぁに?デフィー・・」
シャイル「・・どうしたんだい?
まだ朝じゃないだろう?・・」
目を覚まして寝ぼけながら答える
フィリアとシャイル。
フィリア「あれ・・?」
自分の周りを見回すフィリア。
フィリア「何で僕達外で寝ているの?・・」
シャイル「何寝ぼけてるんだい?
そんなはず無・・・」
周囲を見渡すシャイル。
シャイル「!?
本当だ・・何でだ?・・・」
デフィー「実は・・・」
デフィーは先程まで
自分の夢の中で起きていたことを
二人に話しました。
フィリア「・・そ、そんなことが有ったの?
ごめんよデフィー・・
全然気がつかなかったよ・・・」
シャイル「私もだよ・・
まさかデフィーちゃんが
そんな大変な目に
遭っていたなんて・・
そうとは知らずに
ぐっすり寝ていて
本当にすまない・・」
デフィー「二人共謝らないで下さい・・
それに特に危害を
加えられた訳ではないですし・・」
シャイル「でも、
他の人間達が無気力に
なってしまったのと
同じことを、
レイジーにされたんだろう?
一歩間違えば
デフィーちゃんも
そうなっていたかも
しれないんだよ?」
デフィー「!!・・」
シャイルの指摘に、
改めて自分が危険だったことに
気がつくデフィー。
デフィー「で、でも・・何とか
乗り切れたみたいですし・・」
フィリア「本当!?
本当に平気なの?
何処か身体の様子が
おかしいとかは無い?」
デフィー「ええ、平気よ・・
何処も悪くないわ・・
大丈夫よ、フィリア」
フィリア「本当に何処も悪くないんだね?」
デフィー「ええ・・」
フィリア「・・良かった。
デフィーに何かあったら僕・・」
安堵の表情を浮かべるフィリア。
デフィー「フィリア・・」
シャイル「うん・・
そんな危険な目に遭ったのに、
何事も無く済んでくれて
本当に良かったよ・・」
デフィー「シャイルさん・・」
自分のことを心配をし、
無事だったことを心から喜んでくれる
フィリアとシャイルの様子を見るデフィー。
デフィー「・・二人共、
心配かけてごめんなさい・・」
フィリア「ううん、
デフィーが謝ることは
何も無いよ!」
シャイル「そうさ、デフィーちゃんは
何も悪くないんだから」
デフィー「いいえ・・二人に心配を
かけてしまいました・・。
それに予め用心するように
シャイルさんが
警告してくれていたのに、
私が油断して
こんなことになってしまって・・」
フィリア「それを言うなら
僕だってまったく
気がつかなかったし・・」
シャイル「私なんて
言い出したにも関わらず、
一切気がつくことが
出来なかったんだから・・」
デフィー「レイジーさんが
夢の中で言っていたんです。
私が危険な目に遭うことで、
心配をかけてしまう人が
居るって・・」
フィリア「それは心配するよ!
友達だもん!」
シャイル「フィリアちゃんの
言う通りだよ!」
デフィー「それに・・
私の友達は
いつまで傍に居てくれるのか?
私の選択のせいで
危険な目に遭わせてしまい、
傷つき、離れて行き、
失ってしまうんじゃないか?
って・・」
フィリア「そんなこと無いって!」
シャイル「ああ!そうだとも!」
デフィー「・・それにもし、
私じゃなくて
二人があんな目に
遭っていたらと思うと・・」
目を閉じ涙ぐむデフィー。
デフィー「こんな私のことを心配してくれる
大切な二人を・・
私のせいで危険な目に
遭わせてしまっていたかも
と思うと・・
私が・・
全部私がこの山を
登ろうと言ったせいです!」
フィリア「デフィー・・」
シャイル「デフィーちゃん・・」
デフィー「私は夢の中で、
今有る大切なモノすべてを
抱えたまま、
例え傷つくことが有っても、
失うことが有っても、
それを受け入れた上で
ひたすらに幸せを求めて突き進むと
レイジーさんに言いました・・
でも私・・
とてもじゃないけど
耐えられそうにない・・
夢の中では
平気だと思っていたけど
現実に戻って冷静に考えたら、
私の勝手な選択のせいで
大切な二人の友達を
危険な目に遭わせてしまったり、
それでもし、
失うようなことに
なってしまったら・・
私・・」
フィリア「デフィー・・
大丈夫だよ、
そんなことにはならないから」
デフィー「でも・・
危険かもしれないと
分かっていたのに、
私の勝手な考えで
この山に来てしまった・・。
そのせいで
二人にこんなに心配を
させてしまった上に、
もしかしたら私じゃなく
二人を危険な目に
遭わせてしまっていたかも
しれないのよ?・・
それが原因で二人が
傷ついてしまったり、
更には失うことに・・
なってしまっていたかと
思うと・・・」
シャイル「デフィーちゃん・・
まだ起こってもいないことを、
今から心配しても仕方ないよ」
デフィー「シャイルさん・・」
シャイル「フィリアちゃんが
言っただろう?
大丈夫だって、
そんなことにはならないって。
心配は無用さ、ねっ?」
フィリア「うん。
それと私の勝手って
君は言ったけど、
それは違うよ、デフィー」
デフィー「?・・」
フィリア「僕達は君の勝手で
ここに居るんじゃないよ。
自分達の意思で、
君と一緒に居たいと思って
今ここに居るんだよ!」
シャイル「そうさ!
だからデフィーちゃん、
自分の勝手だとか、
自分のせいだなんて
思わないで欲しいんだ」
デフィー「!」
フィリア「それに僕達が
危険な目に遭って傷ついたり、
そのせいで君の前から
居なくなることを
心配しているみたいだけど、
そんなことになったりはしないさ!
僕がすっごくタフで、
・・それに・・その・・
デ、デフィーのことが大好きなのを!
君が一番よく知ってるだろう?
だから例え何が有っても、
僕は君の前から
居なくなったりなんてしないさ!」
デフィー「・・フィリア」
フィリアを見て優しく微笑むシャイル。
シャイル「そういうことさ!
私だってこう見えて
結構打たれ強いんだよ。
それにフィリアちゃんと同じくらい
デフィーちゃんのことが
大好きなんだ!」
フィリア「えっ!?」
驚いた表情になるフィリア。
フィリア「シャ、シャイルも
デフィーのことを・・」
シャイル「・・フィリアちゃん、
今はそこに
引っかかる所じゃないよ・・」
軽く咳払いをするシャイル。
シャイル「デフィーちゃん、
生きていれば誰のせいでもなく
危険が訪れてしまうことは
有るものさ。
だったら訪れる前に用心すればいい、
そして用心しても訪れてしまったら、
対処すればいいんだよ。
それにもし一人でダメなら、
皆で協力して乗り越える!
そうすれば良いんじゃないかな?
ねっ?」
デフィー「シャイルさん・・」
フィリア「そうさ、
だからデフィー・・
一人で思い悩まないで。
僕達は君を残して
何処にも行かないし、
どんな危険が訪れても
力を合わせれば
乗り越えていけるさ!」
シャイル「そうとも!」
デフィー「二人共・・
ありがとう・・・」
デフィーは涙を浮かべながら、
嬉しそうに微笑みます。
フィリアとシャイルも優しく笑顔を返します。
シャイル「・・それにしても、
まさかあのレイジーが
悪魔だったなんてね・・
そもそも悪魔って
本当に居るんだねぇ、
話を聞いても
まだ信じられないよ・・」
デフィー「私も初めて会いました」
フィリア「僕にはレイジーさんは、
普通の人間にしか
見えなかったよ・・」
シャイル「ああ、私も
何も疑っていなかったよ」
デフィー「私の夢に出てきた
レイジーさんは、
角や牙や羽が有りました」
フィリア「えっ!?角に羽?」
シャイル「ほ、本当かい?」
デフィー「はい、
レイジーさんの身体から
生えてきて・・」
フィリア「うわぁ・・」
シャイル「ひいぃ・・」
デフィーの話すレイジーの姿を想像し、
恐ろしくなるフィリアとシャイル。
デフィー「もしあの姿が
レイジーさんの正体だったなら、
私達が眠る前に会った姿は、
人間に変装していた姿
なんでしょうか?」
シャイル「人間に変装・・
そんな奴らも居るんだねぇ・・。
となるとこれからは、
一見人間に見えるような相手でも、
警戒して接しないと
危険かもしれないね・・」
フィリア「うん・・。
でも、僕嫌だなぁ・・
あんまり人のことを
疑った目で見たくないよ・・」
シャイル「私だってそうさ、
でも危険を避ける為には
ある程度は仕方が無いことも
有るものさ。」
フィリア「・・うん」
デフィー「そう言えば・・
レイジーさんが別れ際に
気になることを
言っていました・・」
フィリア「何て言ってたの?」
シャイル「?」
デフィー「狙っているのは
私だけじゃないから
用心しなさいって・・」
フィリア・シャイル「!?・・・」
フィリア「どういうことなんだろう?・・」
シャイル「狙っている?
私達を?
誰が?何の為に?・・」
デフィー「それが・・
詳しく聞こうとしたんですが、
消えてしまって・・」
フィリア「私だけじゃないって・・
他にも誰か
居るってことなのかな?」
シャイル「うん・・
それはレイジーと同じ
悪魔なのか?
それとも別の何かなのか?・・
いずれにせよここから先は
今以上に気を引き締めた方が
良さそうだね」
デフィー「はい!」
フィリア「うん!
・・ところでさ、
レイジーさんが使ったのが
夢だったにせよ、
幻だったにせよ、
一体何処からが
そうだったんだろうね?」
デフィー「えっ?」
シャイル「それは・・
私達が部屋で
眠ってからじゃ?・・
いや、でもそうすると
眠っていたはずの山小屋が
消えてしまったことの説明が
つかないか・・」
フィリア「うん・・
だからもしかしたら
僕達が道に迷い始めた頃から、
もう夢や幻の中だったんじゃ
ないかと思うんだ」
シャイル「ああ、
それは有り得るかもね。
もしそうなら、
皆であれだけ注意して
進んでいたのに、
道に迷ってしまったのも
頷ける」
フィリア「ねっ?
そこからもう
レイジーさんの夢や幻が
始まっていたなら、
僕達が食事をしたり
寝ていたはずの山小屋が、
こうやって
消えちゃったことも、
不思議じゃないでしょ?」
デフィー「確かにそうね」
シャイル「冴えてるね、
フィリアちゃん」
フィリア「えへへっ・・
・・でも、
そうなると気になるのは、
僕達が食べた夕御飯だよね・・」
デフィー「えっ?」
シャイル「?
何が気になるんだい?」
フィリア「うん・・
デフィー、シャイル、
夕御飯に何を食べたかって
覚えてる?」
シャイル「それは・・
あれ?・・」
デフィー「え~と・・」
シャイル「おかしいな・・
あんなに美味しかったのに、
何を食べたのかは
覚えていないよ・・」
デフィー「私もです・・
とにかく美味しくて
お腹いっぱい食べたのは
覚えているんですが、
それがどんな
料理だったのかは
思い出せなくて・・」
フィリア「やっぱり・・
僕もなんだよ。」
シャイル「あんなに美味しかったのに、
三人共何を食べたのか
覚えていないなんて・・
何故なんだろう?・・」
フィリア「本来無いはずの山小屋を、
有るかのように見せれる
レイジーさんだよ。
きっと料理の夢や幻を
見せるくらい
簡単なはずだよ」
シャイル「なるほど・・
或は夢や幻だったからこそ、
美味しかった記憶は有るけど、
どんな料理を食べたのかは
思い出せないのかも
しれないね・・」
フィリア「うん、それでね・・
もしあれが夢の中での
食事だったなら、
多分僕達は実際には何も
食べていないと思うんだ」
シャイル「まぁ・・夢の中だからね」
デフィー「ええ」
フィリア「でも、
もしあれが現実で、
レイジーさんが見せた
幻の食事だったとしたら、
僕達は実際に何かを
食べたことになると
思うんだ・・」
デフィー・シャイル「!・・」
シャイル「フィ、
フィリアちゃんの言う通りだね・・
もしあれが夢の中では無く
現実だったなら、
私達は実際に何かを
食べていた訳だから・・」
デフィー「はい・・
美味しかったことと、
お腹いっぱいに食べたことは
覚えているけど、
何を食べたかはまったく
覚えていない料理を・・」
フィリア「ねっ?
一体僕達は、
お腹いっぱいになるほどの
美味しい『何』を
食べたんだろう?って・・」
デフィー・シャイル「・・・」
シャイル「・・そう考えると、
レイジーが
腕によりをかけて作ったって
言っていたのも
何だかひっかかってくるね・・」
デフィー「はい・・
レイジーさんの言っていた
『秘密の調味料』のことも
気になってきますね・・」
デフィー・フィリア・シャイル「・・・・」
シャイル「よ、よし、
もうこのことは
あまり考えないように
しよう・・」
デフィー「それが・・良いですね・・」
フィリア「う・うん・・」
シャイル「レイジーの奴が
私達に食べさせたのが、
何か変なモノでないことを
祈るよ・・」
そんなことを考えて話し合っている自分達のことを、
何処からかレイジーが見ていて
笑っているように感じるデフィー達でした。
悪魔のレイジーに出会い誘惑されるも、
『幸せ』に対する強い思いで、
何とか無事に切り抜けることが
出来たデフィー。
レイジーとの出会いで
自分の幸せについての考えを再確認し、
更にフィリアとシャイルとの絆を
深めることが出来たデフィーは、
また少し幸せに近づけたのかもしれません。
幸せを探す旅はまだまだ続きます、
次はどんな出会いや出来事が
三人を待っているのでしょうか?
デフィーとフィリア、そしてシャイルは、
幸せになることが出来るのでしょうか?
幸せになりたいエルフの冒険
第六話につづきます。