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自意識過剰な客

名前が分からない店員さんに呼びかける時、意見を求める時。

皆さんはどう言ってますか?

店員さんなのか、おねぇさん又はおにぃさんなのか。はたまたあのぉー、とかすいませんーで気付いてもらってますか?


私は大抵すいませんーで気付いてもらっているが、向こうの意見を聞きたい場合は、おねぇさんおにぃさんと呼んじゃう。だけど本当は、飲み屋の酔っ払いが呼んでる時みたいな、おねぇ~さんって感じになってやだなぁと思いながら、なんでもない顔で商品を待っている。我ながら妙に湿気がある嫌な距離の詰め方だなと思う。


かといって店員さんと呼ぶのは、他人行儀過ぎて。(今のご時世そのくらい遠い距離がある言葉がいいのかも、だけど。)


どうして毎回もやもやしながらもおねぇ~さん、と呼びかけているかというと意見を聞きたい時は店員さんとしての意見ではなく、彼女彼自体の好みや意見を聞きたいから。もう少し近づいた話がしたい。(その彼女彼が全然好きじゃないのに店の方針のおすすめ商品を推されるなんて、面白くない。)

電車で旅行していて偶然隣になった人とつかの間、それぞれの行き先や目的を話し合って互いの旅の安全を気遣い合って別れるようなそれくらいの距離感を醸し出したいのです。
だからおねぇ~さんと呼ぶが、やはり私のおねぇ~さんは妙に湿っぽく、だらしない。こないだもそうだ。

仕事帰り、今日はガツガツしたものを食べたいと駅構内の唐揚げ屋さんに寄った。
味付けは醤油麹と塩麹の二者択一。普段なら圧倒的に醤油味であるが、その日は「麹」という文字に小さな冒険心が発動し、中々決められなかった。
店員さんからは、お決まりでしたらお声がけくださいと呼び込み。目が合ってしまうと手を止めたりなんかされる。確か、時間は21時を回っていて店の前にいるのは私のみ。


どちらの味付けがいいのか迷ってキョロキョロするわ、店員さんに意見を聞きたいから余計に店員さんと目が合うし、2,3回目のお決まりでしたらどうぞの呼びかけによる無意識のプレッシャー…。(このプレッシャーが苦手で、学生時代にアルバイトしていた時は、相手にそうなるまいとお客さんが迷っている時は極力明後日の方向を向いていた。)

結局、変なこと聞いてもいいですか?とぼそぼそと喋り出した。当然聞き返され、おすすめは塩麹とのこと。
彼女の好みを知りたい、変にフレンドリーな私は「おねぇ〜さんはどちらが好きですか。」と恐らく今どきの大学生かで絶対年下なのにおねぇ〜さんを使用した。
会計中、脳内であー絶対あとでもう1人の同世代ぽい子とあの人うちらより年上だろうにおねぇ〜さんだってって言ってた〜!で噂される〜!!と自意識がオーバーリアクションをとる。

袋に入った5個の塩麹から揚げをぶら下げながら今日も無駄に琴線を震わして家路についた。(醤油麹が好きだと言ってほしかったという淡い期待は仕舞って。)