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天の火をぬすんだウサギ|遠い地で伝わる伝説に、思いを馳せよう|大人も楽しめるおすすめ絵本

遠い地で伝わる伝説は、その国の香りや文化を色濃く伝えてくれる。

その地に行ったことがなかったとて、何だかその地を身近に感じることができるような気がする。

そんな伝説の物語で描かれた絵本がこちら。

『天の火をぬすんだウサギ』
ジョアンナ・トゥロートン 作・絵 / 山口文生 訳
評論社

作者のジョアンナ・トゥロートンさんはロンドン在住のイラストレーター・作家。

こちらから彼女の活動や作品を拝見することができる。

水彩の鮮やかで軽やかな絵が、臨場感たっぷりに物語を展開してくれる。

北米先住民の伝説をベースに描かれたこの作品。タイトルの通り、天の火を盗もうとするのがウサギだ。

「天の火をぬすんだ」という表現から察せられるが、地上には火がなかった。ぬすむという言葉にはネガティブな印象こそあるものの、この絵本を読んでいる間は、地上に火をもたらそうとするウサギを、必死で応援してしまうのだ。

火を得ようと奮闘する動物たちの姿に、惹きつけられてしまう。

火の表現、そして動物の毛並みや木々や山肌の質感が生き生きと描かれ、臨場感たっぷりに「火をぬすむ」過程に没入できる。

それぞれの動物たちの気持ちを、子どもと一緒に考えるのも楽しそう。「この時、何考えてたと思う?」「どうしてこんなに頑張れたのかなあ」たくさんの動物が出てくる絵本ならではの楽しみだ。

寒さに震える動物たちは、どんな気持ちで火を盗んだのかなあ。どうして寒い季節とあたたかい季節があるのかなあ。冬のお家が寒くないのはどうしてだと思う?そんな会話のきっかけにもなりそうな、心が温かくなる寒い時代のお話だ。

動物たちの性格や行動に、日本の典型的なイメージとの違いを見出すのも楽しいだろう。

いろんな国・地域の伝説や昔話に、その文化や慣習に思いを馳せる。それはきっと、絵本を楽しむ大人の特権だろう。


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