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第3回「『あいちトリエンナーレ』補助金不交付決定」(2020年5月9日(土)20時~)

参加者(敬称略)

・大島義則(研究代表・弁護士)編集、序章、第1章 取消訴訟
・平裕介(弁護士)第2章 無効等確認訴訟
・モデレーター:伊藤建(弁護士)第6章 差止訴訟

※配信は終了しました。たくさんのご視聴ありがとうございました。

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2020年5月9日(土)午前1時頃に問題を修正しました。
2020年5月11日(月)午後2時頃に問題を再修正しました。

 20××年,現代美術等の文化芸術に関する事業を行うX(一般私人)は,文化庁に対し,XがA県内で実施を予定している国際現代美術展開催事業「Aトリエンナーレ」につき,文化資源の活用推進のための事業に係る補助金(以下「本件補助金」という。)の申請を行った。これに対し,文化庁は,本件補助金の交付に係る審査をした結果,Xに対し,補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律((補助金適正化法))6条、,同法施行令3条に基づき,全額不交付とすると決定した(この決定を,以下「本件不交付決定」という)。
 文化庁は,本件不交付決定の理由として,Xが,「Aトリエンナーレ」における展覧会「表現の不自由展・その先」の開催に当たり,来場者を含め展示会場の安全や事業の円滑な運営を脅かすような重大な事実を認識していたにもかかわらず,それらの事実を文化庁から問合せを受けるまで申告しなかったことにより,[ⅰ]実現可能な内容になっているか,[ⅱ]事業の継続が見込まれるかという点につき,適正な審査を行えなかったことを挙げており,この理由を付記した書面を本件不交付決定と同時にXに送付している。なお,過去に同様の企画展が多くの市民らのクレームによって中止に追い込まれたという経緯があった。
 Xは,本件不交付決定が違法であると考えており,訴訟によって争うことを検討している。
 なお,同展示会の展示会場はB美術館(博物館法2条1項の「博物館」に当たるもの)であり,また,本件不交付決定の前に,専門家組織(補助金適正化法に同組織の根拠規定はない)による本件補助金の交付の採択(審査した上での内定)が出されていた。
 以上を前提として,以下の設問に答えなさい。

〔設問1〕

 Xはどのような訴訟を提起すべきか。仮に,本件補助金がが法令(補助金適正化法6条,25条6条)の適用がないものでありに基づくものではなく,文化庁の要綱(行政規則)に照らし基づく交付されるものである場合には,どのような訴訟を提起すべきか。
 なお,国家賠償請求訴訟については検討する必要はない。

〔設問2〕

 Xは,行政訴訟の本案において,どのような主張をすべきか。また,文化庁側としては,想定されるXの主張に対し,どのような反論をすべきか。
 なお,審査基準の設定・公表,理由付記,聴聞・弁明手続,教示手続等の手続的瑕疵については検討する必要はない。

【資料】

○補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(抜粋,①,②…などは引用者)
第5条 補助金等の交付の申請(中略)をしようとする者は,政令で定めるところにより,①補助事業等の目的及び内容,②補助事業等に要する経費③その他必要な事項を記載した申請書に各省各庁の長が定める書類を添え,(中略)提出しなければならない。
第6条 各省各庁の長は,補助金等の交付の申請があつたときは,当該申請に係る書類等の審査及び必要に応じて行う現地調査等により,①当該申請に係る補助金等の交付が法令及び予算で定めるところに違反しないかどうか,②補助事業等の目的及び内容が適正であるかどうか,③金額の算定に誤がないかどうか④等を調査し,補助金等を交付すべきものと認めたときは,すみやかに補助金等の交付の決定(中略)をしなければならない。
2~4 (略)
第24条の2 補助金等の交付に関する各省各庁の長の処分については、行政手続法(平成5年法律第88号)第2章及び第3章の規定は、適用しない。
第25条 補助金等の交付の決定、補助金等の交付の決定の取消、補助金等の返還の命令その他補助金等の交付に関する各省各庁の長の処分に対して不服のある地方公共団体(中略)は、政令で定めるところにより、各省各庁の長に対して不服を申し出ることができる。
2~3(略)

○補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律施行令(抜粋)

第3条 法第5条の申請書には,次に掲げる事項を記載しなければならない。
一 (略)
二 補助事業等の目的及び内容
三 補助事業等の経費の配分,経費の使用方法,補助事業等の完了の予定期日その他補助事業等の遂行に関する計画 
四~五 (略)
2 前項の申請書には,次に掲げる事項を記載した書類を添附しなければならない。
一~三 (略)
四 補助事業等の効果
五~六 (略)
3 (略)

○博物館法(抜粋)

第1条 この法律は,社会教育法(中略)の精神に基き,博物館の設置及び運営に関して必要な事項を定め,その健全な発達を図り,もつて国民の教育,学術及び文化の発展に寄与することを目的とする。

第2条 この法律において「博物館」とは,歴史,芸術,民俗,産業,自然科学等に関する資料を収集し,保管(育成を含む。以下同じ。)し,展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し,その教養,調査研究,レクリエーション等に資するために必要な事業を行い,あわせてこれらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関(中略)のうち,地方公共団体(中略)が設置するもの(中略)をいう。

第4条 1~2 (略)
3 博物館に,専門的職員として学芸員を置く。
4 学芸員は,博物館資料の収集,保管,展示及び調査研究その他これと関連する事業についての専門的事項をつかさどる。

○文化芸術基本法(抜粋)

第2条 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術活動を行う者の自主性が十分に尊重されなければならない。
2 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術活動を行う者の創造性が十分に尊重されるとともに,その地位の向上が図られ,その能力が十分に発揮されるよう考慮されなければならない。
3 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,文化芸術を創造し,享受することが人々の生まれながらの権利であることに鑑み,国民がその年齢,障害の有無,経済的な状況又は居住する地域にかかわらず等しく,文化芸術を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造することができるような環境の整備が図られなければならない。
4 (略)
5 文化芸術に関する施策の推進に当たっては,多様な文化芸術の保護及び発展が図られなければならない。
6~10 (略)

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