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【飯テロ】風情とおでんと焼鳥と酒。

 私には、夢がある。

 大金持ちになる。将来事業で成功する。海賊王になる。そんな大層な夢では無い。幸せな家庭を築くとか、そんなほっこりした話でも無い。私には、小さな小さな夢がある。  

 屋台のおでん屋に行きたい。

 もっと言えば、大好きなおでんのこんにゃくとコップ酒の熱燗で優勝したい。季節は冬。うんと寒い日だ。私は酒呑みだ。そしてその夢は、私が酒を飲み始めて1年と少し、漠然と、しかししっかりと、抱いていた夢だった。
 だが、そんな私の夢と時代は逆行する。おでん屋は儲からない。私が住む松山には、屋台のおでん屋どころか、コンビニすらもおでんを扱う店が減っていた。
 季節は遅めの冬になり、私はいつしか、その夢を忘れていた。

 転機は、12月に入ってからである。私は知人から、「べんてん横丁」という店の存在を教えられた。毎週金曜日。ホテルの野外スペースに設けられた、お酒とおでんと、焼鳥のお店。その店を知った時、私の頭にはあの夢がフラッシュバックしたのだ。私はたまらなくそこに行きたくなった。もはや、選択肢はなかった。

 12月も末の日。知人数人とその店を訪れた。店は外からむき出しだが、店内はストーブで温められていて、ほどよく寒く、暖かい。

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 まずは。焼き鳥とハイボールを注文する。ちょっとした小手調べである。ぼんじり、かわ、もも、ねぎまの定番セット。私の好みだが、焼き鳥はもっぱら塩派である。
 まずはもも。柔らかくてジューシー。シンプルな塩の味付けは、鶏本来の味の良さをさらに引き立てる。やはり焼き鳥は塩に限る。
ねぎまも一緒に食べてしまう。ネギと塩が合わないはずがない。ネギ塩である。この語感の良さ。味の良さ。ネギと塩とは約束された味であり、天才なのである。ねぎまの主役とは何か?無論、塩である。
 続いてはかわ。これまたパリッパリに焼かれたかわが、塩の味とマッチする。最高、最強、高カロリーの、まさにハイボール泥棒。やっぱり焼き鳥は塩だよ。うん。そしてこの背徳感。そう、背徳感である。うっすくパリパリのカロリー爆弾をこんなにおいしく召し上がれる理由なんて、背徳感以外の何物でもない! …少し取り乱した。では、最後のぼんじりへと向かおう。
 私が焼き鳥で一番好きな串が、ぼんじりである。時点で、はつ。とにかく、ぼんじり党の私の舌を唸らせるほどに、それは美味かった。口に入れると溶けてしまいそうな油の量。油が来れば、ハイボール。最高。そしてそんなぼんじりをさらに引き立てるのは?そう。塩である。油に塩である。バイキルトにバイキルト。剣舞に剣舞。ブレイダにブレイダ。アンリにベルカンプ。日本語で言うと、鬼に金棒。自分でも何を言っているのかはわからないが、何が言いたいかというと…焼き鳥は塩だってことだ。

さてさて。回り道はしたが、私はついに夢を叶えにかかった。 「おでんのセットと…熱燗をお願いします。」
おでんは本来4本セットだったが、店主の計らいで、なんかたくさんついてきた。 友人の一人が、それを一眼で撮影する。まさしくプロの所業だ。
 一方の熱燗。頼んだはいいが、店主が温めようとしていた酒が問題だった。そう、伊予賀儀屋である。伊予賀儀屋なのである。私は、その酒を冷で飲むのが大好きだった。無論、熱燗はキャンセルした。

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 諸君は、おでんは何派だろうか?わたしは、もちろんこんにゃくだ。なんでかよくわからないが、こんにゃくが一番おいしいと思う。味噌汁にも、いもたきにも、何でもかんでも、こんにゃくが好きだ。頼んだおでんは、こんにゃく、だいこん、もちきん、たまご。味が染みていてとてもおいしい。だいこんは割ればだしがググっとあふれ出てきてとろけるし、もちきんは油揚げがだしを吸っているところにとろっとろの餅が嬉しい思い出枠。こんにゃくは言わずと知れた味しみ、ぶにゃぶにゃ、とぅるんとぅるん。そしてたまごは割ったら写真によく映える。これのお供は伊予賀儀屋。愛媛は水処、西条市の地酒である。個人的には愛媛の地酒で一番好きなのもあって、熱燗にはせずにそのまま楽しんだ。

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 夢は半分しか叶わなかったが、私は充実していた。今は絶滅しかけたおでんと屋台とコップ酒。しかしそれは消えてはいなかった。私は叶えかけた夢を完全に叶えるべく、年始には雪雀を持ってその店に赴くつもりだ。年が明け、本格的な冬が来る。冬のお供に、外で飲むのも、悪くない。

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愛媛大。Bar SIdecar ~T&K~ の大学生バーテンダー。インスタグラムで「見ておいしい、読んでおいしい」をコンセプトに独自の飯テロを展開。Noteではライフハックを中心に書こうかと思案中。Insta : https://instagram.com/itooooo_san
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