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子どもの成長に影響する「ほめ方」のポイント

子育てを始めたころ、「子どもの教育は、ほめて伸ばす」というふうに、「叱ることよりもほめることが大事」といった情報をよく目にしました。一方で、後に詳細にふれますが「ほめるすぎることは良くない」とか、「能力や評価をほめることは良くない」といった考え方もあることを教わったので、紹介しようと思います。

ほめすぎることは、承認欲求を高めることにも
だれでも、ほめてもらえると嬉しい気持ちになります。そして、自信の形成にもつながると考えていました。だから、よく言われる「子どもはほめて育てる」という言葉も、私自身も違和感なく受け入れていました。
しかし、ほめられてばかりの環境に慣れてしまうと、子どもたちには「何かやったらほめてほしい」「いつも自分のことを認めてほしい」という承認欲求の気持ちが高まり、例えば家庭内では「ほめないと行動しない」「気持ちが盛上らない」子どもに、親はイライラしてしまう状況を招いてしまいます。 
なんでも、いつでもほめるのではなく、子どもの努力や頑張りを発揮した時に、ほめてあげることがひとつ目のポイントです。

能力をほめるよりも、努力やチャレンジをほめたほうがよい
子どもの成長にとっては、何をほめるのかも重要です。これは、「頭がよい」とか「才能がある」といった「能力」ばかりをほめていると、失敗を恐れて消極的になるという次のような考え方です。
→失敗すると能力がないと思われるかもしれない
→失敗することが少ない簡単な方を選択しよう(難しい方は選択しないようにしよう)

また同じように、「上手・上手い」といった出来ばえを評価するようなほめ方を繰り返していると、次のように挑戦することに消極的になるという考えもあります。
→うまくできなければほめてもらえないかもしれない
→うまくできない(ほめてもらえない)かもしれない
→挑戦をしないでおこう

このように、子どもの挑戦意欲を削ぎ、消極的な性格になる可能性を避けるためには、子どもの知性や能力をほめるのではなく、努力や頑張りをほめてあげることが、2つめのポイントです

最後に「努力をほめることが、子どもの挑戦を後押しする」ということを記した文献を紹介します。この考えに関心のある方は、個別に確認されることをおすすめします。

 子どもの「遊び」は魔法の授業
自尊心を重視するプログラムが子どもの成績を向上させるという考え方がいまだに根強く残っている。子どもの成績を上げるために、頭の良さを褒めてやったほうがいいと思っている親も多い。しかし、ドゥエック教授は、子どもの成績を上げるために知能を褒めることの危険性を警告する。「自尊心のある人間はきわめて重要なことを知っている。彼らの武器庫にある主要な武器、賞賛は強力な道具である。正しく使えば、生徒たちが知的な挑戦を愛し、努力の価値を理解し、逆境を克服できる大人になる後押しをする。しかし、扱い方を誤ると、子どもたちを強化するどころか、一種の麻薬となって、生徒たちを受身にさせ、他人の意見に左右される大人にしてしまう可能性もある。」
引用文献子どもの「遊び」は魔法の授業, Kathy Hirsh-Pasek and Roberta Michnick Golinkoff with Diane Eyer(菅靖彦訳),2006.7.5 . p285, 7章 「私は誰なの?」という意識の誕生.
より速く適切に学べる人、その理由:ほめ方の研究
ドゥエック氏の最もよく知られた研究は、クローディア・ミューラーとともに、ニューヨーク市内の12の学校で行ったものだ。研究では、5年生400人あまりに、言語を用いない比較的やさしいパズルを課題として与えた。テスト終了後、研究者たちは生徒たちに点数を伝え、簡潔な言葉でほめた。半分の生徒には彼らの知性をほめた(「あなたは頭がいいんだね」)。残りの半分には彼らの努力をほめた(「一生懸命やったね」)。(略)
ドゥエック氏は最初、このほめ方の違いが大きな違いを生み出すとは考えていなかった。しょせん言葉にすぎないからだ。しかし実験の結果、5年生に与えられたほめ言葉に劇的な影響力があることがわかった。(略)
賢さをほめられた生徒たちは、ほぼ全員が、自分よりテストの出来が悪かった生徒と自分を比較することで、自尊心を強化するほうを選んだ。これに対し、努力をほめられた生徒たちは、自分より成績のよかったテストを見るほうを選ぶ確率が高かった。彼らは失敗を理解し、失敗から学び、よりよい方法を編み出したいと思ったのだ。(略)
生徒の「賢さ」をほめることの問題は、教育というものの心理学的なリアリティを誤った形で示すことにある。それは、「間違いから学ぶ」という最も有益な学習活動を避けさせてしまう。間違いをおかすことで生じる不愉快な反応を経験しない限り、われわれの脳が既存のモデルを修正することはない。いつまでも同じ間違いをおかし、自信を傷つけないために、自らを成長させる機会を逃し続けるのだ。
引用記事より速く適切に学べる人、その理由:ほめ方の研究,JONAH LEHRER,WIRED(Jp)2011.10.18 TUE 12:14
https://www.wired.com/2011/10/why-do-some-people-learn-faster-2/

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「いとま」は、子どもの穏やかな見守りと力を抜いた応援ができる地域を目指し、子どもを理解する大人を増やしたいと活動しています。地域のさまざまな方との交流や書籍等から関心を持つようになったことを少しずつ紹介していきます。専門知識のない素人ですが、このような考え方があることをみなさんに知ってもらう糸口になれば、嬉しいです。感想やご意見をお待ちしています。

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