一ヶ月間二次創作短歌を作った話〜あるいは気軽な短歌のすすめ〜
2020年に書きかけていた記事なのですが、note開いたら下書きに入りっぱなしで。供養の意味も込めて、せっかくなので投稿しておきます(2023年現在とは色々変わっているところもあります)
①短歌を詠みはじめたきっかけ
きっかけは1通のマシュマロだった。内容は「第二回笹井宏之賞を受賞された榊原紘の『悪友』にハイキュー‼︎の短歌が載っていますよ」というもの。
私は元々ハイキュー‼︎という週刊少年ジャンプで連載されていたバレーボール漫画が大好きで、ひたすらそれを語り続けるオタクアカウントを持っている。そして、短歌や俳句も好きでよくはなす。だからフォロワーさんがその情報をくださったんだと思う。感謝しかない。
そんな好き×好きが合わさった歌集がこの世に存在しているだと!?!?と興奮した私は早速Amazonで『悪友』をポチった。
これをきっかけに『悪友』の作者である榊原紘さんと相互フォローになりました。
それがどうした、という感じですよね。半分は私の自慢です。もう半分はやっぱり榊原さんと知り合ったのが、毎日二次創作で短歌を詠もうという大きなモチベーションになったから。
榊原さんはハイキュー‼︎で短歌読むくらいにはハイキュー‼︎が好きで、ハイキュー‼︎アカウントである私のアカウントも以前から知っておられたらしい。何年も同じ話を繰り返しているといいこともあると実感した9月の末。
だから、というわけでもないけれど私の元々好きだった短歌熱は一気に加速していき、テンションの上がりきった私は突然(でもないけど)思い立った。
そうだ短歌詠もう
そして作ったのがこれ。
拙いし、言葉の意味を練り切れていない短歌だと思う。少なくとも原作を知らない人からしたら「なにこれ?」という短歌であることは確実だ。それでも、自分の言葉が31音に詰め込まれているのが嬉しかったし、もっとやれるのではないか?という気持ちになった。おりしも月の変わり目だった。それなら一ヶ月間毎日短歌を詠めば少しは短歌の手触りも少しはわかるかもしれない。
以前から親しくしていた別ジャンルのお友達も1ヶ月短歌チャレンジを始めてくれたので、私のモチベーションはあがりにあがった。ちなみに彼女は言葉のセンスもよく「すごい!」と「負けてられない」という焦りが混在した。彼女がいてくれたおかげで1ヶ月乗り切れたといっても過言ではない。
そうして、毎日ハイキュー‼︎短歌を詠む10月を迎える。
②短歌を作るのは楽しくて同じくらい難しい
短歌を作るのは楽しかった。しょっちゅう「難しい」「作れない」と言いながらも私は楽しんで1ヶ月間短歌を作り続けた。飽き性の私の表現手段として短歌は馴染みやすかった。
●絶対に完成する
短歌は31音で紡ぎ出す文学だ。ある程度定型がはっきりしており、また31音という短さはクオリティを問わなければ完成させることが出来る作品だった。途中で投げ出さずに済む、というのは飽き性な私にとってとても心強い味方であった。
●自分が作るのは半分でいい、という気持ち。
短歌の最大のメリットであり、デメリットであるのが音の制約だとおもう。リズムが決まっており、そこに任意の言葉を当てはめたら多少アレでも形が整う、同時にその制約ゆえに伝えたい物語を全部伝えることはできない。どうしても読者の受け取りに委ねなければならない。あらゆる創作物はそのような性質を持つけれど、短詩はそれが顕著だと思う。自分の至らなさを噛みしめつつも「こんな未熟な短歌でも受け取った人が素敵な解釈をしてくれるはずだ」と信じることで、不出来な短歌をアップロードする恥ずかしさを誤魔化した。
●単純に短歌が好きだった
元々短歌が好きで、歌集は家に何冊もあったんですよね。だから短歌が未知の文法ではなくて、私にとっては馴染みやすいものだった。だから自分の中の「短歌っぽい」が既にあってそこから始められたというのは大きなメリットだったと思う。
そんなわけで毎日短歌の話をし、マシュマロで感想をねだり、頂けた感想に「こんなのでもいいって言ってくれるひとがいる!」と励まされた。短歌はたのしい。
そして、同じくらい「短歌って難しいな」と実感した1ヶ月でもあった。
③二次創作と短歌という表現の相性の良さ
ぼんやりと生きているので、日常で心揺さぶられる場面ってそんなにない。というか、あるんだけどいかんせんぼんやりとしているのでエピソード記憶にすぎないというか、運命的な何かを覚えることができない。
でも、二次創作なら?あのシーンの象徴的なアイテムはこれって言える。それを中心に歌を作ることができる。短歌なんてトリガーになる一つを見つけられたら半分はできたみたいなとこないですか?上手い人ならそれでもまだまだかもだけど、私くらいだとマジでそんな感じです。
ぼんやりとした日常よりももっとシャープな形で「この瞬間を切り取りたい」がある。だって相手はクオリティの高い物語だから。だから、二次創作で短歌を始めるって跳び箱の前にジャンプ台を置いてもらえる様な気軽さがある。自分のことを歌にするのは恥ずかしくても「いやいや詠んだのはこの作品ですし」という逃げもある。逃げるなと言われればそれはそう、なんだけど。心の障壁は一個減る。そういう意味では初心者向けだと思っている。
④みんなもっと気軽に短歌を読もう、詠もう
※下書きはここで途絶えていたのであとは2023年のいとこんの話です。
2023年の私はほとんど短歌を読めていないし、詠んでもいない!単純に日常に追われていることが大きいです。短歌どころか小説を読めるようになったのも最近で。この1ヶ月の直後に私生活の方が大きく変わりすぎて、短歌を作ることも読むことも途切れてしまったというのは正直に告白しておきます。
でも、1ヶ月間短歌に熱中したのは本当にいい経験だったし楽しかったんですよね。
既存の短歌の読み方が分からなければ自分の推しジャンルに引っ付けて考えてもいいし、短歌は必ずしも自分の話をしなければいけない短詩でもない。それが分かったらいつでもまた短歌を楽しむことが出来るなと、割と鷹揚に構えています。
短歌楽しいから、みんなもっと気楽に読んだり詠んだりしましょ!私含めて!
※記事内で登場した歌人の榊原さんはゆにここで「推しと短歌」シリーズでそういう二次創作を中心とした短歌作りの講座を定期的に開いているので興味を持った方は是非。
※榊原さんなんと第二歌集も出します!素敵な歌人さんなので是非お手に取って読んでください!