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ファーストステップ司法書士27「修理代払うまで車は返さないからね! 【留置権】」

Bは車屋のAに修理を頼みました。その後Bは車を受け取ろうとする際に,「代金は次に来た時に払わせてください。」と言ってきました。Aは「修理代金10万円を払うまでは車を引き渡さない」と主張することはできるでしょうか?

無題

☑ 参考条文 ☑
【295条】
 ①他人の物の占有者は,その物に関して生じた債権を有するときは,その債権の弁済を受けるまで,その物を留置することができる。ただし,その債権が弁済期にないときは,この限りではない。

【1】意義

留置権とは,他人の物の占有者が,その物に関して生じた債権を有している場合に,その債権の弁済を受けるまでその物を留置して債務者の弁済を促すことができる権利です(295条以下)(※1)。上記の事例に当てはめると,Aは他人の物(Bの車)の占有者であり,その物に関して生じた債権(車の修理代金請求権)を有しているので,Aは車のその債権の弁済(修理代金の支払)を受けるまで,その物(車)を留置して,債務者(B)の弁済を促すことができます(※2)。ただし,債権が弁済期にないときは,留置権を行使することができません。例えば,上記の事例で「代金の支払は修理の1か月後とする」といったように定められていた場合,弁済期(代金の支払期限)はまだ訪れていないことから,Aはその間留置権を行使することができません(295条1項但書)。 
※1 留置権は,法律上当然に発生するものなので,留置権についての契約をする必要はありません
※2 修理代金を支払わないと車が返してもらえないとなれば,Bは「修理代金払わなきゃ!」とあせることになります。このように債務者に心理的プレッシャーをかけて弁済を促すのが留置権の狙いです。

【2】趣旨

留置権は,当事者間の公平の観点から定められたものであり,目的物を自分のところにとどめておくことによって,自分の持っている債権を確実に回収できるようにする機能があります(※3)。ただ,債権の弁済期が到来していない場合に留置権を認めてしまうと,かえって不公平になってしまうので,その場合は留置権を行使することはできません(※4)。
※3 上記の事例でいえば,代金をもらってないのに,自分は車を渡さなきゃならないなんてフェアじゃないですよね。
※4 弁済期が到来しておらず,まだ払う必要がないのに,弁済が強制されるのはフェアじゃないですよね。

【3】解答

Aは留置権を行使することによって,「修理代金を払ってもらうまでは,車は返しません。」と主張することができます(295条1項本文)。

★やってみよう!★
【過去問 平成9年第13問ア】
☑ 相手方の債務が弁済期にないときは,留置権を主張することができない。
➠○ 債権者の有している債権が弁済期にないときは,留置権を行使することができません。

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