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研究「窒化アルミニウムのミリ波焼結における添加助剤の比較」について

文献を読んで、覚えておきたいことをメモしておくためのnote。

窒化アルミニウムのミリ波焼結における添加助剤の比較
J. Jpn. Soc. Powder Powder Metallurgy, 49 (2002) 905-909

メモ

緒言より

  • 種々の希土類酸化物を助剤とする窒化アルミニウムのミリ波焼結を行い、窒化アルミニウムの緻密化温度と熱伝導度に対する助剤効果を比較検討した。

試料および実験方法より

  • 助剤の添加量は体積分率がほぼ一定(2 vol%)となるように、Y2O3の時では3wt%とした。

  • 焼結温度:1500℃から1800℃まで

  • 熱伝導度:レーザーフラッシュ法で比熱および熱拡散率を測定。比熱測定時にはレーザーのエネルギー吸収率を一定にするためガラス状のカーボンを用い、熱拡散率測定時にはレーザーの透過防止のために金蒸着を行った。

  • 焼結体の結晶構造:X線回折、2θ/θ法による。

  • 焼結体の粒子の大きさ:破面のSEM観察による。

結果・考察より

  • Yb2O3を添加した窒化アルミニウムでは1600℃で96%T.D.を越える十分な緻密化が得られたのに対し、Y2O3では1700℃、Dy2O3やGd2O3では1750℃と、より高い温度を必要とし、Sm2O3では1800℃以上まで昇温しなければ十分な緻密化が得られなかった。

  • 電気炉加熱の場合とミリ波加熱の場合では窒化アルミニウムの焼結挙動が大きく異なることが明らかとなった。

  • 添加助剤の希土類イオン半径が大きくなるとともに高い焼結温度が必要。電気陰性度はイオン半径の減少とともに増加。結合のイオン性が減少するとともに焼結温度が増加。

  • 助剤の希土類酸化物は焼結が進行するとともに窒化アルミニウム表面のアルミニウム酸化物と反応して複酸化物を形成。

  • 焼結中の助剤酸化物相の温度は実際に計測された焼結温度より高温と考えられる。

  • 高温相であるYb4Al2O9やYAlO3がその形成温度(Yb4Al2O9:1675℃、YAlO3:1835℃)よりも低い温度で形成されていることからも明らか。

  • RAlO3のペロブスカイト相のみを複酸化物相として形成する場合には高い焼結温度を必要とし、2種類の複酸化物相を形成する場合には比較的低い焼結温度で緻密化できる傾向。

  • 希土類のイオン半径の大きなGd2O3やSm2O3ではペロブスカイト相のみを形成。

  • イオン半径の小さなYb2O3、Y2O3、Dy2O3を添加した場合、ペロブスカイト相のほかにR3Al5O12のガーネット相など、複数の複酸化物相が形成。

  • 添加された希土類酸化物は、焼結時にまず窒化アルミニウム粉末表面に存在する酸化物と固相反応し、ペロブスカイト相やガーネット相などの複酸化物を形成。

  • 2種類の複酸化物相を形成するYb2O3あるいはY2O3添加の場合には、2相共存により共晶温度において液相が形成され、液相焼結により緻密化が進行。

  • 多種類の複酸化物相を形成する元素ほど液相を生成しやすく、より低温で焼結が可能。

  • Gd2O3やSm2O3のようにペロブスカイト相のみを形成する場合には、その融点が高いために液相の形成が困難であり、液相焼結による緻密化が促進されにくい。

  • 希土類元素のイオン半径が小さいほどペロブスカイト相の融点は低くなる。

  • 酸化物相の共存と酸化物相の融点が希土類元素のイオン半径に依存するために、焼結性が希土類元素のイオン半径に依存する。

  • Yb2O3添加の場合のように、ペロブスカイト相を形成しにくい場合に、特に低温で緻密化できることが指摘される。

  • 相対密度が高いほど熱伝導度が高くなる傾向。密度が低いほど気孔率が高くなり、気孔が熱伝導を大きく阻害するためと推察。

  • 窒化アルミニウム粒と粒間助剤酸化物の組織形態も熱伝導性の向上に重要。

  • 密度が高い状態であっても低熱伝導度の粒界相が窒化アルミニウム粒間に存在した状態にあり、この粒界相によって熱伝導が大きく阻害される。

  • 焼結が十分に進行すると、粒界相が三重点に集積し、窒化アルミニウム粒間にある酸化物相が非常に薄い状態となり、熱伝導度が向上。

  • 熱伝導度には不純物酸素の窒化アルミニウム格子内への固溶が大きく影響する。

  • 非還元雰囲気において焼結を行った場合、焼結温度が高いほど窒化アルミニウム格子内への酸素の固溶が進行。

  • 1800℃で焼結した場合、Gd2O3やSm2O3を添加した場合には高熱伝導性に適した粒界相組織を実現できず、低温で焼結可能であるYb2O3やY2O3を添加した場合には不純物酸素の固溶を助長し、それぞれ熱伝導度が低下。

まとめより

  • 希土類元素のイオン半径の小さな助剤を添加した場合ほど低温で緻密化が起こる。

  • 2種類の酸化物粒界相を形成する助剤が低温焼結に効果的。

用語

  • ペロブスカイト相(RAlO3)

  • ガーネット相(R3Al5O12)

所感(得られた知見を活用できるか、どう活用するか)

得られた知見を活用することができる。(個人の意見です)

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