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解説「窒化アルミニウムセラミックスの組織制御と熱伝導性」について

文献を読んで、覚えておきたいことをメモしておくためのnote。

窒化アルミニウムセラミックスの組織制御と熱伝導性
Netsu Sokutei 46 (3), 122-127 (2019)

メモ

  • 窒化アルミニウム(ALN)セラミックスは高い熱伝導性(180~200 W/m-1 K-1)と優れた電気絶縁性(絶縁耐圧>15 kV mm-1)を有する。

  • サブミクロンサイズのALN粉末を原料とし、酸化イットリウム(Y2O3)や酸化カルシウム(CaO)のように液相を形成する酸化物を焼結助剤として添加し、N2雰囲気下1800℃以上の高温で数時間以上の焼結を行うことで緻密なセラミックスが得られる。

  • ALNセラミックスの熱伝導性に与える要因:
    (1)残存気孔
    (2)粒界および粒界相:粒界相はALN粒子自体よりもずっと熱伝導率が低い。
    (3)ALN粒内の不純物固溶酸素:ALN粉末の表面には非常に薄い自然酸化層が形成される。AlNを高温で焼成すると自然酸化層中のOが粉末の内部へと拡散し、ALNの結晶格子中にAlの点欠陥が生じ、AlNの結晶格子の格子振動(フォノン)を散乱させるため、AlNの粒内の熱伝導性を低下させる。Oの濃度がさらに高くなるとAlNの結晶格子中に八面体配位を持つAlO6ユニットが形成され、熱伝導率はさらに低下する。

  • 粒径が小さいと単位長さあたりの粒界の数が増えるため、熱伝導率は低下する。

  • 焼結助剤と粒内の固溶酸素が反応して低融点の液相を形成し、緻密化を促進させるとともに、粒内の固溶酸素濃度を下げる「トラップ効果」により粒内の熱伝導性が向上

  • AlN粉末を合成する方法として、金属Alを高温で直接窒素と反応させる直接窒化法、Al2O3と炭素の混合物を窒素雰囲気下で熱処理する還元窒化法が知られる。

  • 微粉末が凝集したまま焼結を行うと、凝集部分が先に焼結・粒成長してしまい、粗大粒子同士をうまく接合させることができず、焼結体の中に多数の空隙が形成されてしまう。

  • 粗大粉末の添加が緻密化を阻害(20C)。粗大粒子の添加により緻密化が阻害されて焼結体内に空隙が生じることにより熱伝導率が低下していると考えられる一方、粗大粒子の添加量が多い場合でも粗大粒子同士がうまく接合できていれば粒界での熱伝導性の低下は抑制されると考えられる。

  • 熱の流れに対してウィスカーの配向方向が垂直になっている試料よりも、熱の流れる方向と平行に近いウィスカーが含まれる試料(5W||)の方が明らかに高い熱伝導率を示した。しかし5W||でもウィスカーを添加していない試料よりやや低い値に留まっていた。ウィスカーを添加することによって焼結体中に空隙が増加して熱の伝達が阻害されたことが考えられる。

  • ウィスカーの合成時に固溶酸素や結晶面のずれである転位などの格子欠陥が導入された場合、ウィスカー自体の熱伝導率が低下する可能性も考えられる。

所感(得られた知見を活用できるか、どう活用するか)

得られた知見をそのまま活用することはできない。(個人の意見です)

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