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街で美容師に声を掛けられたこと、ありませんか?

操作イトウです。

※追記 この投稿をベースに、R3.3.21、文春オンラインに寄稿させていただきました。こちらもご参照ください

皆さんは、街で美容師から声を掛けられたことはないですか?美容界では「モデハン(モデルをハントする、の略)」と呼びますが、突然人から声を掛けられると、びっくりしますよね。

今回はそんなあるある、美容師のモデハンについてです。

美容師とは切っても切れない「モデハン」とは

かつて、火曜日の原宿にはモデハンする美容師が溢れていました。ガードレールに腰掛けているお洒落な人は、ほとんど美容師だったんじゃないか、というほど。

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ここ数年でこの手のマッチングサイトが普及したこと、またコロナ禍もあって、街で声を掛けるケースは減ったと思いますが、美容師が声を掛けるのには3つのパターンがあります。

ちなみに、美容師が呼ぶ「モデル」はファッションモデルのことではありません。ヘアスタイルの写真撮影させて頂く方以外にも、練習台になって頂く方のことでもあります。美容師に『モデルになってください』と言われると怯んでしまいますが、それは『練習させてください』かもしれません。

1.ヘアスタイル写真のモデルさん

写真映えする美男美女に声を掛けるパターンです。業界では「サロンモデル」と呼ばれます。

ヘアカタログによく載っている方はプロのファッションモデルとは違いますが、写真を撮られることに慣れている、ポージングが出来るセミプロです。多くはバイトや副職として行なっていて、カットやカラーは美容室が負担するためお金がかからず、少額ですが報酬を得ることができます。

サロンモデルを経て有名俳優さんになった例もあるため、ステップアップの手段にしている方もいるようです。

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美容室の専属モデルとして契約する方もいます。美容師とサロンモデルとのマッチングサイトが普及したため、美容師が街で直接声を掛けることは、少なくなっているかもしれません。

2.アシスタントの練習台

美容師は「スタイリスト(一人前)」と「アシスタント(見習い)」にランク分けされます。アシスタントの間は沢山練習が必要なため、練習させてもらえるモデルを探し続けています。

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こちらもマッチングサイトが普及していますが、街で声をかけられた場合は『人の頭で練習したいから、やらせてください』というオファーです。これには、先輩に教えてもらう「授業」形式と、個人の責任でやる「自主練」形式とあります。

「授業」形式

カラーやカット等の練習課題によって、先輩美容師が監修しながら覚えたての技術を実践する形です。

「自主練」形式

覚えた技術を駆使して実戦形式の練習する形です。材料費程度のお金を頂きながら、ある程度の経験値を得たアシスタントが、自分の力でヘアスタイルを作ります。

モデルは格安で出来る反面、まだ練習中のためオーダー通りに行かず、多少の失敗をする可能性もあります。営業時間外に行うことが多いため、モデルになると夜遅い時間や、朝早い時間に美容室を伺うことが多いです。

3.営業のキャッチ

「お店が近くなんですけど、値引きするので今からカットしませんか?」と営業をかける、いわゆるキャッチです。ブランドイメージに影響するため、お店によってやるかやらないか、はっきりと分かれます。

繁華街や表参道などには美容室が数多あり、その中から自分の美容室が選ばれるのは至難の業です。ネットで集客しても、人気店に顧客は集中するため、お客様が来ないと売上が上がらない。お店で待っているのでなく、能動的に街で歩いている人に声を掛けて、顧客を取りに行く形です。

キャッチの場合「今からやる」のはハードルが高いので、値引きを売り文句にしています。ジュニアスタイリスト(スタイリストになって間もないスタイリストのこと)がやることも多く、自分の顧客を増やしていけばいくほどお客様から予約が入り、キャッチをやる必要は減っていきます。

声を掛けられる人はこんな人

「練習台」の場合、美容師は自分の練習課題にあった髪の人を探すため、髪の長さや髪質を見て声を掛けることが多いです。

「キャッチ」の場合は、見た目にプリンになっていたり、髪が伸び伸びの方、ボサボサの方がターゲットです。「丁度、美容室に予約しようかと考えていた」方に声を掛けるのがチャンスです。

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ちなみに美容師あるあるですが、自分も美容師なのに美容師に声を掛けられると、ちょっと恥ずかしいです。僕は自分の髪の毛に無精なので、よく声をかけられます。声を掛けてくれた美容師さん、ごめんね!頑張ってください!

マッチングサイトは革命的。モデハンは、正直辛い

僕がアシスタントの時は、休みの日の時間をほぼモデハンに費やしていました。
モデハンは練習させてもらう時間が限られていることが多いため、声を掛けても断られることがほとんどです。必要な練習のモデルが見つからない時は、1日に20人も30人も声を掛け続けることがざらにありました。

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元々その手のことが苦手な僕としては、それは辛い日々でした(ついぞ得意だと思うこともありませんでした)。不意に男性から声を掛けられてすごい形相で逃げられたこともあるし、寒い日にも駅前に立って、ひたすら探し続けたりしていました。
なので、マッチングサイトによってそれを最低限に省ける、現代の後輩を本当に羨ましく思います。

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一方でモデルとしては格安で済むため、割り切って毎回マッチングサイトを利用する方もいます。ですが格安が故、ドタキャン等のモデル側のマナーの悪さも目に付き、アシスタントが振り回される場面もよく目にしています。

お互いの理解があって成り立つものですが、ネット上では写真や文面だけのアポイントメントのため、説明が足りずトラブルになるケースもあるようです。

練習台になって頂いた方に、感謝。

モデハンは「ナンパ」に近く、イメージが悪いと思います。

ですが限られた時間のやりとりで了承してもらうには、自分自身の営業力やコミュ力が必要とされます。それによって鍛えられたところもあるし、モデルを依頼して以降、お客様としてのお付き合いが続いている方も多くいます。

どれだけマネキン(美容師は「ウィッグ」と呼びます)で練習しても、人の頭では同じようにいきません。人の頭でケーススタディを重ねて、沢山経験をしないと上手にはなれないのです。

貴重な時間を割いて頂いた方々があってのプロの美容師。善意でお手伝いいただいた方に、頭が上がりません。依頼の仕方は変わっても、結局は人と人、そこへの感謝は変わらないはずです。

以上、美容師はこう思っている、でした。

ではまた。

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