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下卑たる趣向

初めて真白の人をそれと意識して見たのは大学生くらいの頃だったろうか。

向かいの道路を髪も肌も白い青年が歩いていた。

ああ、あの人はアルビノなのだと認識するとついつい目で追ってしまった。

障害や病気で苦しんでいる方には大変不謹慎かつ失礼な話であるが、奇形や欠損等で身体的特徴のある人、それでいて痛ましくない、健康そうな人を好ましく思ってしまう傾向がある。

真夏の観光地で日傘を射していた透けるように全身白いアルビノの女性。遠目からは西洋人のように見えた。

列車の中で立ったまま文庫本を読んでいた隻腕の精悍な青年。

生まれつき片目しか見えないのだという整った顔立ちの少年は、その光を失っている方の虹彩が濁って渦を巻いており、小さな沼のようで魅力的だった。そちらの目が見えないのをいいことに彼と他愛もない会話をしながらその沼を見つめていた。

テレビで見た生まれつき腕の欠損したテニスの女子選手はその短い腕の先端から手指になり損ねた小さな突起が生え出ていて興味を誘った。

そういうものが好ましい。

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