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PMBOK7 のメッセージを読み違えないように

プロジェクトマネジメント協会 (PMI) が発行しているプロジェクトマネジメントの知識を体系化したPMBOKですが、2021年7月にそれまでの6版(PMBOK6)から7版(PMBOK7)へ改訂されました。(日本語版は2021年10月より提供開始。)

PMBOK7 は、PMBOK6以前のものと記述内容が大きく変わっています。

全く記述内容が変わっているため、端的にどう変わったと言いづらいところですが、例えば

  • プロセスベースの記述が中心だったものから、原理原則ベースの記述に変わっている

  • 成果物より成果を重視する記述となっている

といったことが挙げられます。

ただ、これを誤解してほしくないのですが、PMBOK7は
「途中のプロセスよりも成果のみが重要」とは言ってない
ということです。

成果物より成果が大事ということについては、ITシステムの例でいえば
システムを作ることが目的ではなく、システム構築によって得られる成果が大事
ということを言っています。当たり前の話なのですが、「目的」と「手段」を間違えてしまうというのはよくある話ですね。

そのため「目的」である成果が重要なのは間違いないのですが、「手段」を軽視してよいとは言っていません。

ところで、この「プロセス」という言葉ですが、少し注意が必要かなと思います。
PMBOKを読み込んでいる方は「プロセスベース」=「予測型(ウォーターフォール)」と認識されている方が多いかもしれません。確かにPMBOK6までは(アジャイルの話も組み込まれてはいたものの)基本的に「予測型(ウォーターフォール)」が前提で内容もプロセスベースであり、「適用型(アジャイル)」はこの既存のプロセスの枠組みに捉われず柔軟に対応していくということなので、そう理解されたとしてもしかたないと思います。

ただ、だからと言って「適用型(アジャイル)」は(方法・手段という意味での)「プロセス」が不要(重要ではない)ということではありません。固定のプロセス(方法・手段)に縛られずにプロジェクトに応じて、方法・手段を選びテーラリングして進めていくことが重要なのです。

PMBOK7が脱却しようとしているプロセスは、ウォーターフォールが前提の「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・コントロール」「終結」のプロセスのことで、社会に存在するさまざまなプロジェクトに対応する際にこの固定のプロセスでは当てはまらない場合も多くなり、かつさまざまな方法・手段を記述することは現実的ではないため、普遍的な原理原則ベースの記述に変わったということです。

また、方法・手段は、技術の進化などによってもどんどん変化していくため、紙媒体のPMBOKではなくオンラインのStandard+ に記載するという形に変えているのです。つまり、方法・手段(プロセス)が不要と言っているわけではないのです。

少し話がそれますが「途中のプロセスよりも成果のみが重要」は、既視感を覚える方もおられるかもしれません。私は一昔前の人事評価の成果主義制度を思い起こしてしまいます。

それまでの年功序列制度から組織への貢献度がより高い人を評価するために成果主義制度への移行が進みました。ただ、当初は成果にスポットを当てすぎてしまって、チームワークが悪くなったり、途中の努力(プロセス)が認められずモチベーションが下がってしまったりといったデメリットが出てしまいました。

そういった弊害を回避するため、成果主義制度でも途中のプロセスも評価するといった対応を行っている企業が多いです。

PMBOKも一時期の人事評価制度のようなプロセス軽視の道を辿ってしまわないよう、正しく理解して適用してほしいです。


最後に、運営メンバーとして参加している PM Award でも単にプロジェクトの成果のみを評価するのではなく、成果を導くプロセスも評価される必要があると考えています。(※あくまで私の個人的な見解です。)

今年度の PM Award 2022 の案内は、3月末~4月初に公表される予定です。その際には、このブログなどで紹介させていただきたいと思います。

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