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【ウグイスの彼】

日曜の朝。
まだ起きてない起きてない…。
ベッドの中で自分に言い聞かせる。

昨日の土曜だって、出勤要請で頑張った。
できる限り、私はまどろみたいのだ。
まどろめるだけ、まどろみたい。

私は、まだ起きてない。
断固として、起きてない。
起きてたまるか…。

『ホーホケキョッ』

ガバッ!!!!!

文字通り、私はガバッ!!!!と跳ね起きた。
ウグイスのさえずりで目覚めるなど、これまでの人生、あっただろうか。

なんだこの特別感。
その軽やかで滑らかな音は、数回私の耳をくすぐりその後はいくら待っても聞こえなくなった。

彼は飛び立ったのだ。
何気なく発したその声が、こんなにも一人の人間を高揚させたなどとは知らずに。

私はスマホの画面をスラリとなぞった。

う ぐ い す

『ウグイスは、春告鳥』
『鳴き声を聞くと、幸運が訪れる』
『良いニュースを知らせる縁起の良い鳥』

飛び立ったあのウグイス。
こんなにも自分が特別な存在であることを、彼は知らない。

        ∇∇∇

ウグイスが、春を歌うから、私はピクニックに出かける。

乗り捨てた自転車。

花のカンムリ。

いびつな四葉のクローバー。

         ∇∇∇

二の腕をなぞる風が涼しさを増して、そろそろ帰ろかとテントを畳む。

彼は今どこにいるんだろう。
どこで誰を癒やしているんだろう。
その声が、特別だとも知らずに。
こんなに特別な一日を作ったことも知らずに。

ぇえ…! 最後まで読んでくれたんですか! あれまぁ! ありがとうございます!