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紛争地の人々に生きる選択肢を増やす

「職業は武装解除」瀬谷ルミ子著 朝日文庫の本紹介です。

瀬谷さんは、認定NPO法人日本紛争予防センター(JCCP)理事長。英ブラッドフォード大学紛争解決学修士課程修了。ルワンダ、アフガニスタン、シェラエオネ、コートジボワールなどで、国連PKO,外務省、NGOの職員として勤務。2007年よりJCCP事務局長として、ソマリア、南スーダン、アジア地域などの事業を統括。13年より現職。専門は紛争後の復興、平和構築、治安改善、兵士の武装解除・動員解除・社会再統合(DDR)など。11年Newsweek日本版「世界が尊敬する日本人25人」等に選出。という方です。

瀬谷さんとJCCPを知ったのは、私が勝手に私淑する、オーセンティックワークス株式会社代表取締役の中土井僚さんがJCCPの理事をされていて、私が、海外での活動に興味をもっていることを知って、その活動を教えてくださったのがきっかけです。

ところが、その話をたまたま嫁さんにしたところ、「何言ってんの、あなた私と一緒にセミナーに参加して、瀬谷さんのお話を聞いたじゃない」と言われてしまいました。

実は私の次女が、大学で「平和構築」に興味をもって、学生としていろいろ活動していた一貫で、大学でセミナーを開き、その講師として瀬谷さんに来ていただいていた。それにどうも私は嫁さんと一緒に参加していたようなのです。

そう言われれば、覚えがあるような気もするのですが、その時には私自身、それほど興味を持っていなかったので、あまり頭に入ってきていなかったようです。

しかし、その後次女はその方向性をますますはっきりさせて、大学卒業後はイギリスの、瀬谷さんとは別の大学院で「平和構築学」を勉強し卒業して、その間、ケニア、エチオピア、南スーダン、イラン、イスラエル、パレスチナでNPOに参加したり、旅行したり、そこで友だちとなった、パキスタン人と香港人が神戸の自宅に来たりということがあって、私も海外での活動に興味を持ち、僚さんがJCCPの存在を教えてくれることとなったのです。(以下ぐるぐると回る・・・)

瀬谷さんが、「平和構築学」に目を向けるきっかけとなったのは、高校3年生の時に新聞で見た、アフリカの小国ルワンダで発生した大虐殺、その難民キャンプの親子の写真だったそうです。コレラで死にかけている母親を、泣きながら起こそうとしている3歳ぐらいの子供の姿に、強い衝撃を受けたということです。

そんななすすべもなく命を落としていく人々の様子と自分を比べ、自分には「自由に行動をする権利」があるということに気がついた。人生を自分の手で変えられる、その権利は、世界の誰もが持っているものではない。

どうせだったら、できることから、少しずつでもやってみよう。
その小さな決意の積み重ねを繰り返して歩いていたら、いつの間にか武装解除と紛争解決の仕事に行き着いていた。(5P引用終了)

瀬谷さんが、紛争地で仕事を取り組むうえでのポリシーは「やらない言い訳をしない」ということで、それは、弟さんが若くして病気になられてその困難な人生に立ち向かう姿をみてきたことにあると言います。

「できない」ことと「やらない」ことは決定的に違う。「できない」ことは、自分の能力や環境、その他の外部条件が原因のこともある。「できない」ことは、場合によってはあきらめるしかない。ただ、今はできなくても、努力して将来できるようにすることが可能な場合もある。
一方、「やらない」ことの原因は自分の気の持ちようを変えるだけで解決できる。(27P引用終了)

この
・自分が持つ「自由に行動する権利」を行使すること
・やらない言い訳をしない
という二つの瀬谷さんの考え、ポリシーは、とても「厳しい」ものです。

瀬谷さんのように、「紛争地を変えるために自分が動き出す」と決めたり、「ファクトフルネス」でハンスロリングが「心配すべき5つのグローバルリスク」の中で「極度の貧困」を挙げ、「レベル1にいる10億人が、人間らしく暮らすための必需品を届けることに、いますぐ力を注ぐべきだ」と主張していることに対し、私自身はどう行動するか?

私の現状での結論は、「まず日本語教師の資格をとる」です。「海外に行って役立つ価値」を身に着けて、そこで何か、「自分にできることをやる」だと思っています。

瀬谷さんのJCCPでの活動です。

紛争の直後、食べるものもなく、家も壊され、けがや病気を治す医者も病院もない状態では、最低限必要な生活すらままならない。そこに、食糧、住居、医療などの支援が届けば、数週間後、数か月後、どのように生きていくかを考えることができるようになり、さらに生きるための選択肢が増える。復興が進み、学校建設や町の開発などが始まれば、自分の意志で進路や職業が選べる選択肢が増えていく。違法な武器や犯罪を取り締まる仕組みが整備され、他人を傷つけないルールをみなが守る社会になると、何の理由もなく自分の生活が脅かされる心配をしなくても済むようになる。そして、子どもや家族の将来の人生を計画し、どのような社会を築いていくかを選ぶことができるようになっていく。そうやって自分で選べる生き方の選択肢が多いほど、その社会は平和な状態だと思う。

そのため、JCCPの活動は、「紛争地の人々に生きる選択肢を増やす」ことを目的としている。

(中略)JCCPの活動分野は、現地にニーズがあるのに、やり手がいないために問題が解決されないままになっているものに特化している。すでに専門的に活動する団体がいる分野は、その団体に任せたほうが、私たちがゼロから始めるよりはるかに効率がいいからだ。(129P引用終了)

こんな合理的で日本人らしい活動を続ける、瀬谷さんとJCCPを見守り続けたいと思います。