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オペラに興味があるのなら、本場で劇場に行かねばならない。

本場で2つ、3つ見てみれば、オペラがどんなものだかは何となく肌でわかるようになります。日本で100回、200回見に行っても絶対わからないことがわかるようになります。

それに、上演される作品数の多さも文字通り桁違いです。オペラの広さ、深さは、日本にいては見当もつかないのです。何よりも、オペラが昔の名作の再現なのではなく、今も生きていて熱いということがわかります。

「でも、誰もが気軽に海外に行けるわけではない」と反論する人もいるかもしれません。

いいえ、この時代、よほどの事情がない限り、行けます。行かない人は、行く決意をしていないだけです。本当に行こうと思っていないだけです。つまりは、本心では行かなくてもいいと思っているのです。

残念ながら、そういう人は、オペラの本当のすごさを知ることはできません。オペラに限りませんが、あらゆる趣味、道楽、仕事、つまるところ人生は、真剣になればなるほど、本当の面白さや深さがわかるというものでしょう。

オペラを生み、育てたのはヨーロッパです。ですから、オペラはヨーロッパで見ないといけないのです。今ほど海外旅行が簡単な時代はありません。劇場のチケットはインターネットで買えますし、飛行機もホテルも、お手頃なものから贅沢なものまで、いろいろ探せます。休日も増えましたし、有給休暇もとりやすくなってきています。

体が不自由だったら?空港では職員が車椅子を押してくれます。車椅子用の席も劇場にはあります。今の時代を生きる特権は、旅行をおいてほかにはないとすら私は思ってます。

ですので、本書を読まれた方は、是非本場でオペラをご覧ください。私が言いたいことはひたすらそれに尽きます。それをしないでオペラを語っても、生身の女性を知らないで女性論を語る未経験な青年のたわごとと変わるところがありません。ただちに、が一番いいことは間違いありませんが、そうでなくても、いつか行くつもりになってください。

劇場には発見があります。また、どんなに見慣れた作品にも何か発見があります。それは本当に思いがけなく起こります。この世に存在する沢山の閉じられたドアがひとつ開け放たれたような気分。そうした経験をするために劇場に出かけることは、人生の大きな楽しみのひとつです。まして、それが外国の劇場でしたら、どれほど嬉しいことでしょう。

許光俊は「オペラ入門」現代新書の「最後に」でこう「挑発」します。この「語り口」に弱いんですね。「じゃあ、行かなくちゃ!」と思ってしまいます。

「ただちに」というと現在はコロナ禍という「行けない事情」ができてしまいましたが、その状況さえ変われば、やはりまずラ・スカラに行きたいと思います。