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制作日記No.97〈松村沙友理篇 解説その④〉

2021年7月20日(火)

お疲れ様です。いたがきブログです。

乃木坂46メンバーの卒業後をテーマに、僕の妄想を短篇小説集にしようと企んでいます。
タイトルは短篇小説集『振り向けば青春 ~あの後の彼女たち~』です!

(略して #短篇小説集ふりはる

ようやくその第一作目となる松村沙友理篇が完成しました! 無料で公開しています。

さて、松村沙友理篇の解説も今日が最後。
〈松村沙友理篇 解説その④〉、どうぞ御覧ください。


▼バックナンバー
制作日記No.92〈松村沙友理篇 解説その①〉
制作日記No.93〈松村沙友理篇 解説その②〉
制作日記No.96〈松村沙友理篇 解説その③〉

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▼オーディオコメンタリー④
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チャプター4の解説や裏話についてしゃべったオーディオ・コメンタリーです!

物語の山場である〈男性〉の臨終のシーンに懸けた思いや、物語のもうひとりの主人公である〈沙友理の夫〉の心の変化をどう描くかあーでもないこーでもないと考えたはなしをしました。

ぜひお聞きください!


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▼文字起こし④
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チャプター4です。

さあここはもう〈男性〉の死ぬシーンですけど、人間が死ぬシーンをどう描けばいいのかっていう、難しくないですか?(笑)難しくないですかじゃねえな、何て言えばいいんだろう、難しいってか知らないじゃない人が死ぬ時どんなふうになるのか。ここは人が死ぬシーンをその死ぬ人が主観的に描かなきゃいけないからね、どうやったって想像の領域でしかない。だから秋元康の『象の背中』とか結構参考にしましたね。まあもともと描きたいものは鮮明にあったんですけど、それをどうリアリティを持たせるっていうか、ちゃんと「ああ、人間が死ぬシーンなんだな」っていう範疇にそれをどう落とし込むかみたいな。結構突飛な事を考えていたので、まあ先に言っちゃうと握手会と人間が死ぬ臨終のシーンを掛け算したらどうなるのかなっていう実験というか頭の中で立ててた妄想から全ての発想がスタートしているので。もうこの物語がそもそもたぶんここからスタートしてるようなもので、この握手会×臨終のシーンをどう描くかっていうのの答えがこの物語全体と言うか、そこをダイナミックに描くためのこれまでのストーリーみたいな。だからそれをしっかり物語の中の人が死ぬシーンとして、その範疇の中で大胆に描けるかみたいな。

まず走馬灯みたいなのを入れてみましたね。走馬灯と幽体離脱の中間みたいなやつだけど。最初のコレはですね、僕のエピソードですね。球技禁止の公園でサッカーやってたんですよ小学校時代。鉄棒とフェンスをそれぞれゴールにして、サッカーアニメ流行りのサッカーアニメは『イナズマイレブン』ですよ。もうみんな『イナズマイレブン』見てたんですよね。僕は見てなかったんですよ、僕はみんながやってる事はやりたくねーっていう昔からひねくれた人間で。

南アフリカワールドカップかな、あの時はめっちゃくちゃサッカーが流行ってサッカーやり出す子供がいっぱいいたんですよ、ちょうど小学校3年生ぐらいの時に。で、家で何もせず暇してたから、親に「なんかスポーツの習い事とかやってみる? サッカー、野球、バスケが一応通ってる学校でクラブチームあるよ」みたいなこと言われて、サッカー、バスケ、野球で野球は絶対に汚くなるからやりたくなくて。サッカーかバスケかどっちだろうってなった時に、その時ちょうどワールドカップとかでサッカーがめちゃくちゃ流行ってたから、「よし、バスケにしよう」ってことで小学校でミニバスやってたんですけど。とにかく流行ってるものは見たくないしやりたくないっていう、いらっしゃいますよねたまにね。僕も例に漏れずその類の人間だったので。今はちょっとずつ変わってきましたね。相変わらずやっぱりみんなと同じことはやりたくないっていうのは根底にはあるんだろうけど、とはいえしっかりヒットしたもの、流行っているものっていうのはどっかしらちゃんと学べる要素がその中にあって、きちんとした裏打ちがあるからヒットしているんだな流行ってるんだなっていうのは受け入れて『鬼滅の刃』とかも映画見に行きましたし。そこはちゃんと楽しもうっていうそういうマインドにちょっとずつ変わってきましたけど、まあ根っこは変わってないですね。同じことしたくない、みんなが右向いてたら左を向きたくなるような人間なんですけど、まあその頃のエピソードですね。

この「高校生の頬杖をついて窓の外を見てる」はもうまんま僕の学校生活でしたね。教室ではほとんど喋んなかったですね高校は。しゃべんなくても大丈夫なところがきっとダメだったんでしょうね。一日学校でひとことも発さないみたい日も部活がない日とかだったらあったんですけど、なんか大丈夫だったんですよね。寂しさというか孤独感ありましたけど、もう生きていけないとか、誰かと喋ってないと誰かと繋がってないとみたいなのが薄かったのかな。そこに必死さがなかったっていうのもダメだったんでしょうね。

この3つ目のはフィクションですね。創作しました。本当に吐くっていうのも面白いなと思って。“嘔吐”とか“吐く”とかが出てくるのは別にサルトルの影響ではないですけど、ただサルトルの嘔吐は読んでめちゃくちゃ面白かった。中学3年生で高校受験用の塾に通いだして、そこで模試の過去問とかを解かされるじゃないですか。なんだろうなあ、V模擬とかだったかな、私立のV模擬とかの過去問で国語の問題でサルトルの『嘔吐』っていう小説の一部分が出てそれを基に出題されるみたいのがあって。それを読んだ時にめっちゃくちゃ面白いっていうか、何かすごく僕が普段感じていることと似たようなことをこの小説の主人公が感じてるなって思ったのをすごい覚えてて。それを割と最近になってまた思い返してみて、じゃあちょっと読んでみようっていうことでサルトルの『嘔吐』っていう小説。サルトルさんはフランスの哲学者思想家ですけど、面白かったなあ。まあここでこの物語で“嘔吐”とか“吐く”とかが出てくんのは別にそこから影響を受けたわけではないですけど、『嘔吐』は面白かったな。

これなんか走馬灯なのか幽体離脱なのかちょっと分かんないけど、なんか死の間際の幻覚というか、意識がおぼつかない現実と虚構をうろうろしてるなーっていうのを暗示させるために走馬灯と幽体離脱の中間みたいなシーンをちょっと入れてみたんですけど。

ここはですね、スマホらしさを出しましたね。このnoteでスマホで小説を書くときの、この横書きでどんどん下にスクロールして行くっていう、縦長の画面で。それに一番合う表現方法、この「さゆりんごに会いたかったな」っていうのは、2行か3行くらいバア―っと空けて。

この辺は楽しかったなあ書いてて。自分が見ているものを文章に起こそうとすると必ずズレが生まれるんですね。時間的な。現実に起きていることとそれを文字に表現する時に。でもそのズレがない世界をここでは書きたいなと思って、頭の中で構造化する前の、光は光として入ってきて、音は音として入ってきて、温度は温度として感じられる、それがなんなのかっていうのをきっちり頭の中で構造化する前のただただ刺激を感じている状態のそのまんまを文章に持って来たいなっていう。西田幾多郎さんが言ってる純粋経験とちょっと近いのかな。直接の経験を、この〈男性〉がいま直接的に経験していることをそのまんま文章で表現したいなっていう。握手会×臨終というシーンを音と光と温度でそのまま直接的に表現したいっていう思いで一文ずつ丁寧に書いていたんですけど。だからその辺を感じてほしいですね。ちょっとこれまでの文章とは少し雰囲気が違う。で、その感情というか直接的なその経験に合わせて文章でも改行とかスペースとかを空けてより直接的にわかるよな感じにしようと思って、ここはそれまでの文章とはスペースの開け方が変わってる。少し大胆にスペースを空けて行ってるんですよ。これまでの文章は割と機械的にというか、意味合いが変わるところで一行空けるとか、時間的に幅がある時はそっからさらにもう一行開けるみたいに機械的に振り分けていって、何行あけるのか、改行するのかを決定してたんですけど。ここはもう〈男性〉の感情に合わせてどんどんスペースを空けていっているので。この辺なんて特にそうですよね。是非これは読んでほしい。


で、三角が入りましてここから〈沙友理の夫〉視点にまたなっていってと。

「看護師さんから電話をもらい」ってのはこれ〈藤代さん〉ですよ。〈藤代さん〉再登場ですね。いい役割。

ここは補足説明と言えば補足説明ですね。さっき僕が言った純粋経験とか直接的なとか色と光と温度とか、あるいは“時間”で言うと物理的な時間を超越した、サルトルの『嘔吐』の中に出てくる表現を使えば「完璧な瞬間」「限定的な瞬間」であり、ミヒャエルエンデさんの『モモ』っていう小説の中に出てくるので言えば「星の時間」、全ての物の動きとか運動がぴったり重なって、奇跡的な、運命的な繋がりを持ってブワーッと広がっていってる。広がっていってるって感じですね、物理的に進んでるんじゃなくてブワーッと広がっていっているような、過去も未来も現在もその区別がない、その区別を超越した「完璧な瞬間」「限定的な瞬間」、そういう瞬間なんだっていうのを〈沙友理の夫〉に語ってもらっていると同時に、〈沙友理の夫〉のなかにもそれによって心の変化があったよっていうのを表現しているところですね。

やっぱ〈沙友理の夫〉の内面というか感情もどうしても描きたかった。〈男性〉の心の変化だけじゃなくて〈沙友理の夫〉の変化も描きたかったのでこのシーンは書きましたね。

「心臓が止まったその瞬間に、彼は私の中で永遠に生き続ける友になった」、これを言って欲しかったんですよねどうしても〈沙友理の夫〉に。これを〈沙友理の夫〉が言うことで〈男性〉も〈沙友理の夫〉もどこか救われる、背負っていた十字架をおろせる、そんな素敵な瞬間ですよね。

で、最後のシーンですねここから。時間が一週間ぐらい経って。

旧オフィス近くのコーヒーショップっていうこれも、〈沙友理の夫〉のモデルになっているSHOWROOMの前田裕二さんが『人生の勝算』という本の中で話していることを拝借してトレースしてここに持って来てみました。

そして〈平井くん〉の再登場ですね。最初はこの物語は〈男性〉が死ぬところで終わりなのかなっていうふうに思ってたんですけど、〈平井くん〉というキャラを登場させたじゃないですかチャプター2で。その時になんかこの〈平井くん〉っていうキャラクターもう1回使えるなって思って。これ最後〈沙友理の夫〉が〈平井くん〉に松村沙友理の六十歳でのアイドル再デビューのデビューシングルをプロデュースしてくれってお願いをするシーンで終わらせる方が形として綺麗かなと思って。〈沙友理の夫〉が最後、人と人とのつながり、絆みたいなものを改めて大事だなって思って、だから〈平井くん〉っていう自分のことを先生と慕ってくれているような運命を感じる人に、〈沙友理〉の再デビューシングルをプロデュースしてくれっていうお願いを〈沙友理の夫〉の方からするっていう流れの方が綺麗だなと思って、最後こういうシーンになったんですよ。

で、それをどこでお願いするのがいいのかなと、最初に〈平井くん〉と話ししてたのと同じ懐石料理屋とかなのかなーって思ってたら、そういえば『人生の勝算』で前田さんが朝方までやってる渋谷のスタバで睡魔と格闘しながら仕事してたみたいなこと言ってたなと思って。それを〈沙友理の夫〉にそのまま持ってきて、夢に向かって理想に向かってひた走ってた若い頃に、よく眠気と戦ってひたすら仕事をしてたそのコーヒーショップに再び足を運んで、そこで〈平井くん〉を待つってすごくドラマが出るなと思って最後こういうシーンになりました。

だいぶ〈沙友理の夫〉も心が軽やかになってますね最初に比べると、いっこいっこのセリフが。

「その目にクリエイター特有の眼光を宿らせた」っていいですよね。いいなーって思いながら自分で書きましたね。〈平井くん〉って基本的に優しそうな人当たりのいい子なんだけど、やっぱクリエイターらしいギラギラした一面をしっかり持ってるっていう。

ここから最後〈沙友理の夫〉の思いを語って、「それはきっと彼女からきらめくステージを奪った私の贖罪でもあったんだ」、このセリフは結構大事ですよね。「それは私の贖罪でもあったんだ」っていうのを初めて認めるというか、自分でそれを言うっていう、きっとこれは〈男性〉との出会いがあって、〈男性〉の死があって、そして〈沙友理〉が再デビューしたいと言ってきたみたいな一連のことがあってようやく自分なりに整理がついてちゃんと気づくことができて、この「私の贖罪でもあったんだ」っていう言葉につながったと思うんですよね。

最後のこの「松村沙友理を待っている人がいる。だから彼女はもう一度ステージに立つアイドルとは、そういうものだからね。」、ここも大変でしたね。なんとなくそんな感じのことを言って終わらせるのはイメージしてましたけど、なんかこう終わりにふさわしくちゃんとリズミカルでもあって、物語全体の中で見ても終わり方として綺麗だし、最後の文章だけを見てもリズミカルで綺麗な形で終わってるようにしたかった。でもしっかりぴったり終わらせるんじゃなくって、ちょっとなんか余韻を残すというかふわーっと、さわやかにでも余韻を残して終わらせる方法を、あーでもないこーでもない言いながら細かく文字も修正したり句読点をここに打つか打たないかみたいなのも一個ずつやっていって、最終的にこの1行空けて3文でという形になりましたね。

で、これで物語が終わると。以上が短篇小説集『ふりはる』松村沙友理篇の解説でした。これが第一作目ということで、第二作目、第三作目もどんどん作っていきますので、これからもよろしくお願いします。ぜひこれまで喋ったことも踏まえてもう1回読んでいただいたり、ちょっと読んでみようかなと思っていただけたら幸いです。是非ともよろしくお願いします。


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現在YouTubeで①~④まで公開しているオーディオ・コメンタリー動画ですが、BGMをつけて作り直そうと思っています。「寝落ちラジオ」としてお使いいただけるような動画にするつもりです。

(#僕自身も寝たい時に使おうかな)


▼コチラで作業風景をライブ配信しています
【執筆中のPC画面】https://0000.studio/itagakiblog
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では、また後ほどお会いしましょう。


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ふりはる制作日記

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