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「なんでも屋」という総務部門のあり方が、IT活用の妨げになっている

自分なりに色んな会社さんを見たり、聞いた話を整理してみると、総務部門が本来持つべきロールがズレていると感じています。

多くの場合、「総務部門」となると「売上が発生する以外の諸々の業務を一手に引き受ける」というロールになっていると思われます。営業・生産・技術開発等からは離れて、人事・経理・資産管理・オフィス運営・購買などの雑多な業務をまとめて引き受ける、「なんでも屋」です。

雑多な事務をキチンとこなすのは実は大変なことで、これをやめろとか価値がないと言う気はないのですが、それにどっぷりと浸かることによる弊害が大きく2つあるのではと思っています。痛し痒しです。

1つは、「経営と現場の間にミゾができる」ことです。ほとんどの経営の問題は売上を生み出す業務をしている現場で発生し、テコ入れや改善をすべきなのも、その現場の業務です。その現場と総務部門が同じ業務を共有していないわけですから、どうやっても溝(隙間)が出来てしまいます。

業務系のシステムに期待されるのは「オペレーション・コスト」の削減です。人や物が動いて業務を回すためにオペレーションがありますが、なぜかそのオペレーションについて整理して・デザインできる人・仕組みを知っている人が、いない。部門横断的に立ち回れる部門やチームがないのに、どうやってオペレーション・コストを下げるのかと。単純に計測することも困難だと思います。業務知らないですから。

もう1つは、「総務部門の中の人がなんでも屋になり、目の前のことだけに追われてしまう」こと。特にその傾向が強いのが、情報システム部門です。情報機器が全てネットワークで繋がったり、ソフトウェアで制御できるようになっているので、言い方は悪いですけれど、素人の総務が手を出せる領域ではなくなっていく。事務機械、全部ソフトウェアが入っているから。

こういう状況が加速する一方で、ヘルプデスクの延長線上を10年やっていてもキャリアにはなりません。スキルがあるから出来るのに、雑多な足回りの整備が多いため、「これが専門」と言いにくい。オフィスのインフラ設営のプロ・・・うーん、弱い気がします。

ラグビーで言えば、業務部門がフォワードで総務はバックスというワンチームであるべきなのに、業務部門が15人でラグビーやって総務がスタジアムで観戦しているような感じです。特に、コストが高い・会社が変わらないとぼやいていらっしゃる会社ほど。

庶務と総務を分けて考えよう

雑多な事務と、オペレーション(業務)の改善は、全くベクトルが違う話です。庶務と総務は違います。庶務は単純に雑多な事務作業のことで、総務は会社全体をサポートする仕組みやオペレーションを考えて、組織設計をすること、それが本懐であると考えています。

経営と現場の溝や隙間を継続して埋めるために、現場の声や欲求を拾って、それらを解決する手段を考えて経営に伝えて間を取りもち、 企業の全体像(要はオペレーション設計)を常にイメージする、ビジネスの五種競技プレイヤーの集まりが総務であるべきでしょう。

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ソフトウェア・プロダクトを売っている会社ほど、後者の総合業務統括部門としての色合いが強いと感じています。全てはプロダクトの価値向上・顧客拡大や満足度の向上のために我々がいるっていうカルチャーが根付いている印象を受けました。

総合業務部門としての総務が存在しないから、部門横断的なITプロジェクトがそもそも立ち上がらない。業務を変えたくてもオペレーション設計が経営陣の頭の中で埋もれているから、具現化できない。助産できる体制が整っていない。

経営の仕事はマーケットの選定とポジショニング、総務の仕事は事業を支える組織とオペレーションの設計。こうなっていたら、もっと多くの事業会社がIT活用が出来て、他所が真似したくても出来ない会社になっていたのではと強く感じています。

部門横断型の「小さな成功体験」を作ろう

どうしたら総務が本来の力を取り戻せるか、それはもう成功体験しか無い。部門横断的にオペレーションコストを下げる、小さくても確実な成功体験を積んで、自分達のプレゼンスを強くする。その活動を経営が認め、奨励していく。それしか無いと思います。

自分が一人情シスをやっていたころは、まず発注・入庫/検品に手を付けて、業務改善をしました。その次に受注管理。取り置きや注残などを可視化し、入荷予定も見えているので、いつまでにどれぐらいの商品が入っては出せるのか、また、欠品によって取り逃がした魚はどこにあるのかみたいな改善もやっていくことができました。

IT活用には総務部門の再定義、リノベーションが絶対に必要だと感じています。そのためには、ITプロジェクトを成功させるのが一番。手前味噌になりますが、この資料は自分でも良く出来たと思います。ご高覧くださいませ。

DXの壁を打ち破り、強いオペレーションを手に入れる会社が増えますように。

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