3.随筆「歩道橋」
私は新海誠監督の作品、『君の名は。』が好きだ。
中でも主人公ふたりが大人になり、
歩道橋の上ですれ違うシーンが印象的だった。
自分が歩道橋を使うことが少ないからだろうか、
「歩道橋で人間とすれ違う」
「それはきっと運命の人」
その2つの条件がとても魅力的に思えた。
私が住んでいる東京にはどれだけの歩道橋があるのか。
そしてその歩道橋を生涯どれだけ利用するだろうか。
その中の1回でも、運命の人とすれ違うことは出来るのだろうか。
信号のない大きな道。
沢山歩いて、脚はクタクタで。
階段なんか登ってる余裕も無いくらいの時に、私はきっと遠回りをしてでも信号を探してしまうかもしれない。
1人で渡る歩道橋はまるでステージかのように
人に集中されるような感覚に陥る。
きっと、いや、絶対。誰も見ていないはずなのだが。
そのような居た堪れない違和感が何よりも苦痛でもあつた。
歩道橋で立ち止まっている人がいれば
私が声をかけなければこれから悪いことが起きるんじゃないか。そんな必要のないような心配もしてしまう。
面倒だ。
大きな車が通って歩道橋が揺れるのも、不快で仕方がない。
突然崩落してしまったらどうしよう、なんて考えてしまうから。
これほど歩道橋愛好者よりほど遠い場所にいる私が
『君の名は。』のあのシーンに魅入ったのは、フィクションの世界だからだろう。
夢の中で誰かと入れ替わって。
その入れ替わった人物と、歩道橋の上ですれ違う。
そんなフィクションのような事が私にも起きないだろうか。
歩道橋、使ってみようかな。
そう、思う。
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