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即席そばが年越しそば

 こんな人は結構多いと思う。
 こんなはずではなかった。こんなはずではない年越しもあった。
 暖かい親戚の家で蕎麦屋さんで買った蕎麦を三人で食べ、泊まり、遅い朝からおせちをつつき、ニューイヤー駅伝でも観ながらお雑煮を飲む。そういう平和な世界線もあった。

 なにゆえ、寒い自宅で即席そば(別に悪いというわけではない)を食べ年始を迎える必要があるのか。

 理由はテレビを独占出来ないことにある。

 年末はそれはもう面白い特番がじゃんじゃんやっているわけだ。歌で対決するやつから、お尻を叩くやつ、何かと戦うやつ、かっこいい男の子がダンスするやつ。もう様々だ。個人的にはお尻を叩くやつがずっと見たかった。
 だが、子ども時代教育上良くないからお尻は見せてくれなかったし、好きでもない戦うやつを父の趣味で視聴し、母は歌うやつを見る。

 さて、ある程度大きくなると、実家で年越しの優先度は小さくなり、親戚の家で年越しが多くなる。両親が気を遣う中、親戚のお尻への嫌悪は大きく。とてもじゃないがお尻を観たいなんて言えない。

 今年はどこで歳を迎えるか選択出来た。
 お尻を観ることが出来る。後は寝ないでいれば観ることが出来る。
 まだ安心は出来ない、ちょうど睡魔が……。