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「私の人生を左右した電話」のお話です

38歳から42歳までは健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険等を担当

まさに社会保険の仕事を担当した後、企業年金担当に・・

今も引き続き担当しております

再雇用の今、さすがに役割も変わりましたが23年間「年金」をお仕事としてきている訳です

企業年金も公的年金と同様に大きな変革を重ねてきております

厚生年金基金・確定給付企業年金(DB)・確定拠出年金(DC)

今はDCがどんどん増えてきている状況です

因みにこのDCの仕組みを企業勤務者でなく、個人で加入できる制度

これがiDeCoです。現在はDCをメインに担当・・

今後は、こちらの話題も出していきたいですね


さて・・本日の本題です

私の勤務先でも企業年金制度改革を行い、担当しました

それは40年間続いてきた企業年金制度の清算業務でした

この場合の清算とは「制度を終了する」という事です

「制度の終了」には、二種類あります

一つは、終了時点で企業年金を受給しているOB・OGには支給を継続し、 現役社員は将来の年金資産として積み立てていた額を清算するもの

もう一つは現役社員の清算に加え、OB・OGの将来年金部分も清算するもの

当然ながら、後者の方が遥かにハードルが高い訳です

昨日書きました「公的年金の支給開始年齢の引き上げに伴う経過措置」・・

OB・OGの将来年金部分の清算には経過措置を設けない・・

そのような判断のもと、私達はハードルの高い後者を選択しました

OB・OGの選択肢は二つ(因みに弊社の企業年金は終身でした) 

一時金による清算、もしくは企業年金連合会への資産移換による年金受給

この場合、一時金は一時所得による課税対象、一方で企業年金連合会からの年金額は制度の違いから企業年金と比べて減額となります

全国のOB・OG(三千数百名)から選択(同意)を得るため奔走しました

終身として死ぬまで受給できると思っていた企業年金が「突然なくなる」

生活設計の変更を年金生活の中で強いられる事になった訳です

当然、職場の専用電話は着信の嵐でした

連日の電話対応では、ひたすらご理解を頂くための説明に終始・・


その中の一本のお電話・・一生忘れる事はありません

電話のお相手はOBの奥様からでした

お聞きしますと(OBである)ご主人は入院中との事でした

「○○さん(私の名前)初めてお電話して、またこの様なご相談も失礼かと思いますが、一時金清算と年金選択のどちらが良いのでしょうか?」

ご選択に関しましては「関与しない」との認識で仕事に臨んでおりました

しかし、その時は電話相談に慣れてきたこともあり・・

「年金にされましても制度が変わり額は僅かになってしまいます。一時金ですと税金も発生しますが、この額でしたら非課税です。ご入院中のご主人様に美味しいものを・・」と話してしまいました

奥様は「そうですよね。年金よりもそれが良いですよね」とお答えになりました。その後は社の近況や世間話を15分程、話したでしょうか

そろそろ電話を切ろうかと思った時です

奥様がこのように話されました

「○○さん、色々とありがとうございました」

「選択ですが、やっぱり年金にしようと思います

「額は僅かですが、

     夫が生きていてくれるからこそ受け取れるものですから」


伏してお詫びしたい・・その瞬間は言葉が出ず、そう思っただけでした

ようやく出てきた言葉は

「お気持ちも考えず、軽はずみな発言を申し訳ございませんでした」


セミナーで講師をする時、このお話をする事が多々あります

「年金」は・・重く、そして深い

38歳から年金の世界に入って、このお話は54歳の時でした

講師をしても説明会をしても、何にも分かっていなかった自分

年金への思いが少しだけ本物になった瞬間だったと思います



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