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後出しジャンケンには加担しない方がいい

子供の頃ジャンケンする前に,両手をつかんで捻りながらその手を見ると,相手が出すグーチョキパーがわかると言ってましたが,ほんとは見えていなかったTOMMYです.今回は医療現場での後出しジャンケンについて書きます.

"後医は名医"

よく我々の業界で言われる「後医は名医」という言葉があります.

「患者さんを最初に診た医師(前医)よりも,後から診た医師(後医)の方がより正確な診断・治療ができるため名医に見えてしまう」

ということ表した言葉です.

最初に診療に当たる"前医"は患者さんの情報が少ない分,問診や診察,血液検査,画像検査をしながら診断に迫ったり,時には緊急性が高く診断の前に治療に踏み込まないといけない場面があったりします.


後から考えたら「ここはこうしといたら良かった」という状況もありますが,その時その時にはベストを尽くしています.

一方で後から診る"後医"は,画像や血液検査などデータがあり,こうしたらうまくいかなかったみたいな情報も含めてかなり揃っているため,後出しジャンケンでなんとでも言えます.

よく研修医の頃に上級医から聞いたのが,

「患者さんがこんな状態になるまで気づかなかったのか」とか「なんでこんなに診断が遅れたの?どう考えてもすぐわかるやん」

みたいな類の"前医"批判です.かく言う私自身も同じような批判をしていた頃があり,恥ずかしい限りではあります.

もちろん前医との答え合わせというか,情報を共有するために「紹介いただいた患者さんの診断は〇〇でした」とフィードバックを行うのは大事だと思います.

前医に敬意を評する

前医は後医に比べると,判断材料やその差し迫った状況などから,圧倒的に不利な立場にあります.

さらに,大規模病院から診療所まで病院やクリニックの規模の違いにより,できる検査や処置に違いがあります.

その辺りも十分に踏まえた上で,後医は前医に敬意を評するのが良いと考えます.自分が後医になった場合は,前医の置かれた状況をなるべく想像するようにしています.

そう考えると自分への戒めもこめて言いますが,前医を無条件に非難する後医は,相手の立場を思いやれず,自分が上だというポジショニングを取ろうとするヤブ医者に違いありません.

ポジションを取ったところで,優越感に浸れるだけで目の前の患者さんがよくなることは決してありません.

ここまで書くと,どういう姿勢が正しいのかというと,

「前医を讃えることができる後医が名医」

ということになるでしょうか.後出しジャンケンな言い方になるかもしれませんが,前医も後医もお互いに協力しながら,患者さんに向き合える優しい医療界になればと思っています.

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