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原材料の考え方(卵編)

卵を考えるとき、最初は臭みが少ないものや甘味があるものなど味に関することを考えます。しかし様々な原材料にふれていく過程で、卵も鶏から頂いているという意識を持つことの重要性を考えさせられ、飼育環境についても考えなければという思いが生まれました。

様々な卵をためす

卵も味の特徴が様々なので、とりあえずはお店で使っていた御養卵など臭みの少ないものや卵黄の味の濃いものを試していきます。名古屋コーチン、ヨード卵、奥久慈卵、地養卵などのブランド卵も試しました。どの卵も味は美味しいものでしたが、味の濃いもの=優れているとは限りません。ものを作るうえではやはりバランスが重要になってくるのです。
そういったことも考慮し、しばらくの間はエグロワイヤルという卵を使っていました。シェフやパティシエの声から生まれたというだけあって、臭みが抑えられており、黄身の色もオレンジ系ではなく鮮やかな黄色をしています。抹茶が緑色ということもあり、オレンジ系の黄身よりも色のでかたが良いなというのもポイントでした。
より良い卵がないかと高級スーパーなどもまわって、あまり出回っていない卵も探しました。そういうスーパーにはやはり高い卵が置いてあります。その中でも1段階価格が上がるものに付いてる文言がありました。「平飼い」「放し飼い」「放牧」と。こういった卵を目にしたことが飼育方法にも着眼していくきっかけになります。業務用で何百個という卵を扱っているときにはそういったことを考えていませんでした。

鶏の飼育環境を考える

採卵鶏の多くはバタリーケージと呼ばれる小さな鳥かごの中で、大量に飼育して卵をたくさんとるという効率重視の飼育方法です。そして平飼いという屋内の地面に放し飼いにするもの、放牧のように屋外にも出して育てているところもあります。
こういった飼育環境を調べていくとやはりアニマルウェルフェアという概念にたどり着くことになります。ヨーロッパではバタリーケージでの飼育は禁止になっています。鶏の飼育環境にもしっかりと配慮して育てることが義務付けられています。
しかし、日本はまだまだそういった面では遅れているのかもしれません。もちろん土地の広さ、消費量、価格など様々な問題があると思います。
スターバックスは2020年までに、日本の企業としてはじめてゲージ飼育の卵の使用を廃止を発表しました。今後はこういった流れも日本の中でもさらに起きていくと思います。
価格を安く出来るとはいえ、生きる環境を無視するようなことは良いこととは言えません。少しでも良い環境へと出来ないか、それを考えていくことが大事なことだと思います。

飼育の環境に配慮された卵

飼育環境まで考えている卵を探しはじめて、一番最初にたどり着いたのが黒富士農場の放牧卵、リアルオーガニック卵でした。こだわりとして打ち出している「豊かな自然環境」「放牧」「天然湧水」。鶏への愛情が感じられるとても良い農場だと思います。卵も味わいの優しさとコクのバランスがとても良かったと思います。リアルオーガニック卵のほうにいたってはJAS認証まで取得しているこだわりで素晴らしいと思います。
さらに広大な土地で飼育している卵を見つけました。いちえん農場の土佐ジローの卵です。ここでは5万平方mの広大な敷地に1000羽という広々とした環境で飼育されています。限りなく自然に近い状態での飼育を心がけているそうです。土佐ジローの卵は小さいですが、とても旨味の強い美味しい卵です。ここでこの卵にであったことで、地鶏について調べていくことになります。

地鶏の卵を中心に試す

土佐ジローの卵の味が良かったので、地鶏系を中心にさらに調べていくことにしました。土佐ジローも飼育方法や飼育密度に定義があるのですが、調べてみると地鶏全般にもありました。土佐ジローは通常の地鶏よりもさらに厳しい基準がありますが、どちらも平飼いで1㎡あたりの鶏の数が決められています。こういった味、環境ともに納得出来ることがあったので地鶏の卵も色々と試しました。
にいがた地鶏、岡崎おうはん、比内地鶏、名古屋コーチン、南米の地鶏アローカナなどです。にいがた地鶏のコクとまろやかな味わいはかなり美味しかったと思います。

水芭蕉卵との出会い

これまで試した卵はどれも美味しい卵で素晴らしいものでした。しかし、抹茶テリーヌを最大限に生かしてくれる卵とはなんなのか。これがとても難しいところでした。
他の原材料が決まってくるところで感じていたのは、食べたときに体にスッと染み込んできてくれるような感覚です。この感覚をもてる卵を探そう、そう思いました。さらに欲をいえば黄身の色も白に近いと良いなと思っていました。そしてずっとリサーチを続けて見つけたのが、北海道ファームの水芭蕉卵です。
広々とした空間にのびのびしている鶏たち、さらに飼料には農場長の栗原さんが自社生産しているお米を中心にあげているために黄身の色が白いという理想の卵。一般的に鶏にはとうもろこしをあげているところが多いですが、どうしてもほとんどが輸入品になってしまいます。
自社で生産しているお米以外も北海道産のもので構成されている、安心安全な飼料というのも素晴らしい点だと思います。
さっそく取り寄せて食べてみると、全く臭みはなく、コクと甘味、後味のさっぱり感はまさに体にスッと入ってくるような卵でした。 
テリーヌショコラにしてみてもとても合います。抹茶を味、色の面でしっかりとサポートして、洋菓子としてのクオリティも引き上げてくれます。こんなにもぴったり合う卵に出会えるとは思ってもみませんでした。
鶏もボリスブラウン、ホシノブラック、黒翡翠鶏がいます。黒翡翠鶏は産卵率が低く、珍しい青い卵を生む貴重な種類です。テリーヌには味のバランスを考えて卵を使い分けるようにしています。
パッケージには日本一幸せな卵とあります。
自信をもってそう言える、そんな素晴らしい卵を使えることに感謝しております。

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