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文楽と煎茶 -ふたつの大坂文化から考える- その1(如翺)

「文楽はおはぎである」
と文楽太夫の竹本織太夫師匠は言います。

先日、2020年7月4日、大阪上町台地を学び・語り・開くチーム・
オープン台地実行委員会主催のオンライントークイベント
『文楽に行こう!煎茶に集うサロンを知ろう!』が開催されました。
トークは、文楽の公演はもちろんのこと、様々な舞台やテレビ番組
とくにNHK「にほんごであそぼ」でおなじみの
六代目竹本織太夫師匠をゲストに、
私の煎茶の話を絡めながら進めさせていただきました。

「文楽はおはぎである」とは、
そのときに織太夫師匠がおっしゃった言葉です。

このオンライントークイベントは、
大阪日日新聞にも掲載していただきましたし、
また、参加者の方々に多くのご感想をいただきました。
それらを拝読していて、
本当にみなさまに有意義な学びのお時間を過ごしていただいたことが伝わってきて、大変うれしい次第でした。またご感想から多くを学ばせていただきました。
拝読する中で、トーク中にもっと強調しておかなくてはならなかったと反省する部分がありますので、今回はそのあたりのことを書かせていただこうと思います。

それが、織太夫師匠が「文楽はおはぎである」とおっしゃったところから始まったくだりです。

実はこの言葉は織太夫師匠がこのときはじめて使われた言葉ではなく、
ご自身の著書『ビジネスパーソンのための文楽のすゝめ』実業之日本社2019
でおっしゃっている言葉です。詳しくはぜひお読みください。
https://www.j-n.co.jp/books/?goods_code=978-4-408-53746-7

大方、おはぎにはこれといった定型はなく、
つぶあんもあり、こしあんもあり、きなこもあるし、青のりもある、
大きさだって様々、それだけにどこにでもある親しみやすい日本のもの、
といった意味でおっしゃっています。

さらに織太夫師匠は言います、
「文楽はいつの間にか『古典芸能』『伝統芸能』として位置づけられ、
さらには『ユネスコ無形文化遺産』という指定を受け、
とても高尚な存在に仕立て上げられてしまい、
本来、おはぎのようにコンビニにでもあるものなのに、手の届かないところに置かれてしまった、
いわば、今の文楽の状態は『神棚に祭られたおはぎ』だ」と。

今の師匠ご自身の御役割は、
「神棚のおはぎを、ちゃぶ台に下ろすこと」
「ちゃぶ台に下ろせばだれでも気軽に食べられるから」
とおっしゃいます。

本当にその通りだと思います。

文楽という庶民芸能を、
「伝統を保存する」という文脈で語り、保存するために権威付けて来た、
それが国立劇場で文楽公演を行うようになってから起きてしまったことでしょう、
しかしそれは、文楽を民間企業による興行として成立させられなくなった歴史から考えると、切らなければならない舵だったのです。

その矛盾と問題。
神棚に置くことで、踏みつぶされたり捨てられたりすることから守った反面、存在はするけれど手の届かないものになってしまった、という矛盾。
その矛盾を抱えながら、おはぎをちゃぶ台に下ろすことに、
凄まじいパワーと熱量を発される織太夫師匠に、いつも私は心打たれているわけなのです。

この話「神棚のおはぎ」を師匠がされたとき、
私は煎茶の問題に引き寄せて話題を展開させました。

「師匠は今、師匠ご自身が捉える文楽の課題は、
いかに神棚といういわば『上』から、ちゃぶ台といういわば『下』へ持ってくるか、つまり『上下運動』が必要である、と言われた」
「それに対して私が思う煎茶の課題は、『平行移動』させられるかどうかだ」と私は言いました。

『平行移動』。

今回の文章は、ここで一度止めさせていただこうと思います。
煎茶の課題『平行移動』の話から、次回は始めたいと思います。
これは、茶の湯(茶道)と煎茶の違いも含んでいますし、
「床の間」という空間についても考えなければいけませんし、
慌てずゆっくり書こうと思います。

昨日Twitterでつぶやいてから、
驚くほど反応をいただいている(本当に今この瞬間もリツイート・いいねをいただき続けている)問題、
「美術鑑賞」の問題にも踏み込まなくてはいけません。

できるだけ間を置かず、次回書こうと思っております。
ぜひ次回も引き続きお読みいただければと存じおります。

どうぞ引き続きよろしくお願い致します。

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「煎茶」という茶の世界。それは自らたのしむ「自娯(じご)」の世界、文芸と芸術に集う「文人(ぶんじん)」たちの世界です。令和というこの時代に、文芸や芸術を通して、過去の人たちの知の集積と、現代の私たちと、未来世界とを繋げるような「煎茶」文化を提案していければと思っています。