【小説】チャシーン(79枚)
パンモゴッソそうだ生まれてきたときのスプーンの色で人生は決まる君のスプーンの色はどうだった金銀銅土わたしたちにはスプーンなんてなかったなそれでいい生きていくために必要なのは生きていくことだけ
線の話をしようかわたしたちのあいだに引かれてるそれだ分断するすべての線は差別しない川わたしの町には川があってそれがふたつをわけてる右岸と左岸男と女日本人と韓国人川がわかつわたしの島は竹島と呼ばれだれもそこをドクトと呼んだりはしない我が領土なんてどこにもない
つまり竹島にくわえ十一の島があってそれぞれ御幣島中島東中島西中島西島百島出来島加島柴島歌島姫島と名前がついてる島と島としまはぜんぶ繋がっていて陸でまわりを二本の(日本の)川がかこむかこまれた十一の島はまるで流されたみたいにあってないようなもの合ってないようにわたしたちは暮らしてるひとつの
あの島には韓国人が住んでてその島には南米人が住んでてこの島には人が住んでてどの島にはにほんじん本当の(ほんとうの?)が暮らしてる十一のくらしくらしくらししししししししぬしぬしぬよく死ぬこの島はびょうきとかそれ以外で
生きるということについて考えてないかんがえたことのないわたし(たち)はすぐにしようとするたりないものを足りないもので埋めるみたいに
자신がわたしに言うんだ
(サッカーシヨウヨ)
なんのために?
島にはちょうど十一のサッカーチームがある竹島ザファッカー御幣島ザファッカー中島ザファッカー東中島ザファッカー西中島ザファッカー西島ザファッカー百島ザファッカー出来島ザファッカー加島ザファッカー柴島ザファッカー歌島ザファッカー姫島ザファッカーと자신は呼んでておもしろいほんとうの名前はしらない知らなくていいわたしたちはふたりでサッカーしかしてない
○
蹴飛ばしながら歩いたコンクリで固められた川沿いは堤にむかい傾斜していてパスをするとちゃんと返してくれるヒールリフトクライフターンマルセイユルーレットぜんぶできるけどわたしはパスがいちばん好きいつもそこには誰かがいてたいていは자신なのだが血のつながったという表象の(現象の)を通じて与えるべき返してくれるべき誰かをみてる(きっと満てる)空はたいてい青い(雨はふらない)ガラスみたいなそらはいつだってすかしてるわたしは竹島の空がすき以外もきらいじゃないといえば嘘をつくロングフィード
だんだんとわたしのものじゃない音がちかづいてきたこの島ではサッカーをする子どもやこどもたちがすごく多いしろうとはちゃんとグラウンドでやるのでこんな海沿い(わたしたちは川を海と呼びたくなるときが時々あるたとえば生理のふつかめとか)でサッカーしてるのは자신だけのおとが近づいてきたぽおんぽおんとおしゃべりにリフティングしてる彼女はわたしよりドリブルがうまいマラドーナより上手いかもしれないわたしはたぶんジーコよりパスがうまいわたしたちはシュート以外のすべてについて誰よりもひいでてるのはどこにもゴールなんてなかったから
(スキナコトバハゴールデス)
さけんでボールをたかく飛ばしたトゥーでつきぬけるようにバックスピンのかかったボールはあくびみたいに伸びるしおかぜをあびるひかりがはじけてななめいろに拡散するたかくない堤防をこえれば落ちたおとはしなかったていねいに重力を無視したたかさとそくど割れば時間だってことはならってない
자신の声がひびくついでボールをたたくおとわたしは勢いをつけ婉曲したいろのない堤防をかけあがる学校で買った先端のまっかな上履きは底のおやゆびのしたのおでこが剥げてるからやわらかくまがったものをかんでくれる
堤防のうえにたつとわらった자신はわたしによく似てるらしい鏡なんてみないからみんなに言われて知ってるかわいいと思うのは似てるからなのかどっちなんだろう自分がかわいいひとのことをなんて呼ぶのかしらないわたしは韓国語をならってないからどっちでもない言葉ではなす
자신がボールを蹴飛ばしてきたいいかんじのバナナ回転バックステップジャンプで捉えてふくらはぎのうらがわでいきおいをころすすぐに蹴り返すわたしはパスをもらうよりわたすほうが好きだ
자신はかるがるとボールを運びながら船のうえにのったちいさな船はもっとちいさな身体を受け止める
川だとちゅうには神さまがいて石のつよそうな鳥居がかたむいてるをくぐればまずしい漁港があるまずしそうな小船がたくさんもやいで繋がれてるこの漁港がつまりわたしたちのフィールド
すぐにわたしは漁港にむかい駆け下りて船に飛び乗った자신のいるとなりのふねだ漢字はわからないけどちがうかんじの船ゆれるおおきいとちいさいが向かい合いわたしは待つ자신 がボールを足首でかまをかけるようにしてうしろむきに飛ぶわたしから見ればボールが死角になるわけだうまいでもわたしだってうまい
船を揺らしながらわたしたちはボールを奪いあったこれがわたしたちのサッカーだったザファッカーじゃないレイプじゃないほんとうのたわむれてこうげきてきにボールをうばいあうことそれだけの
勝ちはない負けもないとにかく자신はボールを渡さないまま船を四つわたったもやいの弱い船があってゆれてそんなの자신は平気なんだけどいきつぎみたいにふとボールが足元を離れたすきをついてうばったのあとはわたしがキープしたまま船を三つこえたあたりで奪われて今度は자신がいつつだいたい자신のほうが多い身体の大きさは同じぐらいでテクニックも差がないのにちがうみたいだということをたしかめるみたいにとびかたを
しらない身体がますます無知になったころあきらめた岸壁に戻りねころがりふたつくさい息をととのえたあきらめてるのに揺れてるきがするのはたいへんだと思うたぶんそういうふうにしてよいんで生きてると思うことがサッカーだったりしてたいへんどうでもよいんですとすうすうはくはく
どちらからともなく背中をあわせたあつかった자신も同じように思ってるんだろうだとしたらどちらがあついんだろう比べるためのやりかたをサッカー以外のほうほうでどこかにあるとすればだれもそんなことをしてない
○
オモニハウス馬鹿みたいな名前だそんな馬鹿みたいなところでわたしと자신は暮らしてるといってもかしこく生きるなんてごめんなのでわるくなく馬鹿のれんしゅうをする
あたりまえにオモニがいてもちろん血がつながってはいないのだがそんなことどうでもよさそうながなるような声でオモニはわたしを呼ぶときどき韓国語もまじってそうでなくても分からないことが多いとにかくわたしは自分のなまえが嫌いなので(そうだろう)きらいなもののようにながいカウンターを奥まですすむカウンターには男男男男男くさい男くさい男もっとくさい男酒だ(ら)けのにおいそれがオモニハウスの日常たぶんみんなオモニを求めてるんだろうっていつか자신が言ってたなわたしはいってないのでしらんぷりしてうごく石像みたいにどっしりした冷蔵庫のなかから자신がうごかない水筒をとるなかみは麦茶だったりお酒だったりときによるあたりもはずれもあるがそのときは透明だったのであたりにした人生みたいに(これは比喩だ)急なかいだんを자신がさきにあがったわたしがうしろを続いたくつしたをはいてない자신の足はあんぜんで好きだわたしは자신のそういうところが好きだとたしかめてつづく水筒はわれてるのかこわれてるのか水滴がおちたつめたいふめばあかるいこんなふうにサッカーボールも蹴れたらいいのにとむりそうな理想のことを思う
理想のことならいつも思ってるそれは夢じゃない目標でもない叶わないし叶えないし叶ってほしくもないそれはそこにあるものそこというのはオモニハウスの二階じゃないわたしと자신にあてがわれた神さまのてのひらみたいにせまい畳二枚のことじゃないそうじゃなくてよかったのそうのあたりにあるだって見たもん生まれるまえにさスプーンは食事に使われたりしないたとえば差別につかわれるだけだ国とかいうすごく大きなものを誰も見たことがない
ねた朝だからあさねだわたしと자신はよく眠るねることとサッカー以外することがない日々はゴーズオンみたいにすぎていく願いもないのにゆめをみたワールドカップもうすぐあるんだっけきいてみたけど자신はぐうぐう寝ててこたえてくれないのも夢かもしれない韓国はワールドカップに出てまだ勝ったことがないわたしたちが出て優勝させたいなんて勘違いをしたりしないのはわたしたちは女だから分断されてる川でなく日本はワールドカップに出たこともないらしいよくしらないけどドーハの悲劇はオモニハウスのカウンターでみんなで爆笑しながら見たからそういうことだわらったけど(わかったけど)ふいにわたしたちが日本代表として出ることもできるんだろうかなんてれいせいになるそれがしいていえば夢らしい夢かもしれない川をこえる女だとか韓国人だとかのサッカーは信じてもいない神さまが見てる
○
オモニがたずねた朝でも昼でもないじかんだったオモニハウスにはなんにんかオモニがいて(オモニハウスなんだからそうだろう)そのなかでいちばんふとっちょだったぶっとい指のちぢれ毛のはえたで三枚の写真を指さしていたそこには三人の男がうつっていたやけに流暢な日本語だったからでなくいいたいことはわかった
ない話ではないというかあたりまえだろう生かしてもらってるなら働かなくちゃいけないほかになにもできない女のはたらきというのはいつの時代でもかわってない平和と戦争を分ける川というものはない平和の少女像というものに意味はないがわたしはあの像がやけに好きででも姫島にも歌島にも竹島にすらなかったから悲しかったザファッカー
さんにんの男はみごとにチビデブハゲだったと思うことも差別になるんだろうか女が男を差別できるんだろうか韓国人が日本人を差別できるんだろうかわからないとにかくその三人の男はどうやら韓国人らしいオモニハウスには韓国人しかこないしオモニが日本人相手の仕事(しごと?)なんてさせるはずもないわたしたちは生まれつき処女だったがそこに意味はなく無意味をうしなうその瞬間までできるだけ永いはなしをしたい
からではなくなんとなく歩いためずらしくひとりで歩いた자신にはこの話は(まだ)したくなかったすごい川は広くてやっぱり海みたいで砂浜みたいなところで子どもたちが野球してるきっと日本のやきゅうはよくわからないけど日本のものと韓国のものとそんなに違うんだろうかとおもってしまうのは分からないからわからなければ分断なんてない川とは理解だサッカーはすこしわかる日本のサッカーと韓国のサッカーはちがう韓国のほうがスタミナがあるしガツガツしてるし単純にうまいアンジョンファンが好きだったでも三浦カズだって好きという気持ちはわけないが橋をかけるには川は遠すぎる日本と韓国をつなぐ橋があればいいなとは思うけれどおおきいものが好きだからであってもなにも変わらないしかえ(り)たいとも思わない韓国にかえっても差別されるわたしたちはつまり竹島ザファッカー
こんなにひろい河川敷なのにサッカーをしてる子はいなかった日本では野球ばかりはやってるちょっとまえにJリーグができてすこしだけサッカーをするへたくそがふえたJリーグチップスを拾ったことがあるいらなかったんだろうカズじゃないほうの三浦だったしけてておいしくなかった자신はおいしいといったでも三浦のカードはいらないと言ったカズでも欲しくなかっただろう中田氏が好きな女の子はみんなキラーパスを待つのが好きだ
なつかしい音がしたそれは자신の音ともわたしの音ともちがったけれどたぶん同じぐらいうまかった橋のしただったちいさな女の子がリフティングをしていたやわらかいボールタッチでワンバウンドしたものをボレーで蹴りつける無回転はゆれながら岸壁のコンクリをたたいたしろい煙がきれいでわたしはついこころのそとで拍手をした
きづいて彼女がわたしを見たわたしとか자신と同じぐらいの背丈でいってれば中学生ぐらいかもしれないおとなびた無表情に親近感がもてたにてた話しかけなかったのは彼女は韓国人かもしれないと思ったからでわたしは韓国語がヨボセヨとパンモゴッソしかつかえないしいわなくてもよかった岸壁のそばを転がるサッカーボールを利き足の右でつかまえた
彼女はなにかを言ったたぶん韓国語だったやはり韓国人なんだろうわたしはサランヘすらわからないのでなにを言ってるか分からなかったかわりドリブルで抜いてやろうと思ったわたしは자신ほどはドリブルがうまくないけど同年代の女子にはぜったい負けない自信があった
右左右左で足をまたぎながらすばやく彼女へちかづく左右どちらに抜くかわからないごく基礎的なフェイントだ身体能力の差で抜くタイプのこえていればかんたんに抜けるはずだった右を選択したがわたしの足元にボールはなかったふりむいて彼女が止めたのだとわかったふりむかずそのまま彼女は走っていった河川敷をまっすぐにわたしとか자신と同じぐらいはやかった足が球をしってる
左ならどうだっただろうかと思いたぶん無理だっただろうなと思うどっちとかそういうレベルじゃなかったかんぜんに上をいかれた上で抜いていれば可能性があったかもしれないホイップショットよりも名前をきいておけばよかった자신はわたしより韓国語がしゃべれるのでこんど連れてこよう
かえって자신に彼女のはなしをするとずっと泣いていて話にならなかった仕方なくあきらめてそとをみるわたしたちの部屋に窓はないけれど天井がわたしたちの股みたくひらくむこうには町がみえたきょうそこは川ではなく海だとおもったしょっぱい黒色のぜんぶ吸い込みそうに分断されてない町はかがやいていたわたしたちはかがやいてないそれでいいと思っていたのに彼女のにおいを思い出すとたかぶるどうやったら抜けるだろうかと男みたいにかんがえてるいくつかのあるべき選択肢右か左か中か外かたぶんそのどれでもない心のつまり名前をきいておけばよかった
○
買い物にいけとオモニにいわれたいちばん痩せてる鳥(みたいな)オモニは口調がとりのようにあらく韓国語まじりなのでわたしは好きじゃないのでしたがうことにするだいたいいつも자신といっしょにいるああいうことがあったので자신といっしょにいたかったが買い物だけはひとりでいく責任みたいなものなのかもしれないわたしがもし彼女ならばというじじつは世界でゆいいつ疑いようがなく責任より重いとかない言葉をつかって자신をまもる
買い物にいくには橋をこえるというか買い物をするときだけ橋をこえる川はふたつあるから(たいていの分断された町ではそうだろう)どちらにいくか決めないといけないかたほうをこえるとアマにいくがわたしは苦手だったアマは韓国語であいまいという意味だからあいまいじゃないほうに行くだってたしかなものはかんたんに裏切れるうらぎるときだけわたしは橋をわたりたしかさをうらぎる
むずかしいことじゃない買い物はお金をつかわずにできるということを知ってる世のなかにはそういうむずかしくないやり方がたくさんあって学校にいってないわたしたちはそういうのをよく知ってるできるだけ大きなスーパーマーケットがいい死角がおおい資本主義の間隙をついてお金をつかわずに買う具体的なやりかたとしてはオモニから受け取ったリュックサックにたのまれたものを詰めてかえるそれだけふつうに出ればいいそれで意外といけるむずかしくかんがえなければたいていのことは意外といける
リュックサックに牛乳とか野菜とか肉とか魚とか憂鬱とかを詰めていったリュックサックはおおきいけど米ははいらなかったのであきらめた怒られるかもしれないけどやさしいオモニもいるのでだいじょうぶだろう仕方ないと言ってくれるいい言葉だやさしいしやさしさとは仕方ないのことだと思うといいながら仕方なく買い物をすすめていったやさしい
おとがしてわかったわからないことがあるのは負けた記憶だったあのときのおとで追いかけると棚のむこうにいたボールはもってなかった(もつはずがない)のにあのおとがしてわかったわたしをわたしで抜いたあの子だったかくにんするあのときはみえなかったしろい肌とふるい服おなじだ目がさめるように(比喩)あおい半ズボンの足が目がさめるように(比喩じゃない)すごいってしってるくつしたははいてないわたしより汚れた靴がにくい韓国人がなんだかわたしより貧しそうでかわいそうをこえた優越感がさびしかった自分のなかにじぶんがいないかんかくで名前のしらない(しりたい)その子をみた
うごきでわかったわたしもよくする動きだったよりはやいサッカーの動きだすぐにわかる盗んだんだ買い物じゃないわたしがしててもなんでもなかったのに彼女がするのはちがう
誰が叫んだんだろう日本語だったわたしじゃないのに叫びたかったたぶん日本語のわからない彼女なのににげた低脂肪乳が天国がこわれるみたいに落ちていくのをスローのリプレイ検証でみてわたしは彼女の名前をミルクにきめた審判は神さまです
おいかけた誰よりもはやいのに彼女よりもはやい彼女は誰よりも足がはやかったけどわたしは彼女でも彼女の彼女でもなかった誰でもないわたしだけが追いついたすごく橋のそばでわたしは彼女の手首をつかんだ
ないてるみたいに汗だくで手首はつめたかったやわらかいボールではないのにぎってどうしたらいいんだろう手をつかえないわたしはわらった彼女はおどろいたようなあたりまえの顔でわたしをにらんだ誰とか訊きたいかんじだった
(チャシーン)
と名乗らないまま呼ばれた振り返ると橋のむこうから자신が歩いてきた他人みたいにわたしの名前をよぶひさしぶりにわたしの名前がよばれちゃんとおもいだす
자신の足元にはサッカーボールがあったわたしたちのを奪ってミルクにわたしたミルクはつまさきでボールをたかくあげやわらかい胸でトラップしたこんな技術を盗むのに使うのはちがうと思うわたしはいいわたしよりもすごいサッカーは生きるためにあるんだっておしえたい
やめてわたしたちは河原にアンポンタンのさんならびで座りあんぽんたんな話をした目のまえではアンジョンファンがサッカーをしてたわけがないはなしはわからない韓国語で分かりたかったのではんぶんで聴いたまんなかにミルク右に자신左にわたしそうわたしは右利きで자신は左利きで足はミルクは両方がつかえるサッカーの分断されてないがすごいと思う
자신が教えてくれたミルクは日本人らしいびっくりはしたけどいいことだと思った日本人にいいことだと思うのは初めてだった韓国語をしゃべる日本人をいいことというかすごいこと
話すときわたしたちは足をつかうのにそうじゃないものでサッカーしてるみたいでよかったよい生きものだったあんまりいろんなプレイをしなくてよかったドリブルのみたいにたのしいサッカーはたのしい生きることは
またサッカーしようよとかわたしは言わなくて자신は聴かなくてミルクは見なかったことにしたまた会えるってしってるだってわたしたちにゴールはないかぎりつづく
いつか三人でくらしたりしてやっちゃったりして子どもは十一人欲しいねとか話したりして
○
そういうことすると怒られるのにその日はだいじょうぶだったオモニハウスにもどるとみんなサッカーをみてた韓国のじゃなかったここは日本だから日本の試合をしてるもうすぐワールドカップに出られるか決まるらしいはじめての日本はワールドカップに出たことがないよわいけどみくだしたりしないつよいから日本の選手のなかでカズだけはけっこう好きカズが韓国人だったらよかったのにと思うときのわたしはまたミルクとつながってる
かえってカズダンスみたいにフェイントをした자신がやっとわらったうすい布団にくるまってねたわたしたちはそういうふうに生まれてきた
○
(試合は1―0の日本リードで折り返し。後半へつづく)
○
なかなかむずかしい日々はすぎていくミルクとまた会えると思ってたのにその日はなかなかこなかったあえた河原にいってもいない漁港でサッカーしててももちろんいないわたしはサッカーがうまくなって자신はもっとうまくなった船のうえをとぶキックトラップファウルのやりかたを覚えたかいものかわれ男をしってわすれたころ痛みとともにあった
漁港にいくとサッカーボールが落ちていたのだったわたしたちのじゃなかったどぎついピンクの蹴とばすとしたあとのおなかぐらい重かったいまのわたしには動かせない
「なにしてんの?」
声がして자신のじゃなかったふりかえると肌のあさぐろい女の子がたってた
おおいんだあの島あたりには南の米の子が彼女もそうかなという顔立ち痩せててでも背が高い大人びてた高校生かもっと大人かもしれない舌のさきがすうっとした
「……チャシーン?」
その子の声が色っぽくてはずかしくなったわたしをし(っ)てるんだろうこの子はどうして?
「いや、だって名前かいてあるやん、それ、名前やろ?」
西日本語でいった指さしたのはわたしの左手首で入れ墨のハングルが名前だってことをいましったそうされたみたいだった焼きついて
「チャシーン、サッカーしてはるん?」
わたしの足元をみたボールがあったけどわたしのじゃないから首をよこに振ってみたなぜかたてみたいになってフェイントでよくなかったよことたてを交えることを矛盾ともいうらしいよこは全てのたてを壊せるけどたては全てのよこによって壊されないメタファー
「いや、どっちよ」
わらうとえくぼができた南の米の子もえくぼができるというのがはっけんだった見つけたみたいにしった彼女はまだみつけてないそうしたいと思った
「うち、ディゼーブル、いう名前やねん」
ほほえんでわたしはうなずくきいたことのない名前だった南米の選手はしらないわけじゃないもちろんペレとかマラドーナとかプラティニとか最近でいえばロマーリオとかバティストゥータなんかもかっこいいけどよく考えたら女の子の名前はしらないサッカーしないからだということに気づいてしにたい
「チャシーン、なんもしてへんのやったら、うちにおいでよ」
漁港をはなれるのがもったいないサッカーをし(ら)ないんだろうディゼーブルはどうして?
地球よりおもいボールがおきざりになるさびしかったわたしはそうなりたくないたすけてとボールは声にだせないから
○
出来島のザファッカーの南にでかい団地があるでかい団地はすきだ生活してるかんじがするにおう鉄骨むきだしのおみせ飲み物や飲み物がたくさんある買い物しにくそうとすぐ考えるわたしはくそと思ってもないのに思うコンビニがあって安心した入らないかわりはいらなくてもいい
たかい団地だったのにエレベーターがないディゼーブルの家もたかいところにある空でくらしてる神さまにあうみたいに階段をあがる心臓がたかくなるとディゼーブルの足どりはゆっくりで心配だった痩せてるのにおなかが大きいひっひっふう息をするみたいにゆっくりのぼるひっひっふう息もできないサッカーをしてないから
十一階だったのを忘れてもよくてここにはまた来るような気がしたきてもよかった十一の島が見渡せる十一人のザファッカーをいろどる煙突の先っぽは空を吸い込んだみたいにあおくしろい雲にかすむとうめいしらないからまたきてもいい
ドアのさびついた鍵はかかってなくてそりゃそうだカテナチオ抜くのは興奮するだろうよりもマルディーニ(おかあさん?)とかいたらいやだなと思ったけどそうじゃないんだろうパンモゴッソもいわずにディゼーブルは家にはいりほっとした
玄関をみればわかるせい活とか性からはじまるすべての言葉がころがってるのにここには学せい靴がないすてたみたいになにをだろう買い物したみたいなやせたゴム製のくつをディゼーブルははだかみたいに脱いで転がしたとなりにそっとわたしのくつを並べる買い物するみたいにとよそおう
いい匂いのするいい部屋だったはいるとすぐにひらけてる窓がいちめんを埋めてひかりにちゃいろの床が土みたく焦げるしずかな試合のまえのグラウンドみたいな場所がディゼーブルのい場所だった
「てきとうに座ってて。コーヒーでええ?」
いってディゼーブルは冷蔵庫をあけたちっこいピンク色のものがない部屋だったせい然としたはじっこにブラウン管のテレビがあるだけせまいキッチンせわしない電気コンロのうえのやかんたおすとコポコポとくろいおとがコップをみたしわたしだけてきとうに座る場所がみつからずに壁と背中をくっつけたつめたいむかいの壁にはTシャツと半ズボンと不服がぶらさがってるほかの服はどこにあるんだろう本もない文化もないお金がない以外のすべてがここでは執着みたいに不足してる
ディゼーブルのくろい足がたたいてきてわたしのとなりに座るなりコップを床においたそんなかんじの仕草だった手をのばしてチャンネルを手にとり押すニュースとかアニメとかぜんぶスキップしていきついた先はサッカーの試合だったのでびっくりした
のどが乾いたからコップをもちあげてコーヒーをのんだふだんあまり飲まない苦いしオモニは入れてくれないからでもそのコーヒーは飲んだことがないぐらいおいしかった(当たり前だのんだことがないんだから)きれいな横顔をいしきしたけど差別とおもってとりけした
テレビに映ってるサッカーは試合がはじまるところだった片方のユニフォームはしってる日本だオモニハウスでときどきやってるあおいイメージは日本になかったのでふしぎな色だじゃあどんな色が日本にはあうかといえばたとえば血のいろだけどそれは韓国の色なのでわたしのなかで別れてない分けることはむずかしいおなじだったらかんたんなのにたとえば日本と韓国がひとつのチームだったらなんてそれでカナリアあたりをたおすすごいことだと思うよ
GK 川愚痴
DF 相ま
DF イミソソソ
DF 名悪橋
MF パクチソソ
MF ホソミョソボ
SF 자신
MF 中田氏
MF 名波ん
FW アソジョソファソ
FW カズ
FW イドソグ
センス監督は王貞治
相手のチームはイランらしいと画面はじっこの文字でしるカタカナだから読めたくわしくないけどアリダエイとマハダビキアはしってるいい選手だいい選手には国がない
その試合で勝ったら日本が初のワールドカップ出場というのはあとで知ることでディゼーブルは教えてくれなかったなにを言うこともなかったこっそり隣をみたらディゼーブルのくろい瞳は(ねむれない夜(をとかしたコーヒー)みたいに)冴えていたいったいなにを言いたかったんだろう見たかったんだろう
試合がはじまったすごいはやかった黙ってるからか長くかんじたときどきトイレにいきたくてそれはこわくていかなかったハーフタイムをはさんでコーヒーをおかわりしカズが点を取れなかったうえに交代させられたから残念だったサッカーしたいなとはじめて思った誰だってそうだろうあのし合いを見ていたすべてのひとが自分がピッチに立ってたらと想像したにちがいないんだ布団のなかでおちるすこしまえにみずからえらんでみる夢みたいにそうだわたしの夢は
ゴールデンゴール方式の延長戦イランのキーパー(という名前ではない)が怪我をして日本の中田(という名前)がキーパーのわるい左手をねらってキックしたはじいた卑怯だと思った瞬間日本の岡野が走り込んできてその先はおぼえてない気がついたらわたしとディゼーブルは抱き合っていたなんでそんなことで喜ぶんだろう日本がかった日本がはじめてワールドカップに出ることになったそんなことで日本人じゃないわたしたちは
セックスしたいな
セックスしたいな
セックスしたいな
セックスしたいな
セックスしたいな
よけいなことはなにもしなかったおわったあとわたしはひとり歩いて帰った足元ががくがくしてサッカーボールをけるみたいによけいなことを蹴りながら帰ったおなかが痛かったディゼーブルと抱き合ったときふれたディゼーブルのおなかは張りがあってなかでボールが跳ねてるみたいセックスすれば子どもができるそんな当たり前のことをわたしたちは当たり前だと思ってないしたんだろうか川のむこうを見るすごくでかい男がこわばっているゴールデンゴールわたしたち女はシュートされはらむワールドカップに出場する中田氏がもらしたものを最後はオカノ
○
ほかに話す相手がいなかったので자신にぜんぶいった자신はすごくまじめな顔ではなしをきいてくれてわたしの名前をよんだめずらしくわたしには名前があるということを思い出すおもいださせてくれるように名前のない자신は
(ディゼーブルノイミシッテル?)
きいてきたわたしはしってるのかわからなくてふしぎだしってるならしってるししってないならしってないしってないということをどうやってしったらいいんだろう例えばわたしとディゼーブルがセックスしてないということを誰が証明できるなかったことの証明たとえばわたしはパスポートをもってない韓国にかえれないわたしを証明できないからあたりまえにディゼーブルのなかにいたことを証明できないようやく首をよこにふるわたしとセックスしたパスポートをもたない無効処女は
(ショーガイシャッテイミナノ)
どうしてそんなことを知ってたんだろう?
わたしにはわからないわからなかった十一の島にはきっといるオモニハウスにもときどき出てくるでてくるみたいに足の悪い人とか車椅子ででも彼女は違うおなかのなかに赤ちゃんがいるからとか走れないからとかそういうことじゃなくて
そもそも障害ってなんだろう心が悪いのは障害だろうか頭が悪いのは障害だろうか障害を障害たらしめるものは助けてくれる人がいることなんじゃないかとわるくない心と頭(つまり子宮)でそこまでを考えてディゼーブルは助けてほしかったんだろうそれは社会のこたえわたしのこたえじゃないわたしのこたえは
障害とはサッカーができないこと
どうでもいい日本の試合を観ていたときのすみきったディゼーブルのまなざし
あの子はきっとサッカーがすきだったということにきづくわたしよりもサッカーがすきなひとをはじめてみたそしてようやくしる
わたしたぶんサッカーがすきだ
はじめてゴールがみえた
○
ときどきするどきどきするように漁港でのサッカーはつづくふたりはじめてのわたしはとびまわるうまくなったボールを持ったまま越えられる船がひとつふえふたつふえ자신をなんどでも抜く자신があきれながら褒めてくれるうまくなった理由のひとつとして自分のサッカーがみえるようになった他人が見てるみたいにわたしは三人称単数のサッカーをしてるそれ以外もどうやって動いたらいいのかみえるすきがすきだこういうふうにやればいいんだなってきっとサッカー以外にも応用できるのにサッカーしかすることがないオモニハウスにいるときわたしはわたしじゃない場所は自分でつくるものだとしった未来のことを考えてるシュートしたいけど今じゃない
やっとミルクに会えた川沿いのちいさな空き地だったもう海じゃなかったこえられるとおもったけれどミルクはぜんぜん抜けなかった牛みたいなミルクなのに足がなんというかうまいどれだけフェイントを入れてもだまされてくれないわたしは一回も抜けなくて자신が一回だけ抜いたときのミルクはすごく悔しそうだったこの子も女の子なんだな韓国語しかしゃべれない日本の子サッカーをするときだけは他のだれでもない
季節はいつだったんだろうおえると喉がかわいたいくつかの選択肢があった川のみずを飲んでもよかったし河原の野球少年がクーラーボックスに入れてるアクエリアスをもらってもよかったでもそれは自分のじゃない買い物なんかしたくないサッカーをしたあとはどうしてか自分のものだけが欲しいと思うそうさせてくれるのがサッカーよりも生きるのがへただ
だからキスをしてわたしとミルクはあまかったなんかいもなんかいめかミルクが申し訳なさそうな顔をしてよかった目のまえでは자신がリフティングをしてる回数をかぞえるみたいにいつか자신は教えてくれたことがある疲れないかぎりなんかいでもできるよってその感覚はわたしにもわかる자신はわたしよりサッカーがうまくてわたしはそれ以外がたぶん자신よりうまいお姉ちゃんだからとかそういうんでなくてわたしたちはふたごでほんとうにわたしが자신より先にうまれてきたのか誰にもわからないわたしがわたしであることがふいに分からなくなる世界はどうしてわたしたちをわけたんだろうそれぞれが存在することの意味をさがすことは死ぬとできないから見つからないくせさがしてる
(チャシーン)
たずねてきたミルクじゃなかった彼女は日本語がしゃべれないつかえない言葉で彼女はたずねてきた
(セックスッテシタコトアル)
きかれたのはわたしじゃなかったから答えなかったミルクはうつむいてミルクみたいにしろいひざこぞうに額をつけたディフェンスのうまいミルクはゴールをゆるしたんだろうかいつかゴールをゆるすんだろうかわたしはそんな男の子がゆるせないと思ったそれは好きとか愛とかとはちがう独占欲とか欲ですらないそういうのでわたしたちはサッカーをしてない理由はわからないけどたぶんないけどそのどこにも欲はないそれでよくはないって言われたら抜いてやるそれですべては肯定できるからだ
○
「あれ、なにしてんの?」
声をかけられて顔をあげるとそこには少年がたってたこんがり日焼けしたひざこぞうに絆創膏の現われた高そうなシューズ分かりやすいサッカー少年は高そうなFIFAのサッカーボールを両手でつかんだまま話しかけてきた彼はミルクのほうを向いてたから知り合いなのかもしれない話しかけられたときのミルクのまっかな顔が印象的でそれは生理みたいで拒否してるかわりきっと彼のことを好きなんだと生理よりもはやくしった
「え、お前は日本人なん?」
彼はわたしのほうを振り向いて首をかしげ尋ねてきたなんでそういうふうに判断したんだろうおかしかったわたしを日本人だと思ってミルクをたぶん韓国人だと思ってるそのことがでもわたしにもわからないどうやって判別したらいいんだろうなにが日本人と韓国人をわけてるんだろうそのことはほんとうにわからないいまはたぶん言葉だったミルクは日本語を理解できなくてわたしは理解できるだから少年はそう思ったんだろうと気づいたが遅れてきたものは反対の顔をしてたおもった日本人と韓国人をわけてるものは川じゃない海だとおなじ音をもつ言葉のことを(いつも言葉で)かんがえて産もうとしてるディゼーブルのことを思い出すうみのある身体を持ってることを(いつも子宮で)おもいだして産もうとしてるわたしたちは障害者ですわけられていつかひとりになれば完全体になるだけの
「なんで韓国人といるわけ?」
そう言った彼のむじゃきは日本人のものだったけれどきらいにならないそういう理由でわたしは人を嫌ったりしないそうでなくミルクが彼のことをきっと好きだそのことが許せなくて言葉が分からないことが許せなくて
わたしは彼の足をけった膝のうらあたりにローキックを決めた左足で蹴ったことだけみとめてほしいこんなことにわたしは利き足を使ったりしないそれはサッカーのためにあるそうじゃなかった
彼はたおれサッカーボールみたいに転がっておかしかった痛くないくせそうするのがファウルアピールするみたいでおかしかった騒ぎをききつけて仲間なんだろう少年たちが集まってきたおなじユニフォームのボールを見つけわたしをなじった聴き取れたけれど知らない言葉だったからしらない顔をした자신が戻ってきて彼らになにかを言ったすごくとおくからわたしはその騒ぎをみててミルクはたぶんもっと遠くにぎった彼女の手はふるえてなくてふるえてろよと思ったぼんやりとさわぎをききながらディゼーブルに会いたいなと思ったのはそれだけ
かえりみちだったなにがわるかったんだろうすごくそのことを考えてたこんなに考えたのははじめてで考えないといけないぐらいこれまでにないぐらいの悪いことをしたんだってわかったミルクはないてほっぺをつまんだらわたしが자신に怒られた자신は怒ってるみたいだった怒るという感情のよりどころを考えるそれは川だろうか海だろうかどっちでもないかもしれないけれどすくなくとも土ではないことは確かだなぜならば土はサッカーのためにあるからだそこに怒りはないというよりもシュートを外すのは決まって怒ってるときだとしっているしたこともないのに未来は神さまの手のひらになくすくなくともわたしたちの足元にある地球
オモニハウスに連れてかえってオモニたちはミルクのことをしらないからびっくりしてたけど韓国語が話せるってわかったらうちとけた酒がふるまわれてもりあがったいつもよりいいごはんが出された銀色のスプーンが出された韓国ではよくいわれることがある産まれてきたときのスプーンの色で人生が決まるんだってだとしたらわたしはいま産まれたのかもしれなかったそれぐらいよかったいつかわたしも誰かを産んだりするだろうかそんなことを酔ったあたまで考えたそのときにさしだせるスプーンの色を考えたディゼーブルは子どもにどんなスプーンをさしだすのか考えるととたんに悲しくなったディゼーブルのことを考えるといつもそうなるホイッスルがある鳴ってもないのにはじまるはじまっていたんだろうあるべきセックスのそのときにいつかそんなふうなセックスをしてみたいと酔ったあたまで考えなかった
のんでたべてつかれたころわたしたちは二階のへやに戻ったわずか畳二枚の身体をみっつ余らせるまんなかにミルク右に자신左にわたしわたしたちはいつかみたいにのいつかはいつだろう
今日の話をした男の子たちと喧嘩したあれのことだよくわかってないわたしとミルクのため자신がぜんぶを教えてくれたつまり喧嘩じゃなかったらしい話したのはサッカーのことでサッカーで対決してきめようとそういう話になったらしいわらう少年漫画じゃないんだからとベタな彼らがおかしかったしそんなことを受け入れた자신がおかしかったいったいなにを決めるというんだろうミルクと彼とが結婚することだとすればわたしはサッカーをやってやってもいいでもそんなのありえないからサッカーでなにかをきめられたりしないからそういうんじゃないからしないだろうとこっそり思ったその試合は一週間後らしいどうやってすごせばいいか分からないくせその一週間はすごく長いだろうと思った
そのさきはサッカーの話をしなくてよかったそれ以外の話をいっぱいしたわたしと자신は日本語ではなして자신とミルクは韓国語ではなしてわたしとミルクはそれ以外の言葉ですごく話したたとえばそれはセックスの話だったかもしれないミルクはしてないといったわたしと자신とのあいだには川があったこえるためのすべてのやりかたを夢でみることをえらびねむったもしセックスのあとにそうしていれば子どもができるぐらいの長さで
○
とにかくどうやって生きていけばいいんだろうということだけすごく悩んだ一週間だったミルクは帰らなくてくらしたサッカーはしなくてそのかわり買い物をしたわたしと자신とミルクが組んだらすごくじょうずに買い物ができたオモニたちはよろこんでわたしたちの頭をなでてくれてうれしくもなくかなしくもなくザファッカーと思ったさせられてるからわたしたちは子どもでしなかったのに(いれるのが)うまくなったミルクはかえらないというよりつねにかえってる川で身体をあらったときミルクの裸はすごくきれいだった彼女の存在価値のことをいけないことみたいに考えたということが暮らすということだったミルクがどこからきてどこへいくのかそういうことがすごく大事だったのに言わなかったしいわれてないんだからミルクも訊かなかった大事なことは言葉にできないを言い訳に食べて飲んでサッカーとセックス以外のすべてをいれるみたいに再生(産)した
例の試合のことだが一日目と二日目は行かないでいようと思った三日目はすごく行かないでいようと思った(たぶんミルクとキスしたことが理由だ)四日目は行ってもいいかなと思った(ミルクとキスはしたちょっと濃厚な)五日目はわからなかった六日目何月の何日の何曜日の何時の何分の何秒の地球が何回まわったときだったんだろうとにかく六日目わたしは答えをみつけるみたいにディゼーブルに会いたいと思ったきっと彼女はこたえを内包してるだろうというありふれた確信をわたしもまた内包していたとにかく春だったということにしたいサッカーはいつでもできるけどわたしは春にするサッカーがいっとうに好きだ萌える草のにおいのなかでサッカーボールを追うんだいつも漁港でサッカーをしてるくせありもしないフィールドがわたしのなかにあっていつだって頭のなかでできるからそこがサッカーのいちばん素晴らしい点だと僕は思う
竹島から出来島まではけっこう遠いまえに歩いたときはディゼーブルといっしょだったからあんまり遠くはかんじなかったひとりだと退屈で靴でかんがえを蹴飛ばすみたいにいろんなことをしりとりしながら歩いた韓国語でしりとりはできるんだろうかそれとも日本語と韓国語とで交互にしりとりをしてみてはミルクと試してみようかなけどどっちも向こうの言葉をしらないからありもしない言葉をいいそうでわらうそんなふうにつくれたらいいのに名前を竹島御幣島中島東中島西中島西島百島出来島加島柴島歌島姫島ぜんぶまでおわるからザファッカーオモニをおかすことはディゼーブルが母親になるというじじつと相反してうそになる障害者サッカーができないという意味の彼女のジョホールバルの歓喜
○
「あれ? おはよう、チャシーンやん」
どうやってたどりついたのかとにかく目のまえにディゼーブルがいたねぼけまなこでパジャマみたいなワンピースだからおおきなおなかがよく見えた前はなかった服だった買ったのだろうかでは意味がちがう
部屋にふとんはなかった朝ではなかったどうやって寝ていたのだろうかはいまではなくもうすこし昔のほんとうにあったこと
は話せなくて起こりそうなことのことを話した明日だったつまり七日目わたしはミルクのためにサッカーをしたほうがいいのかしないほうがいいのかその理由のことを相談したそもそもなにかのためにサッカーをするのはちがうと思いながらいってもないのに説得されてるとしたらそれはミルクのためじゃないことをサッカーがおしえてる
「ええなあ、うちもしてみたい、サッカー」
ディゼーブルはこうていもひていもせずふにゃんと笑っていったほんとうにふにゃんと音のしそうなくだけた笑顔だったその音はサッカーにはないいまはやがてくることがわかったディゼーブルのおなかがうごくもうすぐうむそのときわたしはなにをしたいんだろうディゼーブルはなにをしたんだろう
ひとりで?
わたしがひていとかこうていとかしないといけなかったのかもしれないディゼーブルがディゼーブルたるゆえんをなまえをあげたかった彼女がわたしをチャシーンと呼んでくれたみたいになまえはかちだからわたしはディゼーブルが産む子どもに名前をあげたい
ウェア
ストイコビッチ
エムボマ
オーウェン
ラウル
デルピエロ
シェフチェンコ
フィーゴ
T・A・フロー
ロベルトカルロス
パンモゴッソ
オカズ
テレビがついてて監督がでてたのは日本のだワールドカップ出場が決まって記者会見というかんじのむずかしい顔で言った
『外れるのはカズ、三浦カズ』
わたしとディゼーブルはそれをすごく落ち着いた顔で聴いたいつかこの瞬間のことをおもいだしたときわたしはすごく落ち着かなくなるのにおちついてたふしぎなほど
ワールドカップ本戦にカズが出場できなくなるという内容の記者会見だったとのちにしったからかだっておかしいすぐに受け入れられる人はサッカーをしてないしってるだろう三浦カズはカズは日本のサッカーを支え続けた選手だった韓国人でも知ってるぐらいカズは日本だった韓国にはそういう選手はいない
わたし以外には
そのときだったと思うわたしにとっては日本がワールドカップに出られなくなった瞬間でしたいまだって日本はワールドカップにでてない二〇〇二年も二〇二二年も一生でてないカズはたぶん日本のサッカーをつまり日本が健常者であることを無効にするディゼーブルだったと思う
なまえ
にしようとふと思ったわたしはディゼーブルの子どもにつけたい名前を思いついたけど言わないわたしのなかで呼びつづけるたたくボールをちゃんと利き足で
帰り道わたしはサッカーをしようと思った一生するかは分からない少なくとも明日はサッカーをしようと思った明日だけはサッカーをしようと思った
漁港によったボールもないのにどぎついピンクのボールがあったいまなら動かせる蹴ると地球は海のふかくへ沈み子宮の一部になるわたしのなかの大切じゃないものもぜんぶ命はしきゅうより重いとか噛んでんじゃねえよわたしに言わせろ
좋아하는말은골(スキナコトバハゴールデス)
ねむれなかったゴールがあるサッカーははじめてで興奮しているのか緊張しているのかやり方が分からない練習しようと布団をそっと抜け出してオモニたちに見つからないよう窓からすべりおりた月のきれいな冗談みたいなまるいあかるいにシルエットがボールをけりあげる一回二回三回いつまでもできるいつまでもしていていいのは子どものときだけあしたわたしたちは大人になる彼女はシュートしたくらいしかくい明日だった
○
オモニハウスからでた男とあわなくていい日だったからあっさりとオモニも外にでるのを許してくれたコンビニで明治の板チョコをひとつだけ買ってさんにんで分けた女の子みたいでよかったそのときわたしは思ったんだ女の子はいつもは男がいるから女の子でいられるんだってそれは発見だったなんだってそうなんだ韓国人は日本人がいるから韓国人なんだ日本は韓国があるから日本なんだ川を見つけたそれはやっぱり海じゃない囲まれた十一の島はしまザファッカーしてなくてもそうでいられるわたしたちはさいこうに可愛かったかわいくあるのに好きな子の話なんかしなくてもよかったかわりわたしはカズが好きだといったはじめていえた자신が同意してくれたミルクはわからないのにわらってよかったわかってよくなるため今日はシュートを決めたらカズダンスをおどろうと思った
いくと川のすぐそばのグラウンドだったひろいフルコートだった男の子たちが十一人いたわたしはてっきり3対3をするもんだと思ってたから裏切られたというよりはサッカーでもすんのかよと思った
男の子たちもわたしたちが十一人いるもんだと思ってたらしいバカだ見ればわかるのにひともんちゃくあったのち자신が話をまとめてくれてふつうにサッカーすることになったつまり11対3のサッカーだったそれをおかしいと思うにはわからないだっておかしいというのはふつうがあってその反対におかしいがあるわたしはもう川の意味がわかってたからそれが海じゃないってしってたから男子でもなく女子でもなく日本人でも韓国人でもなくそういうサッカーをすることにした
コイントスだけが当たり前だったボールはわたしたちがもらったかんたんな話し合いがあってミルクがキーパーをすることになったわたしと자신がフォワードなのかミッドフィルダーなのかディフェンダーなのかとにかく攻撃的であろうと決めた攻撃的ミッドフィルダーの北澤よりもだって胸につよいダイナモを積んでる
ピッホイッスル瞬間わたしと자신はゴールにむかいはしったふたごでよかったわたしたちはあたりまえにわかってるぬいてパスをした자신は三人抜いてよにんめで囲まれたけどボールをもどしてくれてがらあきのペナルティエリアにはいるキーパーがたちはだかるシュートの仕方がわからないから土ふまずであわせるだけしたいいパスだった자신がはしりこんでそのままドリブルでゴールに吸い込まれたきもちよかったこのときのためにサッカーをしてるというのがふつうでふつうでいられたことがしあわせだった
(シアワセダッタ)
しあわせとはなんだろうわたしはそれは裏切られることだと思うそうやってあとで思い出していうんだしあわせだったといつもそれは過去形なんだいつかのわたしもいつかこのときをおもいだしてしあわせだったと言ったりするだろうか死ぬまぎわにおもいだしていうだろうか死ぬってことだしあわせというのは死会わせであり死ぬことで死ぬってことは裏切られることだまだ生きてたわたしもミルクもなのに死んだほうがましだとそう思うことが
たぶんすべての女の子にはあるはずだ
それはサッカーじゃなかったと思うレイプだったということをいましったすべての男に抱かれるということは死にたいのに産むにつながるのは女であることを信じているからだ
何本もなんぼんも入れられたあたりまえだ11対3なんだからでもわたしたちは三人いなかったんじゃないかと思うぐらい一方的だったミルクは見事なセービングをいくつも決めたのにそれ以上に入れられたくやしそうに入れられるということが感情をこえる怒りも悲しみもないただわたしたちはわかっていたのだ
だってサッカーをしてるこの世界でそれだけが真実だったそれ以外のすべてはどうでもよかった真実だけをおいもとめたそのときひとは馬鹿みたいに分かるのだと知ったちがうものがどうじにある分けないこと川を越えて抜いてやるんだ嘘を生きるという偶像をほんとうにするためにたぶん人はそれを奇蹟とよぶありえないからそうよぶことに決めたんだわたしがディゼーブルの子どもの名前をつけたみたいに
ミルクがゴールをすててあがってきてロングシュートをきめたそれがやっと二点目でそのときにはもう二十点か三十点か取られてた勝つためにしてるんじゃないのに負けるのがすごい嫌だったミルクが捨てたゴールに男たちが近づいていくぜんぜんシュートじゃないシュートをぜんぜんゴールじゃないゴールにすいこませ
なかったとめたのは黒い肌をしたワンピースのおなかの大きい少女だった
名前をよぶより先に少年たちの誰かがさけんだ
「イネーブルだ!」
よばれた彼女はほほえんでドリブルを開始したわたしよりも자신よりもミルクよりもはやかったいくみたいにつきすすんだおかしかったフェイントなんかひとつも使ってないのに男子たちをすり抜けていくまるで男をしってるみたいに女のたましいみたいにはしった十一人抜いたそのままゴールネットをすりぬけて消えた
わたしと자신とミルクははしって追いかけたサッカーを置き去りにしたずっとこうしたかったんだと思ったときそうする理由をやっと見つけた
○
はしって夢中でゆめのなかみたいな場所すくなくともフィールドではない場所わたしたちの足元にはサッカーボールはなくそのための地面だけがあったよこたわったディゼーブルはわらってたわたしは彼女の頬を張った手を使っちゃいけないのにサッカーじゃないからやり方で思ったんだおなかのなかの赤ちゃんをいるのにサッカーをするのはちがうそこにまたひとつの川があるあってほしい越えてほしいとわたしは彼女にやり方でつたえ意味のなさをなげくみたいに泣いたまだわらっててそれはわたし以上に
(イネーブルトシリアイナノ?)
자신がわたしを見つめ信じられないような色で問うたみるミルクもおなじ目をしてたわたしもたぶんおなじだった
しっていることはふたつしかなかったしふたつあればよかったあのころすべてのサッカー少年や少女たちがそうだったわたしはそんなありふれたサッカー少女だったしそんなどこにでもいるサッカー少女のひとりがわたしだった
とおくヨーロッパのサッカーそれは世界一の選手たちが集まるリーグでそのなかのまた一番の選手を決める賞があったバロンドールという意味はわからないとにかくその女性として最初の受賞者は「イネーブル」という名前の十六才のリベリアの女の子だった
いつ知ったのかすくなくとも彼女の顔や姿は写真とかで見たことなかったオモニハウスのテレビはすごくちいさかったからそこに現われるのは日本のことばかりで世界でいまなにが起こってるのかわたしたちはなにも知らなかったし知る意味とか価値もなかったをすり抜けてぐらいサッカーをする子にとっては当たり前に「イネーブル」のことを知っていた
サッカーは男子がするものだという当たり前があったしっかりとして立つゴールポストみたいにキーパーみたいに身体能力の差とかそういうんじゃなしに男女同権がさかんに叫ばれてる今ですらこえてないを十年も二十年もまえに当たり前に越えているそれがイネーブルだったがそんなことではあこがれない人種国籍性別差別みたいなものを越えることに憧れたりしないわたしたちは憧れるのはそれだけたとえば彼女がいつかチラベルトを抜いてシュートを決めたかもしれないそれだけ
イネーブルの意味わたしたちがしったもうひとつの確かなことわからないこと英語の意味なんておきざりにしてるのにそれがディゼーブルの反対語だってことはわかる彼女は障害者じゃなかったその反対にあるのは
バロンドールだって彼女はさっきあんなにサッカー選手だった全身で体現してたする子をはじめて見たおなかに赤ちゃんがいるのに走っちゃうぐらい好きなことがほかのどこにある?
しわたしはもうサッカーをしないだろうとそのことは考えただってわたしは彼女がサッカーをするよりも子どもを産んでほしかったそのことを選んだわたしはこそがディゼーブルだったわたしは彼女にディゼーブルという名前をもらい彼女はイネーブルになった
ということともうひとつ
産まれてくる子どもはどっちなんだろうただどっちでもきっとサッカーをするんじゃないかそんな気がした
「ごめんな」
とイネーブルを選んだ子はいったおなかをさすりながらそうだきっとそこにはサッカーボールが入ってるつまり
たとえば話さなかったどうして彼女が妊娠しているのかとか故郷のリベリアを離れてどうして日本にいるのかとかヨーロッパのサッカーリーグはいま試合がないのかとか
知っててもどうしようもないことはあるよね
とにかくのちにしるリベリアはワールドカップには出場できなかったらしいそのときの日本よりも弱いぐらいのチームだったイネーブルだけがとびぬけて優れたプレイヤーだったを欠いたリベリアは当たり前に負けたもちろんサッカーだ十一人いるイネーブルがいても囲まれて終わりだっただろうけれどぜんぶ抜いたんじゃないかなと思うこともあるサッカーはひとりじゃできないけれどひとりでもできるんじゃないかとか思わせてくれるようなをわたしはいのりと呼びたいだってサッカーボールはひとつしかないはひとりなんだ
すべてだイネーブルはリベリアのためにはサッカーをしないことを選んで韓国と日本の少女のためにサッカーすることを選んだそれがすべてだったもしわたしたちが少女じゃなければイネーブルはバロンとよばれたドールはサッカーをしてくれただろうかわたしたちからなにかを抜いていってジェンガみたいにたとえばなにを抜いたときイネーブルはサッカーすることを選ばなかっただろうか
ほうかいしない気がするというのを好きと呼びたいだってわたしが
ひとを好きになるということたとえば彼女を育てたのがどういう国なのか知りたいと思うことリベリアサッカーをするということリベリアのなかにある言葉自由リベロがあがってくる
なんのために?
ありもしなかった記憶のちにわたしはイネーブルとわずかな時間をすごしたマンションの一室を訪れた部屋はがらんとしていて彼女の姿はなかったなにも残されてはいなかった言葉ひとつ残さないまま去っていった
いたのだろうかその場所はほんとうにあそこなのだろうか
ふたりで見たサッカーの記憶『外れるのはカズ、三浦カズ』というサッカー史上おそらくもっとも残酷な言葉それは少なくともたしかにあったこと
だけが聴こえてるワールドカップ日本は一勝もできずに消えたアルゼンチンクロアチアジャマイカにみごとに三敗した
おもうんだカズがいればなんとかしたんじゃないかってバティストゥータを止めてボバンを抜いてジャマイカのゴールにシュートを突き刺したんじゃないかってサッカーはひとりでもできるというほとんど祈りイネーブルという言葉の意味不可能を可能にするということそれができる選手こそカズでありバロンドールだったんじゃないかって
うしなったサッカー日本代表こそディゼーブルなんじゃないかって韓国人のわたしは思うそこに川はないから差別しないで
○
漁港にいたいつもサッカーをしていたあの漁港だった
(チャシーン)
と呼んできた彼女をわたしは海のなかへ投げ込んだスローインみたいにいきおいをつけてゴールをアシストするロングスローみたいにそして地球にヘディングするみたいに자신は海のなかへ消えたあのフランスワールドカップの英雄のさいごのプレイみたいにいわれたんだ姉は娼婦だとおこった자신はさいごにプレイした自分を証明するために
자신と書いてチャシーンと読む自分という意味とさよならをするもう必要ないからというのは嘘だけど本当にするために生きたいと思う音が好きだったそれは本当だいつもどこにいても変わらないサッカーボールを蹴るときの音胎児みたいに産むためにすべての少女たちはその音を切望しするザファッカーまでおわる十一の島からしりとりするように生きていく
自分とひとつになり川を越える海ですら越えられるというのは信じてもないのに確信はある買いものしたすべての服を脱ぎ捨てるはだかになって船を越えていく抜いてやるたった十一人じゃないかゴールポストをまもる性をこえて彼岸に身体を投げ出すきもちいいがすくなくともわたしたちにとっての
死の表象
生きるためにできることなんて多くない人生なんてそんなものだ劇的なことが起こったりもせずわずかなことが起こり過ぎていくそのなかでは誰だってディゼーブルだろう
数十年してリベリアの大統領になった彼女はだけがイネーブルだったんだなと思ったそれはまちがいなく劇的だったそれを知ったときわたしには子どもがいた彼女を抱きしめていつかサッカーをさせようと思ったのか思わなかったのか
どっちでもいいんだただすべての母親はだけがイネーブルなんじゃないかなってそう思うことはあるよたぶんねそんなこというと差別だっていわれるかもしれないけどわたしは思う川なんてものはないんだあるのは海だそこを越えることはできない韓国人が日本人になれたりはしない女が男になれたりはしないそれはほんとうに
でもそうなれたらと思うことそれは差別の反対で尊いわたしだって信じてるあるいは祈ってる
○
(後半31分にからくも追いついた日本は、ゴールデンゴール方式の延長戦に突入した)
○
オモニハウスを出て歩いた十一の島をこえていった竹島御幣島中島東中島西中島西島百島出来島加島柴島歌島姫島処女じゃない身体はあるいた足元にはサッカーボールなんてなかった何人もを抜いたゴールは川のむこうにあるのだと分かっていたふたつの川に囲まれているここはふたつの場所に行くことができるいつだって選べるし選ばないといけないいつかはそうなんだろう行けるのはどっちも川のむこうだいくというよりえらぶという行為がだいじだどっちでもいいそれが自由ということだと思う
川のむこうからはミルクが歩いてくるわたしは彼女に会いにいくことにした韓国語を話す日本人に日本語を話す韓国人が会うどんな言葉を話せばいいんだろうきっとわかることはない抱きしめあっても持て余すわたしたちがいつまでも自分とセックスしたパスポートをもたないディゼーブルでありますように神さまザファッカー
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?