3.0 開発投資の基礎

中古の不動産投資は経験ある方でも、建築を学んだとか、設計・建築関連の仕事をされているような人でなければ、建築の専門知識は持ち合わせていないと思われます。まずは、新築企画以前に、不動産投資家として絶対に理解しておかなければならない建築法規を解説します。

1. 用途地域
 用途地域とは、住居、商業、工業など市街地の大枠としての土地の利用を定めるもので、13種類あります。土地面積が大きければ住居系の地域でもよいのですが、後述する各種の建築規制が厳しいため、商業、近隣商業、準工業の3つの用途地域が都内のマンション建築に適しています。

2. 建蔽率/容積率 
建蔽率とは敷地面積に対する建築面積の割合のことであり、容積率とは敷地面積に対する延べ床面積の割合のことです。やはり都内の狭い土地にマンションを建築するには、建蔽率80%、容積率は300%は欲しいところです。 30坪以下でも容積率が300~500%あれば最高9階建てが建ちます。

3. 防火地域 
防火地域で、3階建て以上または100㎡超の建物を建築する場合、耐火建築物としなければなりません。マンションは、RCか重量鉄骨造のため基本耐火建築物に当たるので、建築上特別支障となることはありません。逆に、木造の場合は特別な耐火仕様が必要となるので、そのためのコストアップが非常に大きくなってしまいます。このため、戸建てやアパート建築とは競合しにくくなり、むしろ防火地域であるほうが好都合です。

東京23区でマンション建築を行う上で、常に立ちはだかる重要な法規制があります。これを理解することが自分で簡易的なボリュームプランを作成する上での最大のポイントとなります。

4. 道路斜線制限 
斜線制限には、他に隣地斜線や北側斜線がありますが、前述した3つの用途地域を前提とするならば、全く気にする必要はありません。 問題は道路斜頸で、前面道路幅によって建築可能な高さが制限されます。先の用途地域では、前面道路幅の1.5倍までが建築可能な高さです。たとえば、道路幅が6mならその1.5倍の9mとなりますが、これでは3階までしか建てられません。そこで0.5mセットバックして建てれば、道路の反対側の境界線もバックしたものとみなされ、(6m+0.5m×2)×1.5=10.5m となるので、なんとか4階建てを建てることが可能となります。

5. 高度地区 
居住系の地域以外は北側斜線制限がないのですが、自治体ごとに規定される高度地区に指定されていると、北側から高さの制限がかかります。東京の場合は、第1種~第3種までありますが、そのうちもっとも規制の緩い第3種か、そもそも高度地区に指定されていない地域でないとマンション建築は難しいと考えたほうがよいでしょう。

6. 窓先空地 
これは共同住宅において火災が発生した際に、避難を容易にするために、1階住戸の窓に直面する敷地に空地を設けて避難経路として利用するものです。住戸の床面積に応じて、200㎡までなら1.5m、600㎡までなら2mの幅員の空地が必要となります。 東京23区で比較的安い土地を探すと、間口が狭い土地に行きつくことが多いです。その場合、道路側に面して2戸並列で住戸を入れることは難しく、前後に2戸配置するような建築プランとなります。その際は、後方の住戸の避難経路として、窓先空地を設ける必要があるため、建蔽率を使い切るのは困難となります。窓先空地分を念頭に入れて、ボリュームプランを考える必要があります。


ここまでの法規は、自分自身で簡易的なボリュームチェックをできるようにするために必ず理解しておくべきものでしたが、次の法規は存在は知っておく必要があるものの、計算自体は建築士さんにお願いせざるを得ないものです。

7. 日影規制 
これは、近隣の建築物の日照確保のため、一定の範囲内に日影を生じさせないための規制です。基本、住居系の用途地域で設定されるものですが、近隣商業地域でも指定されている場合があります。また、仮に計画地自体には日影規制の指定がなかったとしても、日影規制のある近隣の土地に影が落ちる場合は、規制の対象となるため要注意です。

8. 天空率 
天空の占める立体角投射率のことです。これが傾斜制限による天空率と同等以上確保できている場合には、採光や通風等が確保できているものとして、斜線制限がかからないという緩和制度です。 融資の関係で建築に至らなかった事例ではありますが、以前前面道路幅が11mしかなかったため、頑張っても7階建てぐらいまでしか建たないだろうと考えていた案件がありました。そこで、なんとか7階建てが建つようなプランが立てられないか建築士に相談したところ、天空率を利用してなんと9階建てのマンションを建築するプランを作成してもらったことがあります。 このように、天空率を積極的に活用することは建物のボリュームアップ、利回りの向上に大きく寄与するため、事前に建築士さんにその意向を伝えておくことが肝要です。

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